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画面の向こう側  作者: 阿瀬 ままれ
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序章 画面の向こう側

 この世界には、白の世界と黒の世界、二つの世界がありました。白の世界には人間達が、黒の世界には魔物達が暮らしていました。

 白の世界を統治しているのは、ホワイト王国のお姫様。綺麗な白いロングヘア―で、優雅なドレスを着ています。

 黒の世界を統治しているのが、ブラック王国の魔王様。ぼさぼさな緑の髪に角が生えた頭、そして漆黒のコートを羽織っています。

 お姫様は能天気……いや、平和主義者で特に他人を襲うことはしないのですが、魔王の方は曲者で、独裁主義者の彼はよくホワイト王国に侵攻しては、お姫様をさらってしまいます。

 そんな時に、毎回現れてくれるのが、伝説の勇者様。太陽のように黄色いポニーテールが特徴の、まだ小さな女の子です。勇者にのみ与えられる赤い布地の服を身にまとい、伝説の剣エクスカリバーを片手に、魔王が待つブラック城に勇猛果敢に乗り込みます。

 魔王の手下である魔物達を、それはもう見事な剣技で次々に倒していき、勇者はとうとうブラック城の最深部までやって来ます。最後の部屋では、おどろおどろしい雰囲気の中、魔王が立派な玉座に座って待ち構えています。その隣では、お姫様が檻の中に閉じ込められていました。


「ハッハッハ! よくぞここまで辿り着いたな、勇者よ!」


 魔王はふてぶてしく笑いながら、玉座から立ち上がります。


「勇者、助けて!」


 檻の中から助けを求めるお姫様の声に、勇者の闘志はさらにみなぎります。


「やい、魔王! 今度こそ許さないぞ! このエクスカリバーでけちょんけちょんにやっつけてやるからな!」


 気炎を揚げる勇者に対し、魔王は負けず劣らずの態度で威嚇します。


「ハッハッハ! やれるものならやってみるがいい!」


 そう叫ぶと、魔王は突然、人型の姿からドラゴンに化けてしまいました。髪の色と同じ緑の鱗をしており、爪や牙も尖っていて触るととても痛そうです。

 しかし、さすがは勇者といったところ、臆せず立ち向かいます。身をひるがえして大振りの切り裂き攻撃を避けると、勇者はエクスカリバーに力を込め、必殺技を繰り出しました。


「悪を断ち切れ! 『ホワイトセイバー』!」

「ぎゃふん!」


 勇者の強力な一撃に、魔王は一瞬にしてやられてしまいました。大きな体がドシンと倒れると、魔王はドラゴンから元の姿へと戻ってしまいます。


「ぐぬぬ……またしても倒されてしまうのか。次こそは覚えておくがいい、勇者よ!」


 そう言い残すと、魔王はふらふらと立ち上がり、魔法でテレポートしてその場から去ってしまいました。


「やったあ!」


 勇者とお姫様は歓喜します。勇者がエクスカリバーで檻を断ち切り、中に閉じ込められていたお姫様を救出します。


「これで、白の世界に平和が戻りました。ありがとう、勇者!」


 お姫様の感謝の言葉を聞き、勇者は嬉しそうに満面の笑みを浮かべます。こうして、勇者は魔王の野望を打ち破り、平和を守ることができたのでした。めでたしめでたし――。




 * * *




「皆、お疲れ様ー!」


 ここは、ホワイト城下町にある一番大きな居酒屋。お姫様が乾杯の音頭を上げました。


「かんぱーい!」


 勇者のみならず、魔王とその息子、部下達も一緒になって、手にしているジョッキを掲げました。もちろん、お姫様の衛兵達も。

 勇者と魔王の対決が一段落つくと、決まってこうして関係者全員が集まり、打ち上げが開かれるのです。

 勇者や魔王の息子は、まだ未成年なのでオレンジジュースです。目の前のご馳走にむしゃむしゃと食らいつきます。

 一方のお姫様と魔王は、ビールを片手に和気あいあいと語らっています。関係は敵同士だけど、それは表向きの話。裏では皆で仲良く飲み食いしたり、遊んだりする仲なのです。


 そう、何を隠そう、ここはゲームの世界。

 プレイヤーが見ている間は、各々が役目を務めますが、見られていないときの画面の向こう側では、平和なやり取りが行われているのです。

 このお話は、そんなゲームの裏側の世界に触れていきます。ミンナニハナイショダヨ。

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