こんなに顔がタイプなのはずるいと思います
二次元推しつつも三次元も行けるよ!て人周りに実は結構いまして。
連載初投稿なので誤字脱字等ありましたらお知らせいただけると幸いです……。
谷川睦、14歳。中学2年の夏のこと。ママ友間で開かれた食事会だか何だかから帰ってきた母親から放たれた衝撃の一言。
「優斗くん、アイドルになったみたいよ。」
優斗くん。高瀬優斗くん。保育園が一緒だった幼馴染で、確か小学3年生くらいで転校するまで近くの小学校に通っていた。当時からかっこいいと言うよりはハーフの様な整った顔立ちでそれはそれは女の子の人気を独り占めしていたわけで。それもあってか男の子にしてはませていた彼が4歳のときに告白され、小さい子ながらに付き合っていたのが私だ。小さい子らしい結婚の約束なんかもした。人からしたら、『子供のままごと』と言われるかもしれないものでも、私にとっては大切な思い出で立派に恋愛経験なのだ。
「ふーん。そうなんだ。まぁ顔綺麗だったもんね。」
が、母親相手に素直に興味がある素振りなんて見せられない。私達の交際は当然親にも筒抜けだったし、それも相まって母は『昔はあんなに楽しそうに優斗くんとのこと話してくれたのに……。』と私の恋愛話に興味津々と言う面倒な状況が出来てしまった。
「そうそう、あんた達2人とも昔から本当に美人だから……。」
「私は美人じゃないし。」
誓って言おう。優くんは確かに美人けど私は美人ではない。母がとんでもない親ばかのせいで毎日事あるごとに美人美人と持て囃されるが全くそんなことはない。否定しても親バカなので否定し返されるが。
「へー、優斗くん今アイドルなんだ。睦ねーさん興味あるの?」
年子の妹の周が反応する。過去の私よ、何故この妹にも惚気た。女兄弟と女親の両方からちょっとニマニマされて見られるのはきつい。
「いや、全然。けど何かびっくりしたー。」
「あんたもなる?」
「ならんわてかなれんわ。」
しまった。絡み酒の母は食事会帰りでアルコール回ってるのか。妹はお風呂だし、面倒事の予感がするのでいつも通り寝室にでも籠ろう。
そう判断し、リビングのソファから立ち上がり寝室に移動した。
「とりあえず、落ち着こう……。」
平常心になるためにスマホを起動してお気に入りのアイドル育成ゲームのアイコンをタップする。いつも通りのタイトルコールとログインボイス。キャラのビジュアルと声優さんの豪華さに定評のあるゲームを進めると少し落ち着いてきた。ありがとうゲーム会社。ありがとう声優。
「……優くんもアイドル、なのか……。」
改めて思い出してみても、優くんは本当に綺麗な顔をしてた、と思う。ので。他意はない、他意はないと言い訳しながら【高瀬優斗】と検索をかけてみる。本名で活動しているかは聞いてなかったけど、幸いにも本名で活動してるらしい。結構な大手事務所のタレント欄に名前を見つけて、紹介ページをタップする。【特技】陸上、習字。【趣味】絵を描くこと、ゲーム、ダンス。
「うわ顔綺麗……。めちゃくちゃタイプ……。」
自他共に認める面食いの私を面食いにした原因は今尚むかつくほど綺麗な顔をしている。気が付いたら画像検索で出てきた画像保存しまくっていたくらいには。これ母達いる前で見れないから待受もロック画面も不可能か……。
「て言うかプロフィールが少なすぎる……。」
アイドル育成ゲームのキャラプロフィールを見慣れているせいか余計にそう思う。二次元と三次元を一緒にするなと言われればそれまでかもしれないけど、ヲタクは強欲なのだから仕方ない。5分程度の自己紹介動画のリンク貼られてるだけじゃ足りない。そう思いながら、優くんの所属事務所の会員アカウントを作り始めた。