東京時代 第2話 あきら
桜は、赤いキャリーバッグを、ガラガラ言わせ、とりあえず新宿へ向かった。
親友だったあきらが、
「西新宿に住んでいるから、おいでよ。」
と、言ってくれた。
新宿からタクシーで、彼女のマンションまで行くと、懐かしいあきらが立っていた。
昔のように少し謎めいていて、いい女だった。
透けるように白い肌をして、切れ長の目が、何もかもを見透かすような、そんな雰囲気を持っている。
部屋に入ると、相変わらず、派手な皮の服や靴が、おびただしく並んでいた。
「あきら、痩せた?」
まじまじと見ると確かに痩せていた。
「大丈夫なの。」
「うん、平気。ちょっと遊び過ぎ。」
目を伏せた。
これ以上止めておこう。
ふらふらと歩く様は、体のどこかを壊しているに違いない。
「ねえ。夜、遊びに行くよね。どこ行く?」
あきらが、うきうきした様子で聞いてきた。
「そうだね。やっぱり、六本木かな。」
「大輔さん、まだいる?」
桜は、やはり聞かずにはいられなかった。
「店変わったけど、いるよ。」
「そっか。」
体中が、どくんどくんと、波打った。
二度と会えないと覚悟した。
それでも、忘れることが出来ず、夜が来る度に泣いた。
きっと、一生、思い出すんだ。
他の男と、付き合う度に、キリキリと胸が痛んだ。
それだけ、惚れた人だった。
大輔は、桜の特別だった。




