ダンジョンにて・・・・・・銅級冒険者サラ
サラはゴブリンに襲われていた男女の新米冒険者の片割れです。外での依頼だけではお金が足らず、お金に困ってダンジョンに来た子達の、女の子のほう。
はあ、だっさー。
好いた男についてきたあげくの結果がこれかー。
ほんとは別に冒険なんて興味はなかった。
運動神経も多分そんなによくはなかった。
戦うより、花を摘んでいる方が楽しかった。
でもアルが、好いた男が村から出て、冒険者になりたいって言うもんだからしょうがないじゃない。
まともな村じゃないとは思ってたから何らかの形では村を出ようとは思っていたけどさ。
「ぐぅ、うう、サラ・・・・」
アルの声が聞こえる。
言うなら今しかない。この胸にずっとためていたこの思いを、言うなら。
まあ、でもさ、今更言ったところで、ね。
ゴブリン共はこっちがもう倒れて動けない、ってのが分かってるのか、遠まきに取り囲んでニヤニヤ笑ってやがる。
ああ、外では最弱、最悪の魔物として知られているけど、ダンジョンではどうなんだろ。ダンジョンでも最悪なのかもしれない。一番出くわす可能性が高い魔物だから村の小さい子でも知っていること。その繁殖方法。
「さら、聞こえてるか、サラ」
ああ、聞こえてるよ。
そう答えたつもりがこの口から出てくるのは荒い息だけ。もう返事をする余裕すらない。
「諦めるな。諦めるな、サラ。他の冒険者が通りかかるかもしれない。」
アルのその声は必死で、何をしようとしているのかばれているみたい。
どっちみちここで死ぬだろう運命は変わらない。そうであるなら、ゴブリン共にけがされるぐらいなら。
そう思って静かに取り出した銀色の刃。普段は解体とかに使っているこれのことが。
それに分かっているだろ、アル。
聞こえる範囲には誰もいない。後数十秒もすれば、命つきるこの場面でそんな奇跡みたいなこと起きるはずがないって。
だから最後に
「・・・・・・・・愛してたよ、アル。」
自分にすら聞こえないだろう声でそうつぶやいた。