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ノー・マーシー

 大銀貨が高く高く、宙を舞う。



(『観客に紛れたマギウス使いが二名、巨漢、そして女』)


(『必ず何かを仕掛けてくる。約束を破るのが自分でなければ良い、とでも言うつもりか?』)


(『二人が詠唱や即席発動に入ったら、遠慮はせんぞ。まずは貴様を即座に粉微塵にして、順々に始末してやろう』)


(『観客を並べて盾にしたつもりか?醜聞に躊躇するとでも思ったか?』)


(『かまうか。これは自らの正しさと、誇りの問題なのだろう?誰が騒ぎ立てようが、正しさは決して揺るがん』)



(『それとも貴様が先んじて、約束破りの攻撃か?』)


(『この距離でどうやって、その刀を当てるつもりだ?貴様が二歩踏み込む間に、たやすく粉微塵にできるわ』)


(『舐められたものだ。その驕り高ぶりもろとも、粉微塵に消し去ってくれる』)



 刀から手を放し、自然体で構える無敵丸が、一言だけ発する。

「万里一空」


『…何?』



 大銀貨は投げた場所から大きくそれて、そのまま落ちようとしている。



(『二人のマギウス使いの動きは…ない。何故だ?』)


(『此奴の動きもない…何を待っているのだ?』)



 その時、『粉微塵』のマギウス感知が、ひとりの怪しい動きを捉える。こちらに飛び出そうとしている。


(『なにっ!?動いたのはマギウス使いではない!?…ただの観客に紛れていただと!?』)



 大銀貨が澄んだ音を立てて、地面を跳ねた。


(『動いたやつは…こちらに来ない!ただの陽動?揺さぶりだと!!舐め腐って!!』)


 『粉微塵』は即座に、無敵丸を粉微塵にしようと左手を突き出した。


 突き出した左手は、目標を失う。


 無敵丸は、低い体勢ですでに抜き撃っていた。体を伸ばしきったような剣撃が、下から『粉微塵』の突き出した左腕を薙ぐ。


『おおっ!!』


 その剣筋は、美しかった。あまりに無理のある体勢だというのに、すべての四肢と筋肉は、ただ最高効率で刃をその箇所めがけて通過させようと、総力を上げて動いていた。

 『粉微塵』の肘から先が、刀によって飛ばされ、宙を舞う。



 無敵丸は返す刀で、踏み込みとともに『粉微塵』の肩口から脇腹までを袈裟斬りにする。



「我神一刀・唯我神剣」



 ズルリと滑る『粉微塵』の上半身。



 無敵丸は横薙ぎに、今度は力任せに刀を振る。

 『粉微塵』のパテまみれの首と差し込まれた台座を、刀が斬り裂く。

 『粉微塵』の極大魔石と鉄仮面は、飛んだ。




 目の淀んだ虚弱そうな男が、観客の人垣から飛び出して、跳ねた大銀貨に飛びつく。見知らぬその男は叫んだ。

「オレの銀貨だ!」

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