喰らうもの、喰らわれるもの
コアたまごたちの前に、風を裂く音とともに空から何かが落下してくる。それは足を表すような二本のポールを道に突き立て、轟音と土煙を上げた。
鉄仮面の頭、元は高価そうだったボロボロの服、左手以外の四肢は白いパテのようなものに覆われ、ただの円柱状の棒になっている。
変わり果てた『粉微塵』だ。
『見つ…けたぞ』
コアたまごはそれを見て目をパチクリしたが、気を取り直して肉のペーストをすくって食べた。
無敵丸はあぐらをかいたまま、肩をすくめて言った。
「超力兵団、弱いなぁ」
『粉微塵』は、口をモゴモゴさせているコアたまごに、鉄仮面を向ける。
『正しさだ』
『私を動かすのは正しさだ』
『この怒りの正しさを』
『正しさを損なう事への怒りが、どれほど正しいのかを』
『我が死と怒りの象徴である貴様を倒すことによって』
左腕と棒状の腕を、なにかを抱え込むかのように広げて上げる。
『万人に知らしめるのだ!!』
鉄仮面の奥が激しく光る。簀の入った目と口から、輝きが吹き出した。
「これ、天ぷらじゃない?」
コアたまごは少ししょんぼりしながら、無敵丸に問いかける。
「どうかな。お前の国ではどうだったんだ?」
「うーん、形は違う?材料は大体合ってる。味は食べたことがないからわからない」
「…じゃあ麸なんじゃないか?」
『今や私は、以前の私ではない』
『理解に理解を重ね、パワーがニューパワーになっていくのがわかるぞ』
『私の記憶が言っている』
『貴様を粉微塵にしなければ、なにもかも終わりを告げる。正しさを囲い込んで殺すものに、世界が侵され、破滅するのだ』
『証明するぞ、この一撃で。我が正しさを、新しきパワーを!!』
コアたまごに向けた『粉微塵』の左手に緑の光が宿り、光の球となる。周囲をマギウスエネルギーの奔流が渦巻き、気流を起こした。
『さあ食らうがいい、渾身の粉微塵を!!銀色の化物よ!!』
「今ごはん食べてるから、ちょっとまって」
コアたまごは、言った。
緑の光球を雲散霧消させ、『粉微塵』は左手をおろした。
『…食事中に押しかけてしまったか。これは失礼なことをした』
『失礼は不正だ』
『粉微塵』は少しうつむいた。
「わかればいいの」
コアたまごは、バナナペーストを口に運んだ。




