強い戦士ジャック vs 超力兵士ゴブリガン
倒れた燃える家は、更に爆発する。炎を伴わない爆発だ。
炎はかき消され、家は破片となって周囲に飛び散る。衝撃波がまわりの家々を震わせた。
そこにいたのは、屈強と言う言葉では表せないほど屈強の、半裸の蛮族の戦士だった。手には無骨なバスタード・ソードを持ち、ゆっくりと周囲を睨めつけた。
全裸のゴブリガンは衝撃波にのけぞった。そして体制を立て直したが、蛮族戦士の放つ気配に圧倒され、硬直する。
観客達がワラワラと、距離を詰めてくる。
「あれは…ジャックだ!強い戦士、ジャックだ!!」
観客の中に居た、訳知り顔の男が、まわりにふれ回った。
「強い戦士ジャック…強いのかい?」
興味を惹かれた男の質問に、訳知り顔の男は、おごそかに話し始める。
「…イリダン・ストロングホールド100人斬りの話は知っているか」
「聞いたことはあるが…」
「謎の男、『山崩し』のドラゴン狩りの話は?」
「…おい、まさか!?」
「ああ」
訳知り顔の男は、深くうなずく。
「そいつらより強いのが、ジャックだ」
「馬鹿な!?」「嘘だろ!?」「そんなに!?」「強すぎる!!」「すごい」
人々は色めき立つ。そして口々に囃し立てた。
「怪人に勝ち目はないぞ!」「だめだ怪人、逃げろ!!」「強い戦士ジャック!恐ろしい強さだ!」
半裸の蛮族戦士は、バスタード・ソードを片手にずいと進み出て、全裸のゴブリガンに視線を向ける。そして言った。
「俺の名はジャック。強い、戦士だ」
さりげない言葉は周囲にはっきりと響き、観客達は更に色めき立つ。
ゴブリガンは屋根を飛び降り、片膝を付いて着地する。そしてすっくと立ち上がった。
ゴブリガンを、奇妙な思いが支配する。今はこの強い戦士に、名乗りを返さねば。
渾身の力を込めて、その力を溜め込むようにうつむいていき、激しく何度も地面を踏みしめる。股間のものが、ブルブル揺れた。
「んんーーーーーーー!?」
そして跳ね上がるように全てをさらけ出す。
ゴブリガンを白煙が包んだ。全身を包むのは、薄く焼け焦げたゴブリガンスーツだ。その手には巨大な大鉈。不吉な気配の大鉈だ。
ゴブリガンは力強く、自信たっぷりに、ポーズを決めた。
「ゴブリガン!!」
観客のどよめきが広がる。だが満ちる緊迫感に、いつしかだれもが口をつぐみ、固唾をのんで見守った。
構えるゴブリガンのスーツの中を、とめどなく冷や汗が流れる。
間違いない。強い戦士ジャックは、強い。果てしないほど、強い。勝ち目のない戦いだ。
強い戦士ジャックは、バスタードソードを構えたまま、ずいと進み出る。ゴブリガンは、自分に降り掛かり押しつぶそうとする、圧倒的な死を感じた。
強い戦士ジャックは、背の剣帯に、バスタードソードを戻す。そしてゴブリガンに言った、
「いいセンスだ」
ゴブリガンはその言葉に、即座に大鉈を白煙に消す。そして嬉々として答えた。
「マジすか!!」
強い戦士ジャックは、ゴブリガンに向かって屈強な右手を差し出す。ゴブリガンはエヘエヘ笑いながら、それをガッチリ握った。




