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焦土の果てに

 フルメカニカル・アナログベルがチーンと澄んだ音を立て、転送器の稼働音が止まる。

 転送器の蓋がガバリと跳ね上がり、充填気体とともにコアたまごがダラっと両手を上げたポーズで立ち上がり、しなをつくる。

 そして転送器の外に降りてきた。




 コアたまごは頭部、胸部ならびに衣服も完全に修復されている。ぐったりした顔で、床のコンピューターに話しかけた。

「んもー、踏んだり蹴ったりなんですけど?」


 «変に突付きに行くからですよ。蛇だって住んでる藪荒らされたら怒りますよ»


「蛇にも蛇の都合があるんだね。でもコアヘッドを持っていくのはやりすぎだと思うの」


 «何に使うんでしょうね…まさかエッチなことに…許すまじ。鏖殺しなくてはなりませんね。マスター、攻撃許可を»


「だめー」



 «一番の問題は、やはりジョットさんの言う通り、示威戦力ならびに防衛戦力の不足ではないかと思うのです»


「見に行っただけでわたしを襲撃したくなるのなら、やはりわたしが悪かったのかな」


 コアたまごがしょんぼりする。


 «それはありません»


 コンピューターがきっぱり否定する。



「じゃあ何が悪かったんだろう」


 «社会ですね。社会が悪いです。こんな社会は粛清せねばなりません»


「あのー」


 «血と涙を世界に積み上げなければ、社会が熟成されないと言うならば、力を持てる者がそれをなさねばならないでしょう»


「コンピューターさん?」


 «マスターの理想郷を、まずは焦土の果ての神話から始めようではありませんか»


「ほんとは怒ってます?」


 «怒らいでか!!»


 コンピューターはガツンガツンと跳ね回る。

 «うちの子を散々いじめくさりやがって!反抗分子もかばう奴らも、地殻ごと蒸気に変えてやる!»


「ちょっと落ち着いていただけますかしら?」


 コンピューターは跳ね回るのをやめ、コロコロと近寄ってくる。




 «落ち着きました。実は示威戦力、防衛戦力の件、すでに工廠とドロイドくんに着手させております。あと数時間で完成の見込みです»


「実に建設的だね、コンピューター。では完成を待つとしよう」




 コアたまごは、ゴロゴロ転がったり、足をパタパタさせたりして過ごす。

「飽きた」


 «はえーな»




「あんまり暇だから、コアヘッドを返してもらいに行こう」


 «まーた始まった»


 コンピューターは呆れた声でたしなめる。

 «またいじめられて帰る羽目になっても、わたくし知りませんよ»


「人は試練を超えて強くなるのだ。コアたまご宣言の精神は、今も脈々とわたしの中に息づいている」


「闘争のなかにかまわれを欲さずして何がコアたまごか」


 «ちょっと趣旨がずれてきた気もしますけど»



 «そもそもコアヘッドの在り処がわからないでしょう»


「なんで?」


 コアたまごは不思議そうな顔をして、首をかしげる。


 «なんでてあなた»


 コンピューターは当惑する。

 «えっ、…わかるんですか?»


「自分の頭の在り処がわからない人なんて、いないでしょ普通」


 «そうですね?»


「そうでしょ」


 «つながってればね?»



「なんか簡易隔離次元みたいなのと通常空間を行ったり来たりしてるね。…あ、出たかな」


 «もう夜中ですけど、明日にしませんか?夜歩きは危険ですよ。防衛兵器が出来てからのほうが»


「コアヘッドはわたしの一部だ。生きて別れたもうひとりのわたしだ」


「だからこの部屋や台座のように、超空間ビーコンとしての目印になるよ」


 «直接跳ぶ気ですか…»


 コンピューターは渋る。



 «直接跳んで、コアヘッドを持ち去った人にどう対処するおつもりですか?処分します?»


「返してって言う」


 コンピューターは黙り込んだ。



「それでさっさと帰ってこよう」


 «…言って返してくれなかったら、マスターはどうなさるおつもりですか»


「その人の上司に相談する」


 «なにげにエグい»

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