表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/61

コ/アたま/ご

 『デス・サムライ』は、クリーム色の液体を踏みつけながらコアたまごの残骸に歩み寄ると、やにわに片足でその背中を踏みつける。

 ポーズの研究に余念のない緑の襲撃者にチラリと目をやると、マスクの裏でつぶやいた。

「おい、こっちがコアたまごか?」



 音の振動が足をつたって、中で困っていたコアたまごに伝わった。コアたまごは指向性次元振動波のひそひそ声で答える。

「ちょっとムッチー」


「やっぱりお前か」


「光学センサーもパッシブソナーも頭部に集中してるから、周りが全然わからないんですけど?」


 『デス・サムライ』は、言いにくそうに切り出す。

「あー、コアたまご。悪いんだがな」


「これ、前の肉の貸しで、見逃してもらえんものかな?」


 そういえば、ムッチーは潜入工作員だった。コアたまごはそれに思い当たる。

「お仕事大変ね」


「日々、人の情けにすがって生きてるよ」




 『デス・サムライ』は、コアたまごの残骸から足を下ろすと、倒れたジョットに歩み寄り、落ちた銀貨を拾う。そして銀貨を黒装束の隠しにしまった。

 そして振り向き、どこか遠くを見上げる。一度ジョットに目線をやってから、自分のマスクの顎をパンパンと叩いた。




「んーーーーーー!!」


 緑の襲撃者は、うつむいて激しく足を踏み鳴らす。そして跳ね跳ぶようにポーズをとった。

「ゴブリガン!!」


 襲撃者の表情がパァッと明るくなる。自慢げな顔で首を傾げ、舌を大きく垂らした。

 『デス・サムライ』は、そんな襲撃者に声をかけ、歩き出す。

「行くぞ、ゴブリマン」


「ゴブリガン!!」


「そうか」


 二人は連れ立って、闇の中へと消えていく。



 去り際に、『デス・サムライ』は、襲撃者に言った。

「あと、普通にしゃべれ」


「マジすか」




 汚い格好をした背の低い小太りの男が、おそるおそると物陰から近づいてくる。

「ゲヘフェフェ!ジョットの野郎もこうなっちゃあ型なしだ!」


 お持ち帰りおじさんだ。

「怖い奴らもいなくなったし、このガキは胸にきれいなブローチをふたつもしてただ。きれいなおべべだって洗えば売れるかもしれねえ。靴はサイズが合わねえが、これも立派なもんだ」


 ぐふぐふ笑いながら、お持ち帰りおじさんはコアたまごの残骸をまさぐろうとする。



 激しい破裂音、そして甲高い轟音が響く。

 汚い水瓶が割れて飛び散り、もうもうと蒸気が立ち込める。あたりを猛烈な熱気が襲った。

 お持ち帰りおじさんはのけぞって、ヒィと腰を抜かしへたり込む。



 現れたのは球体だ。四方八方に細いプラズマを吐き出す球体だ。飛び上がりそうなものを無理に押さえつけるように、ゆっくりとホバリングしながら近づいてくる。灼熱の大気が気流を起こす。

 そしてあたりに、憤怒に満ちた声が轟いた。

『機械を、水につけてはいけません!』


 お持ち帰りおじさんは、許してくだせえ、許してなどと言いながら涙と鼻水を流す。


『壊れちゃうでしょ!』


 球体はプラズマを消し、ほんとにもーなどと言いながら、コアたまごの残骸の上にポテリと落ちた。ジュウという音がする。



 «はぁ息切れた»


「コンピューター、今どうなってるの」


 «ムッチー様と撃った人は帰ったみたいですね»


「じゃあわたしたちも帰ろ。周りは大丈夫?」

 «お待ち下さい»



 コンピュータはお持ち帰りおじさんに、音声で呼びかける。

『危ないですので、離れて下さーい』


『巻き込まれは、大変危険です。離れて下さーい』


 腰を抜かしたままのお持ち帰りおじさんは、あわてて這いずり後ずさりする。


 «安全確認ヨーシ»


「不可抗力ダイブ!」




 球体も、残骸も、クリーム色の液体が染み込んだ地面も消える。そこには半球形にえぐれた地面があった。

 範囲を逃れたお持ち帰りおじさんは、顔をぐちゃぐちゃにしながら這いずって逃げ出す。



 後には穴と、倒れたジョットだけが残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ