セールス・トーク
「何故余計な人間を連れてきた?」
ドクター・ダイナモは『デス・サムライ』に一瞥をくれて、異星人を詰問する。
異星人は余裕の笑みを浮かべて答えた。
「今をときめくドクター・ダイナモにつなぎを作りたい人間は、表も裏もゴマンといるだろう?彼はな、報酬の代わりにわたりをつけろと言ってきたのだよ」
異星人が顎で指図すると、『デス・サムライ』は木箱を差し出す。異星人は木箱をひったくり、留め金を外し、箱を開けてみせた。中の巨大な宝玉が、みずからの光で金色にきらめく。
「彼にとってはこの偉大なる極大魔石よりも、価値があることなのだろう?」
異星人は得意満面でのたまった。
「…ほう?手に入ったか。なにを狩った?」
異星人は極大魔石の入った木箱を小男に渡し、鼻で笑って答えた。
「悪名高き『ケイオスの雄牛』よ」
「…カトブレパス・ゴルゴーンか」
「マギウスシティご自慢の超力兵団でも、かなりの被害が出ることだろうさ。それを単独でやってのける腕を、売り込みたいのだろう?」
ドクター・ダイナモはそれを聞き、『デス・サムライ』をねめつける。
「つまりは営業か」
少し眠そうに目をしばたかせる。
「腕のほどは聞いたがな」
異星人を一瞥し、気のない調子で『デス・サムライ』に吐き捨てる。
「何かと世話になっておるこの男の口利きならば、無碍にはできんがな。ワシはなるべく馬鹿の類とは付き合いたくないのじゃ。営業に来たと言うなら、なにか小粋なセールストークでも見せてもらえんものかな」
そして気のない調子で続けた。
「さすればウチの開発品の、売り子に使ってやらんでもないわい」
「では…一言よろしいか?」
『デス・サムライ』はマスク越しのくぐもった声で答えた。ドクター・ダイナモは少し意外そうに一瞥する。
「まあ、言ってみればいいのではないかね?」
「お耳を拝借しても?」
ドクター・ダイナモは少し苛立つ。
「武器は預けろ!」
『デス・サムライ』は慇懃な態度で小男に近接刀を差し出し、異星人の方をちらりと見ると、ドクター・ダイナモに近づき、耳元で囁いた。
「なれば、これ以上この男と付き合うのは、ドクター・ダイナモにとって徒労でありましょう」
「ハッ!」
ドクター・ダイナモは飛び上がるような大声で、鼻で笑った。込められた強い殺気に、飛び上がってしまったのだ。
「なんと?」
異星人は笑みを絶やさず尋ねる。
「あまりの美辞麗句に怖気が走ったわ!」
ドクター・ダイナモは興奮気味に言うと、落ち着きを取り戻して続ける。
「だが、ある程度の口は回るようじゃな?ちょうどウチの新製品が出来上がったところじゃ。君にはこれの売り子でも頼むとしようかの…新製品?新製人のほうがいいのではないかねイゴルンルンくん?」
「新製品でようございましょう」
小男は答える。
「よろしい。ではお前の主、ドクター・ダイナモが命ずる!目覚めよ、新製品ゴブリマン!」
椅子で弛緩する若者の、額にきらめく魔石に光が灯る。
そしてその両まなこが、クワッと開いた。




