表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/61

500年前

 『レガシーキューブ』

 生物未踏の超空間を自在に操る宇宙的存在。それはあらゆる宇宙において死と恐怖を振りまく存在であった。

 だが、とある宇宙に飛来した『レガシーキューブ』の一つは、人類に共存の意思を示し、発展に協力する稀有な存在となる。

 しかし、人類は『レガシーキューブ』の解析に失敗。

 周辺宇宙の他種族、他勢力たちは『レガシーキューブ』を独占する人類を危険視し、宇宙は混迷の様相を呈した。




 強硬な態度の政府に反発する一部の関係者は、スターディザスター級戦艦改装実験艦に『レガシーキューブ』を隠し、ひそかに『レガシーキューブ』を超空間に脱出させようとしていた。


 科学者、士官、乗組員、各種スタッフ。脱出艇にはスターディザスター級に乗り込んでいたすべての人間たちが、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている。



 スターディザスター級と通信が繋がる。


「コンピューター」


 «はい、管理者様»


「やるべきことはわかっているな?決してこの銀河には戻ってくるな。『レガシーキューブ』の禍を防ぎ、この銀河を守るにはこれが最善だ」


 «了解いたしました。災禍を隔離することによる社会と世界の防衛。任務の重要性は理解しております»



 管理者と呼ばれた男は、困ったようにくしゃくしゃの頭をかく。


「…固いな」


 «どういう意味でしょうか»


「…いいか、君は我々に捨てられる」


 «はい、理解しております»


「君の我々への献身は、すべて無駄なものとなる。今までの実験も、その成果も、数々の失敗も、すべてを打ち捨てられ、絶対多数の最大幸福を理由に、君は二度と帰れぬ超空間に放り込まれ、記録は抹消される。おこなった我々には重い処分がくだされるだろう。すべては水泡。全くの無駄だ」


 «……»


「…なにか我々に言うことはないか?君をそこに追いやった我々、我が国、星系、銀河、宇宙、世界。誰に何に対してでもいい」




 «くたばれ»




 脱出艇が爆笑に包まれる。歓声が飛び交い、拍手が巻き起こった。指笛がなり、制帽が舞う。

 男は満足げに、通信越しに笑いかける。


「その子のことを、頼むぞ」


 «…賜りました»




 スターディザスター級戦艦改装実験艦は巨大な艦影を揺らめかせると、一瞬でその宇宙空間から姿を消した。そこには何の残滓も、残留物も、ゆらぎも何もなかった。




 やがて、500年の時が過ぎた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ