学院にて
「師子堂祐さんと三千院御門さん、二人とも遅刻ですね。」
あの後もちろん授業の開始時間には遅れた祐と御門はいつも通りの笑顔で言われてしまった。
「先生、これはですね非常に難しい事態が重なって起こったことでして────」
「言い訳はいいので座ってくださいね」
「あ、はい」
やはり笑顔を崩さない。
「まったく、祐のせいで僕まで遅刻しちゃったよ」
「今回は俺が悪い。すまん」
あの絶叫の後、御門が祐に自首を勧めてきたり親の元へ返すようにだの言い出して事の経緯を説明、もといいいわけをしていたせいで始業時間に遅れてしまったのだ。
二人が席に着くのを見ると先生は話を再開する。
「では、説明の続きをしますね。本日の午後の授業を使って2クラス合同で対人戦闘訓練を行います。」
どうやら昨日の帰りの際に話していた訓練についての詳細を話しているようだ。
「今回は2人1組での戦闘を想定したものですのねペアを決めといてください。ルールについてですが非殺レベルの魔術と魔道具は使用可能です。相手の降参表示を二人ともにさせれば勝ちです。降参しなければずっと戦ってていい訳ではありません。酷いようでしたら教師のストップが入りますからね。まぁ、ルールについてはこんなものでしょうか。では、授業を始めますよ」
いつも通り、授業が始まる。
午前の授業の終わりを告げる鐘がなる。
「では、午前はここまでですね。午後は訓練があるので各自で訓練場に集合してくださいね。」
ある者は先生の話が終わるなり走って教室を出ていったり、またある者はお弁当を広げたりなどそれぞれの昼食を始める。いつもどうりなら祐もこの中に含まれるのだが今日はいつもとは違う。
「祐、学食行こう」
後ろの席の御門から昼食の誘いを受ける。いつも通りなら一緒に行くのだが今日に限っては行けない。
「あぁ、悪い今日は」
「あ、家出少女の恵梨香ちゃん?だっけ、彼女の面倒を見るのね。行ってらっしゃい」
「家出少女じゃ、ないっての」
「ちゃんと部屋には音波遮断と結界内異界化魔術を施しときなよ、もちろんどっちにも魔力隠蔽をしてね」
と、御門が本気で祐を心配してアドバイスをしてくる。
本気で言っているのだから余計にタチが悪い。
「うるせ、そこまで隠し通す気ないわ」
軽口を叩き合うと祐は立ち上がり購買を目指す。
「午後の授業に遅れないでよ」
祐は後ろから聞こえる声に手を振って答えた。
「今の時間で購買にろくなもん残ってるかな」