朝の事件
朝日がカーテンの隙間から覗く。
「ん?もう朝か」
今日は不思議とよく眠れた。桜が死んでからというものなかなか寝れず、眠れたとしても必ずといっていいほど悪夢が襲ってくるのだ。
ならば何故今日はこんなにもよく寝れたのか、理由は何となく分かっている。
自分の隣で寝ている恵梨香に視線をやる。気持ちよさそうに彼女は眠っている。桜と一緒に寝たことは小さい頃に数える程しかないがその寝顔と恵梨香の顔が似ていた。
「桜とどこか似てるこいつのおかげかね」
恵梨香が起きないように細心の注意をしながらベットから降りて体を伸ばす。いつもならここで頭痛が襲ってくるのだがいつもよりも眠れたため頭痛は襲ってこない。
こんなに気持ちよく眠れるなら教師に恵梨香を預けず自分で面倒を見るのも悪くないかもしれない。
「って俺は何考えてんだ」
我ながらバカな考えだ。桜を失ってできた自分の心の穴を似ていると言うだけで恵梨香で無理やり埋めようとしていたのだ。
気持ちを落ち着つかせてから今の時間を確かめるために時計を見る。そこには信じられない時間が表示されており、一瞬目を疑った。
「8時50分か、8時50分ッッッ!!!!!」
学院の授業の開始時刻は9時、つまりあと10分しかない。
今から着替えて全速力で走って行けばまだギリギリ間に合うはずだ。
「ええい、とにかく急がないと」
バタバタと急いで準備をする。
「そんなに急いでどうしたの?」
いつの間にか起きていた恵梨香が目を擦りながらこちらを見る。ちなみに今の恵梨香の格好は桜のTシャツが少し大きかったのか肩が出ているため妙にエロい。
だが、今の祐にはそれをツッコんでいる余裕はなかった。
「時間がやばいんだ。悪いがお前のことは放課後にする。あと部屋出るなよ」
「わかった」
そう言った瞬間恵梨香はベットにばたりと倒れ込んだ。視線をチラリと向けると糸が切れたかのように脱力してだらしなく腹を出して寝ていた。
「二度寝するのかよ、いいご身分だな」
いくら今が春でそれも日中とはいえ腹を出したままでは風邪をひくかもしれない。仕方なく毛布をかけてやろうと恵梨香に近づく。
「祐?かなり遅いけど大丈夫?」
廊下の方から中々来ない祐を心配してきたのか御門の声が聞こえてきて、扉を開け部屋の中に入ってくる。
(この状況ヤバいんじゃね)
祐は改めて恵梨香を見る。生脚が出てて肩と腹まで出している。
後ろから気配を感じ振り返ると御門が祐と恵梨香の間を視線を交互させる。
「えっと、家出少女はお持ち帰りしない方がいいと思うよ」
「ちぃぃがぁぁぁぁぁぁう!」
祐の叫び声が男子寮に叫び渡った。