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君達と変えるこの世界  作者: 八巻 千尋
謎の少女との出会い
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4月20日の夜

二人が祐の部屋へ行くまでは恵梨香が認識阻害魔術を使って見られないように注意する。

認識阻害魔術は祐も使えるが女子寮から男子寮まで行くには魔力が足りない。ここまで魔力を消費して恵梨香は汗ひとつかかない。彼女の魔力量は底が知れない。恵梨香は一体何者なのか、ますます分からなくなってきた。

当人である恵梨香は祐の部屋に入るなり机の中を見たり、ベットの下に手を入れたりしている。

「お前、何してんだよ」

「男の子と部屋に来たらエッチな本を探すのが普通じゃないの?」

顔からして本気で言っているのだろう。

(こいつの記憶を失う前はどんなことしてたんだよ)

はぁ、

と大きなため息をついてしまう。

「疲れているの?」

「あぁ、どっかの誰かさんのせいでな」

「誰のせい?」

「お前だよ、お!ま!え!」

なぜかイラッとしてしまいアイアンクローをしてしまう。

少ししてから恵梨香を解放して、真面目な話をする。

「なぁ、お前俺の事を知っているのか?俺の名前を言った時だけ反応が違かっただろ。」

すると恵梨香は真面目な顔になる。

「私はあなたのことだけじゃなくてアルバムにいた女の子とことも知っている。」

訳が分からない。恵梨香は祐と桜のことを知っているという。だが、祐の記憶にあるかぎりでは恵梨香のような少女とは出会ったことは無い。

「あとさ、魔術はどこで覚えたんだ?どこの学院だ?」

「見て覚えた。人が使っているのを見て覚えた」

見て覚える。不可能ではないのだが人間技ではない。魔術を使う際に起動の一瞬前に魔術式がでる。それを一瞬だけ見て覚えられれば見て覚えることが可能だ。しかし、恵梨香が先程描いた術式は四段階目つまり、個人が使う中では最高位だ。それを見て覚えるなんて不可能だ。

だが、ふと、祐の中に新たな考えがよぎる。

恵梨香は本当に人間なのだろうか。最近の魔術研究では人間にほとんど近い魔獣を創る研究が進んでいるのだ。どこから現れたか分からない少女。人間と証明できる材料はない。

「どうしたの?祐?」

「あ、いや、なんでもない」

これ以上考えるのはよくないと自分に言い聞かせる。

「お前は風呂入れ、着替えはそこにあるから」

「はーい」

恵梨香と接していると何だか安心してしまう。御門以外とこんなに話したのは久しぶりだ。とは言っても明日の朝一で先生に報告して、預けてそれで終わりだ。

明日のやるべき事を決めると祐はベットの位置をずらし、下にある仕掛け床を開ける。そこにはひと振りの刀と1冊のノートがあった。








それから20分程が経ち、恵梨香の次に祐が風呂に入る。

そして恵梨香は動き出した。

ベットの位置をずらし仕掛け床を開ける。そこにあるノートを開けると日記が書いてあった。

恵梨香は祐と桜という少女について間違いなく知っている。何か自分の記憶の手がかりを探すために祐の部屋に入ったら部屋の中を物色しだしたのだ。

そして恵梨香は日記を読み進める。日付は約一年前から一年前から。

『4月28日

桜が亡くなってからしばらく経った。ようやく気持ちに整理がつき、これを書くことにする。』


『6月3日

桜の誕生日だ。クラスのみんながお祝いしていた。俺はある術式を見つけた。桜を蘇られることが出来るかもしれない。』


『8月17日

国の機関に頼んで資料を送ってもらったが進展はなかった。』


『10月20日

桜が死んでから半年が経った。正直に言うと辛い。最近はクラスのやつらともまともに話せてない。時間が過ぎる程に桜の大切さを実感してきた。』


『1月12日

何も、進展はなかった。桜に会いたい。会えるならなんだってする。』


『4月20日

今日で桜が亡くなってから1年が経った。今日は変なやつと出会った。ほんとに変なやつだ。』


日記はほとんど内容のない日もあったが一日とて欠かせた日はない。

読み終えると恵梨香は泣いていた。なんで自分が泣いているのか理解するのに時間がかかった。自分はこのことを全て知っている。まるで体験したかのように。

日記を元に戻し、ベットも戻す。

ベットの上にダイブする。

「私はやっぱり二人のことを知っているのかな」

するといつの間にか風呂から上がり着替えをしていた祐がいた。

「まだ寝てなかったのかよ」

「ッ!………ごめん、なんか寝れなくて」

祐の声が聞こえると恵梨香は直ぐに涙をふいて祐の方を向く。

「祐が添い寝してくれないと私、寝れな〜い」

「ばっ、変な事言うんじゃない」

顔を真っ赤にしている祐を見ると何だか笑ってしまう。

「どうせベットは1つしかないんだし、二人で寝よ?」

「わ、分かったよ」

明かりを消して二人ともベットにもぐる。

「おやすみ、祐」

「おやすみ」

恵梨香は考える、本当にあの日記を書いたのは祐なのだろうか。

(あれを見た事は祐には黙っておこう)

そして夜が更けていく。


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