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君達と変えるこの世界  作者: 八巻 千尋
謎の少女との出会い
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4月20日の朝

4月20日

『今行くよ、待っててね』

誰かの声が自分の頭の中に響く。テレパシーでも受け取ったかのように感じる。

しかしおかしいとか思わない。別に珍しいことではなくよくある事だ。けっして自分が電波系の人間というわけではない。ただ、自分のような人間はよく他人の夢や考えが睡眠中に夢としてみることは珍しくない。

不意に体を強く揺すられ眠りの邪魔をされる気づけば誰かの声は掻き消え意識が現実世界に引き戻される。このようにして起こされることに懐かしさを感じてしまう。

「ん、んぅ〜」

少しずつ意識が覚醒してくる。目を開けると自分の部屋の天井が見えたかと思うと青髪のイケメンが視界に飛び込んでくる。

「お〜い、起きろ〜遅刻するよ〜」

自分が予想していた声とは違う声が聞こえる。

「ん?桜じゃない?」

「残念僕でした」

「……おやすみ」

起こしてくれた青髪の少年の顔を見た瞬間嫌そうな顔を相手にわざと見せてから布団をかぶり直す。数秒後にはすやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。

「おいおい、寝ないでくれよ。遅刻するよ」

さっきまで寝ていた少年────師子堂祐が渋々といった感じに起き上がる。

「わーったよ御門」

祐を起こしに来た少年────三千院御門が祐の反応を見てニコニコと笑っている。

祐という少年は鼻筋は綺麗に通っていて綺麗な顔立ちだが自分の顔には興味が無いのか黒髪のくせっ毛が印象的な少年。

御門という少年は育ちの良さがわかる顔立ちに手入れしている青髪、メガネが印象的な少年。

「なんでこんな時間に起こしに来たんだよ。まだ、7時だぞ」

いつも通りならば7時半に起こされるはずなのに今日はいつもより30分も早い。祐は基本的に遅寝遅起派の人間のため一秒でも長く寝ていたいのだ。

祐は寝不足特有の頭痛を我慢しながら立ち上がり冷蔵庫からペットボトルに入っている水を一気に飲む。半分ほどまで飲むと御門が祐の質問に答えてくれる。

「忘れたの?今日は学院長が帰ってきてありがたぁ〜いお話を聞くんだよ。そのおかげで今日は午前授業だけどね」

「今日、午前授業なのか」

祐はペットボトルのキャップを締め冷蔵庫にしまう。ハンガーにかかっている制服を取り着替え始める。

「……あのさ、戌井さんの荷物整理まだ、終わってないんだろ?手伝おうか?」

「いや、いい。1人でやりたいんだ」

御門が腫れ物にでも触るように祐に言葉を選びながら聞いたが祐は気にしてなさそうに即答する。祐は御門には見えないように一瞬だけ表情を曇らせる。もちろん御門にはそれが見えない。

「そっか」

御門は安心したように笑顔を作る。祐もついさっきの表情ではなく御門の笑顔に呼応するように笑顔を向ける。

祐が着替え終わる頃には御門が部屋の外に出ていて廊下で待っていた。

「あれから一年か」

祐は御門に聞こえないように1人つぶやく。その声には感情が無かった。全くの無の感情。

「祐?早く行かないと遅刻するよ」

「あ、あぁ」

急いで着替えを終わらせ祐は御門の後を追い学院をめざして歩き始めた。

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