解決口
それから3日はこれといったことは無く過ぎていった。
教室では
「未だに魔術がどのようにして生まれたのかは分かっていません。そして────えっと、師子堂君。恵梨香さんをどうにかしてくれませんか?」
生徒達の視線の先にあるのは窓から教室の中を覗く恵梨香だった。
「すいません!」
学食では
「君、師子堂君だよね」
学食に行くと学食のおばちゃんに声をかけられた。
「はい、そうですが」
「あの子が食べた分払ってね」
おばちゃんの指さす方向へむくとこれでもかと言うほど大量に食べていた恵梨香だった。
「すいません!」
放課後の図書館では
「人体製造術式か、これじゃ桜の人形を作るようなもんか」
「祐!祐!本がいっぱいあるよ!すごいすごい!」
あまりにも大きな声を出す恵梨香。そのせいでその場にいる全員から敵意の視線を送られる。
「すいません!」
恵梨香にとってここで見たもの聞いたものは全てが新鮮なのかとても毎日が楽しそうだ。
4月27日自体が動き出す。
「今日は物体修理系統魔術の実験をしますね」
「は〜い」
生徒達の間延びた返事が帰ってくる。
「各班に配った片腕だけの人形を教科書通りにやって制限時間内に直してくださいね」
机を見るとそこには片腕しかない人形と人形の元となる材料が置いてある。
明らからに腕だけを引きちぎったようだ。
「時間に余裕がある班は記憶読み取りもしてくださいね。では、始めてください」
生徒達が作業を開始する。
「僕達も始めようか」
「そうだな」
まず人形の片腕から人形につての情報を読み取る。読み取った情報を人形の材料に打ち込み、形作っていく。
10分もすると人形は元の姿に戻った。
「あとは、記憶読み取りだっけ」
記憶読み取りはその物体が持つ記憶をそこに映し出すと言うものだ。
「では、そこまでです。作業を終了してください」
先生の掛け声とともに生徒達は作業をやめる。
「授業時間も残り僅かなのでちょっとした話をしますね。記憶読み取りですが過去に人から記憶を読み取り映し出すという実験が行われました。その映し出した記憶を使ってライオンの記憶をネズミに移したりする実験も行われました。ですが、記憶の移し替えはとても高度な技なので皆さんはやらないでください。では、さようなら」
生徒達が荷物をまとめ始める。
祐は考えていた。
「先生少しいいですか?」
「何か質問ですか?」
先生は愛想良く答えてくれた。
「人の記憶を人に移すことは可能ですか?」
「そうですね、理論上は可能ですが『人』の記憶はあまりにも複雑です。移し替える際にかかる負荷に術者が耐えられません。まさか!やろうなんて考えてませんよね!」
祐の考えていることはバレてしまったようだ。
祐の中にある桜に関する記憶を移し桜という存在を作ろうとしていたのだ。
「多分、俺じゃ出来ないかもしれませんが、世界最強レベルの魔術師ならどうですか?」
「それは………」
不可能とは言いきれないらしい。
「ですが、前提を忘れています。これは移し先つまり戌井さんの体がないと出来ません」
「だったら、片腕だけでもいい、指でもいい、爪でもいいから取りに行くだけです」
祐はカバンを持ってもうピードで寮までの道を走った。
「師子堂君!ちょっと!師子堂君!これは学院長に報告した方が良さそうですね」
山田先生は学院長室へ向かった。