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君達と変えるこの世界  作者: 八巻 千尋
謎の少女との出会い
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戦いの後

漆黒の闇が晴れていく。

闇は晴れても未だにそこには煙が立ちこめている。

「あ、ああ、い、や」

恵梨香が無意識のうちに言葉にならない音を漏らしていた。

そこには後悔と絶望がある。

恵梨香は膝から崩れ落ち、放心したように祐がいるであろう場所を見つめる。

煙がうっすらと晴れる、するとそこには人影があった。膝をついている者と、立っている二人がいるのが分かる。

祐と誠だ。祐は2本の足でしっかりと立っている。

刀に体重を預けるようになってはいるが目立った外傷は見られない。

辺りは建物は軒並み倒壊し地面は一面えぐられているが祐の後ろだけがまったくの無傷だった。まるで祐を避けるようにしてあの攻撃が通ったかのようだ。

祐が何かしらの魔術を使って恵梨香の攻撃を防いだのは明白である。

攻撃を防いだ当の祐は動かない、いや、動けない。

誰もが何も動けず話せずいるせいで、祐が一人ついている荒い息がやけに大きく聞こえる。

「……ハァ、ハァ、ハァ、ウッ」

荒い息を着いていた祐は突然力尽きたのか膝から崩れ落ちた。

祐がその場に崩れ落ちてもその場の時間が止まったように誰も動けなかった。

「祐!大丈夫か!」

それを破ったのは御門の声だった。その声が静寂を無理やり破ったことでどこか遠くの観戦席で悲鳴が上がる。

ビルの上から飛んで祐の近くに着地する。

御門は誠が呼び出した龍を見て急いで駆けつけたのだ。

「返事しろ!呼吸は?あるな、脈もあるし霊魂がかなり傷ついてるな、直ぐに医務室の先生に治療してもらわないと」

御門は急いで祐の口元に手を当て呼吸の確認。首筋と手首に手を当て脈のチェック、霊視を使って霊的に祐の状態を見る。

「なんで、ここに、いるんだよ」

聞き取ることも困難なほど声がかすれている。

手をそっと御門の手に添える。

「喋るなッ!《ここに奇跡を・神の慈悲を・今ここに!》」

御門は治癒魔術で傷ついた祐を治していく。

パッと見は外傷はないが、服の下は恐らくとてもグロテスクなことになっているだろう。祐は先程まで誠と戦っていてその時に一時的に傷を塞いだが、今の無茶で傷が開き出血量が生半可ではない。

御門は集中して治癒を続けるが傷がひどすぎて御門の腕では傷が塞がらず治せない。

「なんでだよ!なんで治らないんだよ!」

「それじゃダメ、どいて」

先程まで放心状態だった恵梨香が御門を無理やりどかす退かす。

「《かの者に安らぎを・慈悲ではない力を・今ここに》」

すると、直ぐに祐の傷が塞がっていく。

御門が霊視を使い祐の霊魂を確認しても分かる。霊的にも外的にも祐を完全に治してみせたのだ、恵梨香は。

「痛く、ない?」

祐は起き上がり体のあちこちを触り確かめる。

「すげー、なんで俺生きてんの?」

「彼女が治癒魔術、それも儀式クラスの魔術で治したんだよ。彼女何者?」

「何者って聞かれても俺が知りたいくらいだ」

「ともかく、あと数分もすれば講師が雁首揃えて来るだろうからそれまでに言い訳を考えておきな、口裏くらいなら合わせるからさ」

「マジかよ、……恵梨香?なんかいい言い訳ないか?」

祐は期待の眼差しを恵梨香に向けると顔をぐしゃぐしゃにして泣いている恵梨香そこにいたがいた。

今の治癒をしていた時とは全く違う、一度押しとどめた感情が再び押し寄せてきたため一度目よりもより激しく感情を表に出す。

「えっと、俺なんかしたかな?」

「いつもなにかしてるよな?」

「否定はしないし、出来ないし、する気もないな」

「バカ!バカ…バカ…バカ…」

御門と冗談話をしていると恵梨香はゆっくり立ち上がりノロノロと歩き始める。

「……バカぁ」

恵梨香は祐の胸に飛び込み泣きじゃくる。

年相応どころか、感情がコントロールできない幼子のようだった。

「なんで、なんで危ないのに、飛び込むの?死にたいの?わかんない、わかんないよぉ」

恵梨香が思いを全て口にするとズルズルと降りていく。

「いくらあいつがむかつくやつでも、死なれたくなかったんだ、ほんとに、ごめん。心配かけたな」

祐はかがみ恵梨香の頭を優しく撫でる。

少しの間静寂があたりを支配する。

祐が不意に御門に声をかける。

「悪いな、御門ほんとにゴメン」

「心配かけたことならいいよ。いつもの事だし、ただ死にかけるのはもう勘弁ね」

「…………分かってるよ」

御門の返事に歯切れが悪そうに祐がごにょごにょと口ごもる。

「祐?どうしたの瑠」

「いや、ね?それもあるけど…………」

「ん?」

バツが悪そうに祐は言う。

「ホントごめんな、御門。とりあえず、1回逃げるぞ恵梨香」

祐の胸の中で泣いている恵梨香はコクッと首だけで返事をする。

すると、祐と恵梨香の足元にブラックホールのようなものが現れて二人はそこへ落ちていった。

「え?」

御門はあたりの状況を見渡す。

倒壊した建物、えぐられた地面。いつの間にか気を失って伸びている誠、。

遠くから教師がこちらへ来ていることがわかる。

「この状況、僕が収集つけるの?嘘でしょ?」

御門の問いに答えるものいなかった。

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