オープニングフェイズ3
ここはUGNのN市支部。表向きは喫茶店となっているこの建物の地下に、支部長であるナツキは居た。
喫茶店の経営とUGNの仕事の両方に追われているナツキは多忙だ。今も朝早くから支部長室で机に向かい、各種書類の整理と確認を行っている。
すると支部長室のドアがコンコンとノックされた。
「入りたまえ」
ナツキの部下の一人である男が、頭を下げて部屋へと入ってきた。その手には何やら報告書がある。
「……また提出が遅れたのか、キミ」
ナツキは呆れたように言った。ただでさえ書類に追われてうんざりしているところへ、遅れて提出される書類が増えるなんてたまったものではない。
だがその報告はナツキが想像していたものとは異なっていた。
「支部長、ご報告いたします。緊急事態です。FHエージェントのN市侵入を感知しました」
部下の報告に、ナツキの表情は真剣なものへと変わる。
「活動しているのは、“バンダースナッチ”と呼ばれるFHエージェントのようです。目的の為には手段を選ばない、危険なエージェントだとUGNのデータベースには記録されています。どうやら奴は、このN市で何かを探しているようです。現在は、ジバシを“バンダースナッチ”捜索にあてています」
ナツキは久々に不穏な気配を感じ取る。N市を任されているUGN支部長として、FHの怪しげな動向を見逃すわけにはいかない。
「ナツキ支部長、これから如何いたしましょうか? ご命令を!」
「……私が出る」
重々しく口を開いたナツキ。自らが直接動くべき大きな案件だと、ナツキは判断した。
現在“バンダースナッチ”の捜索にあたっているジバシはこのN市所属のエージェントの中でも特に優秀な男だ。ナツキはジバシに引き続き捜索をさせて、そのバックアップを自分が行うという万全の体制で事件にあたることを部下に伝えた。
「分かりました。では、そう手配いたします」
ナツキの指示を受け、報告に来た部下の男は頭を下げて退室する。
FHの動向に素早く対応出来るよう、ナツキはより一層気を引き締める。
そしてその数時間後、ジバシから「FHに追われる少女を保護した」との連絡がナツキの元へ届けられたのだった。