第二編 第4話 覚悟
久しぶりの投稿となりました。
これからはもう少し早いペースで投稿したいと思います。
あれから約一週間がたとうとしている。
今日は日曜日ということで、俺は近くの公園に来ていた。
「ご主人様?いつまで強情張ってるつもりですか?
いい加減気を取り直してまた人々を助けていきましょう!」
ゆらがはつらつとそう言った。
正直うんざりしている。
確かにあの時、俺は何人かの命を助けたかもしれない。
しかしその分、多くの人を切り裂いて、あんなにもむごい形で殺してしまっている。
たとえそれが悪いことをした人々であっても許される行為ではない。
あれから俺は何度も夢を見る。あの日の夢だ。
周りには原形のない塊が転がっていて、俺はただそこに立ち尽くしている。
抑えられない罪悪感に押しつぶされて、消えたくなるところで目が覚める。
もうあんなことをするのは、ご免である。
「まあまあそんなこと言わずに、ご主人はたくさんの命を救っているんですから。
その際に悪い奴らを倒したって、結果的に見たらそれも善し、となるでしょう。
事件を防ぐのに一番手っ取り早いのは、つまりそういうことなんですから。」
そんなこんなで、俺は公園を後にして、家へと帰ることにした。
帰宅後、俺が部屋で勉強をしていると、妹の唯子が入ってきた。
「兄さん、少し話があるんだけど・・・」
妹はそう言って静かに語りだした。
「最近、よく変な夢を見るの。
私が大きな男の人に何度も殴られて、蹴られて、とっても怖くて泣いているところに、
兄さんが助けに来てくれる夢。」
「夢だからはっきりとは覚えていないんだけど、
兄さんはとても強くて、私の周りにいた人たちを倒してくれて、
私はとっても嬉しくて、何度もお礼を言う、そこでいつも目が覚めるんだけど、、」
「えっとね、つまり何が言いたいかっていうと、
もっと元気を出して、兄さん。
最近みてて思ってたんだけど、ここのところ兄さんとても調子が悪そうで、
心配していたの。
私が一週間前の事件に巻き込まれたのは、私の責任であって兄さんのせいじゃない。
だからそんなに気に病まないで、兄さん。」
「兄さんはいつだって私にとって一番頼りになるひとだから。
そんな人が元気を失ってたら、私は悲しい。」
「相談があったらいつでも聞く。
だけど兄さん、どうか元気を出して。」
妹はそれだけ言うと、部屋から出て行った。
妹とは、なんと心強いものなのだろうか。
「妹さんにまで言われちゃいましたね、ご主人。」
妹があんなに俺のことを見ていたとは、全く知らなかった。
「あんなに言われて、ご主人?
まだ元気が出ないとでも?」
不意に俺は思い出した。
この前、助けた直後の人々の反応を。
まだ記憶操作を行う前だったので人々は俺が強盗犯を倒す瞬間を覚えてくれていた。
状況が呑み込めていない俺に、彼らは称賛の言葉を送ってくれたのだ。
なぜ今思い出したのか、それはわからない。
ただ、俺の決意を固めるには十分だった。
「ご主人!
ついに決心されたのですね!!」
ああ、ゆら。
俺は決意した。
この力を与えられたのは何かの偶然かもしれない。
でも使うのは俺だ。
事実、俺は多くの命を救った。
その分多くの命を奪ったのも事実だ。
俺はこの体験を決して忘れない。
そして今のこの覚悟も、だ。
俺は、
この力を受け入れ、人々のために力を使う。
そう、決心した。
「ご主人・・・。」
こうして俺の人生は、
大きく動き出していった。