第一編 第4話 不思議
昼の12時。
多くの人間や獣人たちが大通りに溢れかえる時間帯である。
そんな中、一際目立っている男がいた。
彼の名前はシャラ•リョウタ。
この街の一大ギルドである、リーヴバラ団を実質的にまとめている副リーダーである。
今日も彼は昼ごはんを食べに大通りへ来ていた。
「今日は何を食うかなぁー」
「先輩のおごりっすよね」
「調子乗ってんじゃねーぞー。」
後輩一人と一緒に街を歩いていた。
「タブの肉は最近ずっと食ってるしな〜、今日は気分を変えてシウの肉でも食ってみるか。」
「さっすが先輩。ごちそうさまです。」
「ったくしゃあねぇな〜」
「ありがとうっス」
二人はあるレストランに入った。
食事が運ばれてくるまでの間、二人はしばし話していた。
特に内容のない話なので、ここには載せない。
そんなときであった。
一人の女性が入店して来た。
「先輩!あの女性みてくださいよ」
「ぁあ?」
後輩がいきなり声をひそめたので、その指がさす方を見てみる。
「か、かわいい…」
一言で言えば、絶世の美女だった。
スレンダーなのはもちろんのこと、整った眉、大きな瞳、名画のような顔立ち、腰まで伸びた黒髪。バトラーレベルまでもが高く、まさに完璧な女性というにふさわしい人物だった。どこかで見たことがあるのは気のせいだろうか。きっとさっきちらっと見たとか、そんなのだろう。
「まじでかわいいっすよね。
ちょっ、おれ声かけてきまッス。」
「おっ、おい」
後輩は駆け出した。
「おねーさん、かわいいね、
どこから来たの?」
後輩がそう尋ねたのを、女性はまるでそこに何もなかったかのようにして無視して過ぎ、リョウタの座っている席の近くまでくると、こういった。
「あなた、電脳世界の王に少し近づいて来たわね。これからが楽しみだわ。」
「っつ…」
何をいっているのかがよくわからなかった。
どこかで聞いたことがあるような単語が出て来たのは気のせいだろうか。
「もう行くわね。」
女性はそういうと、外へ出て行こうとした。
リョウタは急いで追いかけた。
「ちょっと待て!」
女性はリョウタの方を向かずにこういった。
「そう焦らなくとも、またすぐに会えるわ。
向こうの世界でね。」
そういうと、女性は外へ出ていった。
リョウタはまたしても外へ出るが、
「おれは何をしていたんだっけ。」
しばらく食事をした後、店を出てギルドに戻る。
団長のフォールが会議を開くといっていたので、直接会議室に向かう。
次回攻略するためのギルドについて話し合うといっていた。リョウタは眠くならないように、睡眠防止魔法を唱え、会議に臨んだ。
会議の内容はさほど重要でないので、省く。
一週間後、リーヴバラ団は地下のボスを倒すためにダンジョンへ来ていた。
「今回は前回に比べ、大分難易度が上がっている。死にたくなければ、ここで帰っても良い。
そんな奴はここにはいないと思うがな。」
これはフォール団長のいつもの鼓舞の仕方だった。
「いざいくぜ!野郎どもーー!!」
「おおおおああ!!!!!!!!!!」
8部隊総勢百人に及ぶ今回のボス戦は、特に危険視されていた。地下のボスは、ドロップアイテムが良い代わりにとても強いとの噂があった。
これまでに歴史に残る人物たちがここで争いを繰り広げたという。
ボス部屋前、百人だったチームはいつの間にか三分のニ程度までに減ってしまっていた。
「団長、どうしますか。」
リョウタは尋ねた。
「ここまで来て引くのは死んだみんなに顔が立たねぇ。おれはいくぜ!」
「そういうと思ってましたよ。」
そしてボス部屋へと入っていった。
ボスは亜人族型で、両手に大太刀を構えていた。
「リョウタ、いつものやつでいくぞ」
「わかりました、ボス」
リョウタの剣さばきは美しいことで有名だった。
華麗に空を斬り裂くリョウタの剣に合わせて、フォールの大太刀が地面を割る。
まるで芸術作品のような二人の合わせ技により、地下のボスをあと少しまでに追い詰めたときであった。
ガガガッ…ガガッ…ガガ……
いきなり目の前の景色が歪んだ。
おれは気分を悪くして、猛烈な頭痛と吐き気、全身痛、ありとあらゆる苦しみを身体中で感じた。
ひたすら苦しい時間を過ごした。
「はっっっっ。」
目を覚ましたのは、自分の部屋のベットの上だった。
「兄さん、遅刻してしまうよ。
早く起きて!」
妹が部屋をノックしてから過ぎていった。
あれ、さっきまではおれはどこにいたんだっけ。
しばらく記憶が戻らなかった。
あれ?確かおれは研究所で、実験を受けてて、それから、???
瞬間、全てがわからなくなった。
なぜ、ここにいるのか。
実験はどうなったのか。
なぜ実験中の記憶が失われているのか。
考えれば考えるほどわからなくなる。
そして、おれが今最もわからないのは、
なぜおれの目の前に妖精が浮かんでいるのかということだ。