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電脳世界と人生ゲーム  作者:
第一編
3/10

第一編 第2話 急展開

その日は、朝から雨が降っていてジメジメとして気持ちの悪い朝であった。

妹大好きな良太は今日もいつも通りの日々を送る。

「おはよう、咲良。」

「気安く話しかけないでよ、気持ち悪い。」

「あはははは…」

これが毎日のやりとりである。

良太は過去に調子に乗って咲良に告白してからというもの、ずっとこの状態なのである。


「大体あんたみたいな人間がこの私の兄だなんて、、気持ち悪い。」

「あはははは…」

「笑ってばかりじゃなくて何か反論すればいいじゃない。反論すらできないだなんて、、気持ち悪い。」


咲良は中3で受験期に突入したこともあり、機嫌があまりよろしくないようである。


ただこの二人は、また地域では有名な完璧兄弟であった。良太は成績優秀、運動神経抜群であり、咲良は海外の高校から推薦が来ているほどであった。

彼らの性格を知らないものは皆が彼らを羨ましがるであろう。


そんなこんなで、良太の1日は今日も始まった。


「良太?どうしたの?浮かない顔してるけど」

こちらも美少女、幼なじみの夕美が話しかけてきた。

「すこし落ち込むことがあってな、お前には関係ないよ」

「そんなことない!良太は私の大切な幼なじみだよ!何かあったらなんでも相談してっていっつも言ってるじゃん!」

夕美は口を尖らせて怒る。

「わかったわかったって。」

このままだとめんどくさいことになりそうなので、とりあえず謝っておく良太。

「じゃあ相談して?ね?」

「いやでもなぁ…」

「相談してくれなきゃ泣いちゃうよ?

良太は女の子泣かしてもいいの?」

「分かった分かったからこんな大通りで泣くことだけはやめてくれ。」

「ふっふー。じゃあ私に相談しなさい?」

めんどくさい、そう良太は思った。

彼女、夕美は学校ではおとなしく美しいと評判なのだが、本当の中身はこれだ。

良太が妹を好きになった原因のすこしは

こいつの本当の性格を知ってしまったことにあるのでは、とも思った。

ともあれ、良太はなんとか学校までごまかしながらたどり着いた。


学校へ着くと、いつも通り佐倉誠が席についている。

彼女はいつも朝早くから学校に来て、何かを熱心に読み込んでいる。

良太はあの不思議なことを言われた日から、二ヶ月近く彼女と話していない。

厳密にいうと、ペアワークの時などは話しているが、私情で話しかけたりはしていない。

今日もまた何も話さないまま、朝礼が始まろうとしていたその時だった。


「あなた、電脳世界って信じる?」


不意に佐倉誠が話しかけて来た。

「なんだ急に。」

良太は驚きを隠せなかった。


彼女はいきなり説明を始めた。

「そもそも電脳とは中国語でコンピュータのことを指すの。多くの情報を処理し、ネットワークを通じて情報を公開する。オンラインゲームならあなたもしたことくらいならあるはずよ。あれもコンピュータを使いネットワークを通じて多くの人と繋がることができるわよね。」


いきなりすぎて良太はしばらく理解ができなかった。内容もそうだが、なぜ彼女がいきなりこんなことを話し出したのかも、わからなかった。


「私たちは電脳と人間の脳をリンク、つまりくっつけることに成功したの。それによって人間の処理力の多大なる増幅をしたり、日常ではあり得ない体験をしたり、さらには人間の脳をデータで管理することすらできるようになったのよ。」

彼女は冷静かつ淡々とその言葉を述べた。

良太はただそれを黙って聞いていた。


「いまは理解できなくてもいいわ。

そのうちきっと理解できる日が来るわ。」


彼女はそういうと、ぼそぼそと何かつぶやき、教室出て行った。


「お、おい!」

良太は慌ててそれを制止しようと廊下に出たが、

その時、


「おれは、何をしていたんだっけ。」




良太はその日も、1日をいつも通り過ごし、家に帰った。

二週間ほどだった日のことである。

その日も良太はいつも通りの1日を過ごし、家に帰った。そんな時に事件は起きた。


「咲良がいない??」

夜の10時を回っているのに、咲良がまだ家に帰って来ていないことを親から聞き、良太は取り乱した。これは一大事だと、家族総出で探したがどこにも見つからなかった。

警察にも届けたが、そうそう見つからず、ついに夜が明けた。良太は不眠不休で探した。


さすがに親からも止められ、一時は休んだ良太だったが、すぐにまた探し始めた。

ずっと咲良のことを考えていた。

彼は一度、幼なじみに連絡を取ろうとしたが、電話をかけようとした時に、彼女は存在が消滅したので、彼の記憶から消え、電話はされていない。



そこらじゅうを探し、ついに良太は咲良が廃屋の中でうずくまっているのを見つけた。


「どうしてこんなところにいるんだ。」

良太は尋ねた。

「あんたには関係ないでしょ。」

咲良は相変わらずの強気だが、その声は弱々しかった。

「どうしてだ」

「関係ないでしょ!」

「関係ある!おれはお前の兄で、お前のことが好きなんだ!それ以外の理由があるか!」

良太は怒鳴っていた。

咲良は今にも泣きそうな顔をしている。

「もう嫌なのよ。何もかもが。」

「何があったんだ。おれがなんでも解決してやる。」

良太は優しさのこもった声で言った。

咲良は消え入りそうな声で、ポツポツと話し始めた。

その内容は必要ないので載せないが、それで良太は納得をした。

「おれがお前を守ってやる。だから泣くな、咲良。」

「だから気持ち悪いんだってば、、、」

咲良は泣きながら良太の胸に飛び込んだ。

そして小さく呟いた。

「ありがとう、お兄ちゃん。大好き。」





その瞬間あたりが光に包まれけたたましいファンフーレとともに、この文字が浮かんでいた。




Game cleared!





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