第一編 第1話 転校生
ジリリリリリリリ!
パンッ!!
けたたましい目覚まし時計の音とともに今日も1日が始まる。
その少年、良太はいつも通り顔を洗い、朝食を取る。そしてすぐに家を出て、学校に向かう。
「おはよ〜〜」
その少年の肩を叩き、通り過ぎて行く少女の名は夕美。少年の幼なじみであり、その地域では名の知れた優等生である。
少年、良太はいつもと変わらぬ日々を送ってい
た。
キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン
キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン
「 ふぁぁぁ…。今日も1日がはじまってしまうのかぁ」
「 しょうがないだろ。学校ってもんは毎日あるんだからさ。」
「その通りだ。」
「かぁーーっ、つめてぇなぁー二人とも。」
良太には二人ほど仲の良い友達がいる。
ここでは名前を上げる必要はないので、載せはしない。
「 そういえばさ、良太。お前って夕美ちゃんと付き合ってんの?」
「なんだ、いきなり。」
「だってお前っていつも夕美ちゃんと一緒に登校してんじゃん?だからそうなのかなーって。」
「俺もそれきになってた!」
良太は友達二人は男子高校生問い詰められて、少々めんどくさそうである。
「そういうのじゃないって。
あいつとはただの幼なじみだから、そんな風に見たことはないよ。」
「そんなこと言って、じつはもうできてんじゃないの〜〜?」
「お前がそういうんだったら、確かにそうなのかも知れないな。それでも一度は女として見たことがあるんじゃないか?」
友達二人はしつこく問う。
「マジでそんなんじゃないって。
お前らだって俺の性格知ってんだろ?」
「あぁ…」
「そういやそうだったな…」
二人の友達は同時になんともいえぬ顔をする。
この少年、良太は実は大の妹好きなのである。
過去に良太は友達と好きな人の話になり、
うっかり妹が大好きなことをばらしてしまっていたのである。
「だからな、俺が咲良以外のことを好きになることは断じてあり得ないんだ。そこんとこしっかり覚えとけよ。」
「あ、あぁ。良く分かった…。」
「お、おう。良く分かった…。」
勝手に振っといて引いてんじゃねぇーよ!
良太はそう突っ込みたかったが、やめておいた。
彼自身、自分の性格について良く知っており、妹を愛してやまないことはあまり言わないようにしているからだ。
そして朝礼が始まった。
「今日は転校生を紹介するぞー。」
担任がそう伝えると、クラスでざわめきが起こった。
「静かにしてー、ほらー静かにー。」
その転校生が入ってきた途端、クラスのざわめきは一気に増した。
「こちらが転校生の佐倉誠さんだ。」
担任が自己紹介を促す。
「今日からこのクラスでお世話になります、
佐倉誠と申します。どうぞ宜しくお願い致します。」
ざわめきは依然としておさまらない。
良太は目を見張った。
彼女がとても美しかったからである。
腰まで伸びたまっすぐで綺麗な黒髪。
薄い青を帯びたまるく可愛らしい目。
高校生とは思えないほど整った眉。
均整の整った、まるで名画のような顔立ち。
ゆうに170はあるであろう身長。
その全てが美しいという言葉では語れないほど、素晴らしく綺麗であった。
「それじゃぁ、」
担任の言葉で皆が我に帰る。
「そこの席がありているから、そこ座って。」
皆の視線が一斉にそちらへ向かう。
良太も同様にして視線を向けた、その先は、
良太の隣の席であった。
良太の隣の席は初めから誰もおらず、座るのは彼女が初めてであった。
彼女が席に座るまでの間、皆の視線はずっと彼女に注がれていた。
「ほらほら!前向いてー。
朝礼始めるぞーーー。」
またしても担任の声で、皆が我に帰る。
「それじゃぁ今日の連絡します。」
担任が話している間良太は横目で彼女を見ていた。
そんな時彼女と良太の目が、ふと合った。
その時であった。
彼女、誠は不意に不思議なことを口走った。
「あなた、電脳世界の王になりなさい。」と。