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都会の女は怖いと言うが都会でなくても女は怖い

大きな独り言を言ってしまったことに若干の羞恥心を感じるが、広場の中央の噴水のお陰か、カップル達がそれぞれの世界に浸っているお陰か、俺の恥ずかしい独り言を聞いていたものはいなかったようだ。


取り敢えず、彼女の荷物らしきものはまだあるので置き引きされないうちにそちらに向かう。

なんたって相手はクロだ。

置き引きでもされれば何も悪くないはずの俺が絞られることは目に見えている。

彼女に限らず女の判決は時に痴漢冤罪もびっくりする程に利己的で理不尽だ。


中学二年の時、廊下を歩いていた俺は学年でも上位のイケメンが腰巾着と共に覗きを実行しようとしている現場に遭遇したことがある。

俺は遭遇から二秒かからずに不干渉を決めたが、そこには俺とそいつら以外にもデブが一人と女の集団がいた。

そして御察しの通りデブはイケメンを止めに入ったのだ。「覗きなんかするなよ」

俺にはデブを止めることはできなかった。


そしてそれを見た女子陣はおそらく全てを察していたにも関わらず、「イケメン君がそんなことするわけない」とイケメンの覗きではなく、デブの名誉棄損の判決を下した。

それを理由にデブがいじめられることはなかったようだが、その時が顕著だったとはいえ、夫婦間の喧嘩などでも女の理不尽判決は日常的に傍聴できる。


幸いなことに、俺がベンチに駆けつけるまで、彼女の荷物がなくなることはなく、俺の地位か財布かはたまた命かは守られた。


クロに限って言えば、荷物を取られる可能性も想定した上で、取られた時には俺に罪をなすりつける位は考えていたのかもしれ無い。

その程度の知略に引っかかる俺ではないがな!


「ん?」


俺の前にある荷物は二つ。

女の子っぽい黒の小さめのバッグとスタンダードな形の無骨な黒のリュックサック。


まぁリュックを背負っていた覚えはないし、外見を気にするクロなら間違いなくバッグがクロの物である。

誰の忘れ物だかは分からないがそんな物をわざわざ交番に届けたいとは思わない。

交番に届けても、持ち主が忘れ物に気づいて戻った場合、それが交番に届けられているために見つからないなどとなればむしろ可哀想である。下手をすれば足を運んだ交番にさえなく、交番で手続きをした上に警察署まで足を運ばなきゃならなくなるかもしれない。

そう考えると、やはり無干渉がこの場合の正義である。


適当に言い訳をし、ベンチに座ると、列もなかなか長く時間がかかりそうなのでスマホを開く。

先程電車の中でクロにはめられた時、メールが来ていたのだ。

タイミング的に見てそうだとは思っていたが、差出人は宇佐(うさ) (いつつ)


『やっぱ、水田おもしれーわwwデートについては悪かった!マジごめん!

あそこの花火大会人気あっからさ〜チケット取るの大変なんだよ〜

ほら、1,500円って俺たちには大金じゃん?wwマジ高すぎだわーみたいなww

この埋め合わせはいつかすっからさww』


やはりチケットは1,500円なのか。

「あっから」とか「すっから」とか人に送る文章とは思えない文面であるが、突っ込んだら負けだろう。

「俺たち」、「みたいな」はリア充語である。

非リアには俺以外に一人称の一部になり得る存在は少ないし、「みたいな」で相手が何を伝えたいかわかるコミュ力があれば非リアでいる必要はない。

さらに言えば、俺の妬み、嫌味の言葉を軽く受け流しているところからも彼がリア充であることがうかがえる。


『俺を面白いなんて珍しい感性の持ち主なんですね。

デートに関しては俺に関係ない日でも許さないから気にするな。

前は特別席の料金は2,500円だったからお前はまだいいほうだよ。

あと、埋め合わせするってお前からの文章は残しておくからな。』


返信を済ませると、クロの並んだ列に目をやる。

列の長さから見て、短編小説一本くらいなら読めそうなのでメールの画面を閉じ、贔屓にしている小説サイトを調べようとネットに繋げる。

いつもなら短編でもファンタジーな作品を読むことが多いのだが、なぜか今日は恋愛ものに手を出した。

投稿忘れて遅れてしまいました!

すいませんでした!

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