意識の時間は縮むし伸びる
電車が発するf分の一のゆらぎは俺に強力に作用したようで俺より先に起きた様子のクロに叩き起こされることで、最寄り駅に舞い戻った。
文字通り叩き起こされた。痛かった。
ああ故郷の大地のなんと落ち着くことか。
兎も追ってなければ友垣もいた覚えはないがそこには帰るべき家がある。
それだけでなんと幸せなことか。
ハッピーライフ、ハッピーホームだ。
現在、3時半の駅は9時の駅とそんなに変わらない。
変わるとすれば人が若干増えて浴衣を着てる人が極たまにいるくらいだ。電車の中も同様にこちらに近づくにつれて人が若干増えていた。
花火大会か……
行け行けリア充共。そうすればこの町のリア充は一時的にでも減るんだ。
俺の天下だぜ!
ついでに花火の誤爆とかで爆発しやがれ!
「1時間後、4時半にここに来て。時間が若干遅くなるかも知れないから親に伝えるなら伝えて、あとできるだけ地味な格好で来て」
爆弾の処理をするんだ。
目立たない格好をするのは当然だし、時間がかかるのも納得できる。
「分かった。じゃあクッキーは任せ……」
「任せるわね。なくしたりしないように」
任せる、と言い切る前に言葉を残して彼女は去っていく。
まぁ、今更どうにかなるとも思っていない。言おうとしてみただけだ。
クロが去った瞬間に心なしか重くなったリュックを背負い直して俺は家に向かう。
家までの道のりは長い。
学校に行く時にも妙に早く着くのに、帰る時には全然家が見えないのだから不思議なものだ。
コンクリートジャングルにさらされた俺からすれば朝は辛かったこの暑さも緩いのだから俺は1日でだいぶ成長した。
そんなことを思いながらやっとの事で家にたどり着く。
ピンポーンと押したチャイムに返事はなく、家の主人がこの暑い中、ご近所で井戸端会議に興じていることを知らせてくれる。
鍵を持ち歩かない俺はアロエの花瓶の下から合鍵を発見すると、いとしの我が家に挨拶する。
「ただいま」
いつもならここからはルーティンを続け、最終的にベッドに入るだけなのだが、今日はこれから出かけることになっている。
さっさとシャワーを浴び、元々地味な服しか持っていないタンスから選りすぐりの目立たない服を選び出す。
貯金用の財布から大部分の諭吉さんーー3枚ほどを持っていく財布に引っ越しさせる。
備えあれば憂いなしである。
最後にリュックインリュックになっているリュックから俺のではない方のリュックを取り出し、背負う。
準備が終わった。
時刻は4時。家から駅までの所要時間は10分。
ん?妙に早く終わってしまった……。




