爆弾と彼女から逃げたい
よろしくお願いします。
誤字脱字、感想等いただけたら嬉しいです。
目の前には普段の横暴な態度とは裏腹に律儀に許可を求めてからスマホをいじり始めた美少女。
そして爆弾。
まさに前と後ろを虎と狼に挟まれたようで前後不覚に陥りそうな状況にある俺はなす術もなく下を向く。
スマホを弄る彼女を見つめるのは色んな意味で危険だし、目の前の爆弾はたしかにその起爆までの時間を示す数字を減らしていて、見ていれば俺の少ひ弱な精神を磨り減らすことが目に見えている。
美少女と爆弾。
俺が目をそらしているミスマッチすぎて曲のタイトルにでもなれそうな2つをつないでいるのはさらに歪な関係。
もし、比喩ならそれは過激な恋愛小説の新技法かもしれない。
もし、送られてきたならそれはミステリーの始まりかもしれない。
もし、それを彼女が作ったなら彼女はラノベの知識担当かも知れない。
だがしかし、それは全てこの場合には当てはまらない。
ただ日常でたまたま拾ってしまったのだ。何を隠そうこの俺が。
絶賛逃避中の俺からすれば愚行に違いなかったが、突然悪いことをしたくなることを「魔がさす」と言うのなら俺の場合「光がさした」とでも言うのだろう。
人間、悪行でも善行でも慣れないことはするもんじゃ無いと身にしみた。
「……前回までのテロの手口から考えて、この爆弾は……」
更に不運は続き、今現在彼女が考えているのは解体方法や処理方法などの事態の収束ではなく悪化。
彼女はなんとその爆弾の運用方法を考えているのだ。
思慮深い、いや思いを慮り深入りすることも丁重にお断りしたいくらいの、彼女が爆弾を用いてノーベルの意思を引き継ぎ平和的にトンネルでも掘ろうとしているのか、はたまた、実は新興宗教の教祖でもやっていてその力の誇示のために使おうとしているのか全く見当がつかない。
意味不明、理解不能などとすぐに嘆く若者は一度今の俺の立場を体験してみてから嘆くようにしてほしい。
世の中ってのは案外簡単で、女心ってのは想像を遥かに超えて難しいのだ。
もっともこの場合の彼女の奇行を女心と捉えるのは女心をもつ全ての人々からの反感を買いそうではある。
現状全てを総括して何が問題か問われれば、問題しか無いのだが、とりあえず今の俺の希望は、「家に帰りたい」ただそれだけである。
俺は愛しの我が家に思いを馳せると同時に今日の事態の始発点を思い起こす。
……あぁそうだ、あの爆発が始まりだ。