第2話 ある日の日常
かなり遅れて申し訳ありません
次回の更新はできるだけ早くしていきたいと思います。
「よし、ラルフ! 今日も訓練をするぞ」
「あなた、まだラルフは小さいんだからあんまり無茶なことはしちゃダメよ」
「はっはっはっ、エミリー、それぐらい分かってるさ!」
俺の目の前で笑いながら剣を肩に担いだ強面の父が俺の手を引っ張って外に出ていく時に母がいつも通りの笑みを浮かべながらやんわりと注意を促しているが、この父に通じているのかは甚だ疑問である。
俺__結城 匠改めラルフ__が生を受けて5年の月日が経っていた。
まず俺が転生したのはよくある剣と魔法の世界で魔王や勇者などはいないみたいだが、魔物はいる。
この世界は異世界でイシュニア大陸と呼ばれる一つの超大陸の中に様々な国家が乱立しており、今では目立った戦争はないが、人間や獣人など人種も違うようでいつまた戦争が起こるかわからない状態であるらしい。
さらにこの世界にはステータス___自他ともに見えないが、身体を鍛えたり、戦闘して敵や魔物を殺したり、能力やスキルなどを手に入れるなどするとレベルが上がったやスキル【◯◯】を手に入れたなどと脳に直接声が聞こえる___なるものまで存在し、初めてその声を聞いたときはまるでゲームのようだと驚いたものだ。
俺の父であるギルバートは筋骨隆々の見た目通り物理特化型の戦士であり、周りから竜殺しの英雄と呼ばれるほど凄い父だった。
父は【剣術Lv5】、【戦神の加護】、【近接戦闘術Lv5】、【戦闘指揮】のスキルを所持している。
スキルとは様々な恩恵をステータスに与えてくれるものであり、Lvがあるものは使っていくごとに一定の経験値が貯まればスキルのLvが上がっていく、父が持つ【戦神の加護】は攻撃の威力や素早さを底上げしてくれ、【戦闘指揮】は自分が指揮官がである場合、味方の全能力を少しだけ上げるというそれぞれレアなスキルである。
ちなみに俺の所持しているスキルは【剣術Lv1】、【近接戦闘術Lv3】、【異界の知識】、【全属性魔法適正】、最後に【?????】というスキルがある。
【剣術Lv1】は父が教えてくれたことで手に入れたが、【近接戦闘術Lv3】については転生する前の俺は復讐するために身体を鍛える一環として我流ではあるが、格闘技をやっていたのでそのお陰か【近接戦闘術】のスキルを手に入れた時から既にLv3あった。
ここまでのスキルはまだ普通であるが、残りのスキルは中々壊れ性能だ。
まずは【異界の知識】
これは俺の前世、地球の知識を全て知っているというものだ。この能力さえあれば内政チートなどもやりたい放題だが、俺は村のみんなの暮らしが向上すればいいと考えているので主に農業や酪農に関する知識や農作物の品種改良などはやる気だが、それ以上の工業化などは今の所する気はない。ちなみに異界の知識に関しては両親に知られると面倒なことになりそうなので知らせていない。
次に【全属性魔法適性】
普通は【火属性魔法適性】や【水属性魔法適性】などに分かれており、その適性があるものしか魔法は使えないのだが、俺のこのスキルはその名の通り火、水、風、土、光、闇、無と全7属性ある魔法の全て適性がある。魔法には詠唱と無詠唱があるらしいが、詠唱をダラダラ言うのは戦闘中には命取りだし、何より恥ずかしいから無詠唱で発動出来るように今も訓練中だ。
といった感じになかなか壊れた性能のスキル達だが、最後の一つだけ文字化けして読めないスキルがあるが、これはなんなんだろうか。
「今日は模擬戦をやろうと思う」
父さんが俺を引っ張って家の外に作ってある練習場に着くなり、そう言い放った。
この脳筋強面は一体何を言ってるんだろうか
「あのさ、父さん。俺まだ5歳だし、父さんから剣術習ってまだ1年ぐらいだよ」
「大丈夫だ! 父さんは木剣を使うし寸止めも出来る。ラルフは遠慮なくかかってこい!」
ジト目で俺は睨むも父さんは笑いながら流している。
「母さんは無茶なことはするなって言ってたじゃん」
「うっ……俺の夢だったんだ。自分の息子と剣を交わすのは、だからちょっとだけ、駄目か?」
流石に母さんの名前を出すとタジタジになるが、それでも言ってくる。
正直、熊のような身体で強面の父がモジモジしたところで気色悪いだけだ。
「……分かったよ。だけど手加減はしてよ」
「! あぁ、分かってる」
だが、前世では父とこんなコミュニケーションを取ったことがなかった俺にとっては楽しいことだからな。
父が満面の笑みを浮かべながら一定の距離を取り、木剣を構えるのを見て俺も習っている通りに剣を構える。
「このコインが落ちたらスタートだ」
父が懐から一枚のコインを出し、上に向かって弾く。
「シッ!」
コインが地面に着いた瞬間、父の身体がブレたと思ったら目の前に現れ、剣を俺に向かって振るう。
(何が加減するだ。この脳筋め!)
動けるようになってから自分の身体能力を上げる魔法を常時発動できるように訓練をしているおかげでなんとか避けることができたが、振るわれた剣の風圧だけで地面が少し凹んでおり、これで本当に手加減しているのかと小一時間ほど問い詰めたくなる。
(風起こして土埃で目眩しを……)
無詠唱で風の魔法を使い土煙を上げるが、父は容赦なく突っ込んでくる。
(今だ!)
いまだ土煙の真っ只中にいる父に向かって土の魔法で作り上げた1cm程度の小石たちを散弾のように浴びせかける。
威力も数も抑えてるし、怪我しても大したことはないだろう。
そう思っていたら自分の真横を小石が飛んでいき、さらに小石がどんどんと飛んできた。
(まさか全弾はじき返したのかよ!)
慌てて避けるが、はじき返された小石が足に当たった。
結構強く返ってきたのか足には大きな切り傷ができ、血がドクドクと流れていた。
「はっはっはっ! 正直ここまでやるとは思ってなかったし、若干ヒヤッとさせられたが、やはりまだ爪が甘いな! 」
笑い声を上げながら父が何かを言いながらゆっくりと近づいてくる。
正直足が痛くて治療に専念してるからそんなたわ言聞いている暇はない。
「2人とも大きな音がしたけど大丈夫?」
母さんが家から出てきてこちらを見るなり動きを止めた。
「あなたぁ、ラルフに無茶させちゃダメって言ったでしょ?」
「あ、いや、その、エミリー、これには……」
「あなた、正座」
母さんがニコリと笑いながら有無を言わせない圧力をかけながら父を見ている。
そりゃ5歳の息子が足からドクドク血を流して治療しているのを笑いながら見ていたら怒るだろうな、しかも無茶させるなって釘刺してたのに。
それから父は2、3時間ほど正座のまま説教を受け続けていた。