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みんなの卯の花祭奮闘記・桜井


 ヒナタに不意討ちをくらい、廊下に膝頭打ち付けて、痛い痛い言いながら、足を引き摺り体育館に戻れば、


「遅いっ。休憩は15分だって言ったろ。王子がいなくちゃ練習が出来ないじゃないか。体育館の使用時間は決められてるんだ。もっと人の迷惑を考えて行動しろ」


 とレオに怒られた。


 納得いかない。


「日村が具合悪くて保健室に行ったから、今日の練習は終わりにして、衣装あわせをすることにしたよ。みんな被服室で待ってる」


 被服室では海生、花菱、ヒナタが衣装を着て待っていた。


「桜井も海生ほどではないけど無駄にでかいからね、着られる服があるかどうか」


「無駄っていうな」


 見れば、海生は学校指定のジャージの上下に、黄ばんだ割烹着、紺の膝下丈のスカートと、シンデレラの世界にそぐわない妙な格好をしていた。


「本当は海生にもぼろいドレスを着せたかったんだけど、サイズがあわなくてね。仕方ないんでジャージ+割烹着と、女子であることをアピールするためにスカートを履いてもらったんだ」


 海生はなんともいえない悲しげな表情で、佇んでいる。


「どうした、海生? そんなにドレスが着たかったのか」


 海生は浮かない顔のまま首を振った。


「全然、そういうわけじゃないんだけど。なんか、俺、一応主役のはずなのに、扱いが杜撰だなあと思って」


 確かにそうかも。


 俺も衣装がなかったら、こうなるんだろうか。


 奥では金髪のカツラにオレンジ色のドレスを着た花菱が拳銃片手にはしゃいでる。


「すごいねー、演劇部って面白いものがたくさんあるんだねー。これ、どんな劇に使ったんだろうね?」


 青いドレスを身に纏ったヒナタはあからさまに不機嫌な顔で「俺が知るかよ」と答えた。


「はしゃぐな、花菱! ドレスや小道具に傷つけたら承知しないからな」


「ごめんごめん」


 怒られても花菱は楽しそうだ。


 何時でも何処でも何でも楽しむ!がモットーの花菱だから、綺麗なドレスを着て、お姫様の格好をするのを楽しんでいるんだろう。めったにない体験だから。


「さて、桜井はどうするか。僕としては王子様らしく白い上着に、赤のカボチャパンツと白タイツをおすすめしたいんだけど、サイズはどうだろう」


 レオは白い上着、真っ赤なカボチャパンツ、タイツを差し出して、


「とりあえず着てみて」


「いや、それは不味いだろ」


「無駄毛の処理があまいとか?」


「俺はそういうの気にしないから」


「じゃあ、今日はお母さんが買ってきた変な柄のパンツだから恥ずかしいの?」


「違うって。そういうことじゃなくて、カボチャパンツはないだろ」


「なに言ってんの? カボチャパンツは王子だけが履くことを許された、高貴で偉大なるパンツなんだよ? カボチャパンツを履かない王子なんて、そんなの王子じゃないだろ?」


 そっちこそなに言ってんの。


「この歳でカボチャパンツに白タイツの王子様なんかやったら、重度の変態だと思われてどん引きされるのが落ちだよ」


「大丈夫、今が最低だから、それ以上桜井の好感度が下がる心配はないよ」


 笑顔でさらっとなんてことを言うんだ。


「着るだけ着てみりゃいいじゃん。案外似合うかもしんねーぞ」


「桜井のカボチャパンツ姿見てみたい!」


 ヒナタは意地悪く、花菱は楽しそうに言った。


 海生は哀れむような目で俺を見てる。そんな顔するな。


 レオから衣装を受け取る。


「着るだけ着てみるよ」


 レオとヒナタがニヤリと笑った。ヒナタはともかく、何でレオまで。


「の前に、便所行ってくる」


「逃げんなよ」


 ヒナタの脅すような声。


 あいつ、さっきのことまだ怒ってるのか。


 というか、俺、なんか怒らせるようなことしたか?



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