みんなの卯の花祭奮闘記・日村
気になって海生にメールをしてみたら、案の定、奏にボロクソ言われたらしい。
寝起きは機嫌が悪いって言っておけばよかった。今さら後悔しても遅いか。
奏に電話。9コール目で繋がった。探るような沈黙。
「奏?」
『うん』
「今、大丈夫か?」
『うん』
「海生から聞いたよ。ひどいこと言ったんだって」
『さあ』
厄介なことに奏は感覚がずれてる。
本人はふざけてるわけじゃなく、ひどいことを言った認識がない。
「うざいとか目障りとか言っただろ?」
『言った』
「そういう言葉は、世間一般的にはひどいことなんだよ」
『へー』
「海生、傷ついたってさ」
『へー』
「泣きながら帰ったって」
これは本人に確認してないから定かではないけど、反省を促すため、ちょっと大袈裟に言っておこう。
「今日の帰りな、奏を誰が起こしに行くかってなったとき、海生は奏が教室に来ないから、あんまり話したことないし、話てみたいって立候補したんだよ」
それは本当。
『へー』
「それなのに奏があんなこと言うから」
『傷つけるつもりはなかった』
「わかってる。でも、海生は実際傷ついたんだから、ちゃんと謝った方がいい」
『うん』
「わかった?」
『うん』
素直は素直なんだよな。
電話だと聞いてるんだか聞いてないんだかわからないから返事をしてと言ったら、ちゃんと返事するようになったし。
ほとんど「うん」ですませるけど。
「それと、明日は練習においで」
『嫌だ』
本当に素直だな。
「嫌なら仕方ないけど、レオがちょっと怒ってたから。あと、明日、紫音ちゃんがお菓子作ってくって言ってた」
『何?』
「マドレーヌとか言ってたかな」
3秒黙って、
『気が向いたら』
「3時半から体育館だから」
それだけ伝えて電話を切った。