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笑えれば

作者: 新城荒汰

私には家族がいます。


父と母、二人の妹。


少し前に父と母は離婚しました。


母曰く性格が合わないそうです。


10年も結婚生活を送りながら今更何を言っているんだと私は思いました。


母は別れられて楽しそうです。父は独身に戻れて気楽そうです。


どっちも私より幸せそうです。


3つ下である妹は、勉強ができて努力家です。


いつも両親に褒められています。嬉しそうです。


私は勉強ができません。努力も嫌いです。並以下です。


だから、私はちっとも勉強ができず、褒められたことは一度もありません。


当然です。


6つ下の妹は、運動神経がよくて明るく、友達も多いです。


いつも夕方に笑顔で帰ってきます。


ただいま! 今日は××ちゃんと一緒にボールで遊んだの! と、いつもニコニコ。


本当に楽しそうです。


私は、よかったねと笑顔で返してあげます。


ですが、私の心はちっとも笑っていません。 それどころか、本当に楽しそうに笑う顔に腹立たしさがこみあげてきます。


私はどうすれば、生きるのが楽しくなるかを考えました。


考えるだけで努力はしません。


努力して疲れたらただでさえ嫌いな学校に益々行きたくなくなります。


人間失格を借りて読みました。


彼は恥の多い生涯を送って来たそうです。


私の人生は恥ずかしくないです。


彼は空腹ということを知らないそうです。


私は空きます。今もくーくーとお腹がなっています。


人の気持ちがわからないそうです。


私は笑うことはできませんが、泣くことはできます。


彼は人が怖いそうです。もし、自分が普通じゃないことがバレたらと……怯えています。


私は別に怖くなんかありません。自分より皆幸せそうで、楽しそうなのが気に食わないだけです。


読み終わりました。


この作品の作者である太宰治はこの後、自殺したそうです。


それを聞いて私は思いました。


楽しく生きるのはやめて、死んだ後に期待しよう。


私は周りの人たちが誰も持っていないような物がありません。


ですが、死ねば自分の周りで一番早く死後の世界を見ることができます。


それは、きっと素敵なことです。


私は休日、電車に乗りました。


熊が居る山に行くためです。


私は幸せなりたいのですから、地獄では意味がありません。天国に行きたいのです。


きっと自殺では行けないでしょう。


だから、熊に殺してもらいます。


山に着きました。


山を登り熊が出そうな川まで着きました。


しばらく待っていると、向こうから茶色い大きなシルエットがノソッノソッとこちらに向かって来ます。


熊です。


私は大の字に寝転がりました。


熊が私を見ます。


そして鋭く尖ったどんなものでも切り裂けそうな爪で私の腹をサッとなでました。


当然のように血が出ます。


死の恐怖を感じました。


同時にワクワクもしました。


やっと死ねる! 自分が一番早く死んで天国に行くんだ! そう思うと歓喜で震えました。


ですが、そこまででした。


熊はどこかに行ってしまいました。


腹をなでられただけの傷では、死にません。死ねません。


ガッカリです。


私はトボトボと帰宅しました。


家に帰ると母が泣いていました。


妹が事故で死んだそうです。


やっぱり私はなんにも他の人に勝てないのです。


本当に腹が立ちます。




何か短くてもいいから書きたくなったので。

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