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アヴァロンの剣  作者: つかさく
第一部 誓い 南の章
16/21

エピローグ

「ほう」

 壮年の男は、そう一言だけつぶやくと、椅子から立ち上がり窓辺へと歩を進めていた。次いで何事かを計るかのように、窓からの見慣れた景色へと視線を向けている。癖なのであろうか、その男は左の耳たぶをまるでこねるかのように左の親指と人差し指でもって触れている。視線は、遠くのみを見据えている。

 視線の先にあるそれは、男が幼少の頃よりの姿のままで、そこにある。否、その男の父親も、祖父も、祖父の祖父のその祖父も、更にさかのぼる血縁に連なる者たちも。同じものを見て育ち、そして朽ちていったに違いない。

 男は、真白な、空に溶けこんでいるかのような、かなたにそびえる山脈を眺めている。


「では、一度は器が成りかけていた。と、卿は主張したいのだな」

 雪と氷に覆われている山々を見飽きたのであろうか、考えがまとまったのであろうか、年の頃三十後半に見える男は肉付きのよい顔立ちに比すればやや細身の身体をひるがえす。室内へと向けた顔には、窓から吹き寄せる風にあおられてか、整えられていたはずの黒い髪の房がやや乱れ、幾本かが頬に張り付いている。


 壮年の男より、およそ倍に近い年を経ているのではないだろうか、といった皺だらけの顔を持つ男がいう。

「調者よりの報せを検討すれば、そう取るのが理にかなうのではありますまいか。もっとも、私にしても確信などは持てませぬ。

 ただ、そのように考えるより他になし、としか」


 黒髪の男は、その応えを聞きながら、再び椅子に座している。

「分からぬな。何故、そうまで泰然と出来る。我が身に起きた、と置き換えれば……非常に困難、否、無理であろうよ。

 更に理解出来ぬのは、そこまで超然とした心持ちであれば、対する者へ知らせておけば良いではないか。

 さすれば、このことで悩む者が、少なくとも二人は減るであろう。なあ」


 最後の、愚痴とも冗談とも取れる言葉は無視するかのように、老いた男は謹厳な表情を崩そうともしていない。

「意地。誇り。達観。稚気。気まぐれ。何とでも推し測れましょう。そして、今はそれが分かったところでさしたる意味などありますまい。

 何しろ、ここよりはるか離れた地での、七十二日も前の出来事。(いにしえ)の水の血に連なっていた最後の若者の心中を忖度するよりも、検討すべき事柄は内にも外にも数多ございますれば」


 やや細い身体に厚毛織りの衣をまとっている壮年の男は椅子に背を押し当てるかのように深く座りなおしている。

「そうは言うてもな。卿ほど私は達観出来ぬし、小さき、とは言えこの地を長らく領している血族の末。滅んだ支配者の心情を想うくらいは良いであろう」

 一度言葉を切った男は寂しげな、とでもいった表情をして前方を見据えている。

「ところでだな、爺も座ってくれ。私の心が落ち着かぬ。だいたい何度同じことを言わせる。ここは私室のようなものゆえ、遠慮など不要。許しを得ずとも、楽な姿勢を取ってくれ」


 それでは、と言いながら老人は杖をテーブルに立てかけると、座り慣れた椅子に腰掛ける。

「若の抱かれる心情については、分からぬでもありませぬ。日暮れて後に、よく冷えたヴァスティア産の蜂蜜酒でも振る舞っていただけましたならば、そこに赤頬鳥の香草焼きを添えてくだされたならば、あの若者の心を検討するのもやぶさかではありませぬ」

「分かった分かった。今日はちと都合がつかぬが、明日の晩に迎えを出そう」

 お優しき心持ちに感謝いたします、とつぶやきにしては室内の隅にいても聞こえそうな声が響く。その声の主は皺だらけの右手をテーブルの上へと乗せ、陽の光にかざしている。

「マーシアの新王としてグスタフ・パルム公が、グスタフ一世として即位。王太子はオットーなる三男が擁立されました。これにつきましては、先日の見立てと変化はございませぬ。亡き次男の遺児がおりますが、将来はともかくいまだ一歳になるかならぬでしかない赤子に、新王朝の王太子が務まるわけもありませぬゆえ。

 なお、諸侯の中で領地を全て没収された者はおりませぬ。内乱に馳走した家は当然として、中立を保持した家にすら応分の財貨が下賜された、との事。最後までフォルシウス家に従っていた諸侯にくだった最も重き処分ですら、減封で済ませている様子」


 壮年の男は、左の耳たぶをつかの間いじった後に、口を開いている。

「それは羨ましきことよ。豊かな国でこそ、か。入手した決起文の写しに約してあった言を”罪科は一代。累は及ばさず”を律儀にも墨守しておるのか。実は甘い男なのか。

 いや……そのような者にフォルシウス家がああもあっけなく敗れ去るとも思えぬ。僅か半年と少しだぞ。爺はいかに考えておる」


「若の言の通り、内乱の経緯をうかがう限り、とてもとても。

 ボルエガとルヌイの両公家が健在なればともかく、とうに故マグヌス王の手で一族もろとも滅ぼされております。あの国は長らく、王家、公家の下におよそ八十侯家の体制でありました。ところが今は、公家も王家もパルムしかおらず。おまけに、フォルシウス旧王家の遺領をも加えております。もちろん、いくらかは味方として起った諸侯に与えたようではございますが、遺領の過半はパルム家の直轄地として組み入れた様子。

 罪科は一代も考えようによってはまことに恐ろしき……フォルシウス家に組していた多くの候家では当主が急な病ゆえに亡くなっております。推測するに自裁したのでありましょう。誇りを取ったわずかな候家は代貨として減封を受け入れており弱体化は避けようもなく、不自然なまでの代替わりを行った候家にはもはやパルムに逆らう気概など保ちようもなく……しかも狡猾なことに若が先ほど申された通り一見すれば寛大な処分にしかみえないという……。

 甘い男ではありませぬな。どころか、軍才のみならず政事においてもかなりの(したた)か者と言えましょう。

 フォルシウスの血が絶えた今、諸侯よりのいらぬ恨みは買う必要もなし、といったあたりでしょうか。何せ、叛旗を翻すにしても、それなりの旗印は必要ですからな」

 テーブルの上の、今は冷めている黒茶の入った杯を皺だらけの手で口へと運んだ老いた男は、一口含むと喉を潤すかのようにゆっくりと飲みくだしている。

「……それよりも、乱の後始末において、いささか気になる点がいくつかございます。まずは、グスタフ新王の家臣であったイェルケルなる」」


 室内へといたった突風が二人の男の髪を揺らす。老人はいったん中断した言を継いでいる。

「イェルケルなる男のことでございます。

 家名無き民の出ながら(きざはし)を一気に飛ばし、侯の身分に上ったばかりかアグリルの家名をも継いだ(よし)

 また、どこの侯家かまでの詳細は不明なれど未婚の姫を娶ることが内々に決まり、一代限りの名誉称号としての侯ではなく、新たに封土を得て侯家そのものを再興とのこと」

「アグリル……。確か、大継承戦争時代の末期に弱小諸侯の端に連なるに過ぎなかったフォルシウス家に突如あらわれ、援け、盛り立て、遂には王位へと登らせた知将であったな。

 帷幄において万里を知り千里を謀る、の、あのアルトゥル・アグリルか」

「で、ございます。もっとも、継いだ、と申しましても。あの家が絶えてから、一千年はゆうに過ぎておりましょう。新たに起こしたと同じですな」

「あえて、継がせたというわけだな。侯家の女も箔がわりに付けて。

 グスタフ・パルムの知者、いや知恵袋との異名を持っていた者がアグリルか。それを抜きにしても新たに候家を立てるとは……内乱において余程の勲功を上げたのか」


 その問いにはすぐに応えようとせず、老人はテーブルに置かれた黒茶の杯の、表面の揺らめきをしばらく眺めているかのようであった。やがて、顔を上げる。

「今、得ている報せのみでは何とも……。分かっていることといえば、これまでも家名無き身でありながら、パルム公家の家臣たちが唯々諾々と従っていたらしき事象が垣間見えることくらいでありましょうか。

 マーシアは、西方大陸(ウェステニア)において、もっとも身分制度を厳しく墨守している国でございます。

 ばかりか、これは若の生まれる以前の話となりますが。家名で呼ぶべき相手をうかつにも名で呼んだ呼ばぬで諸侯同士の戦となり、それがおかしなことではなく名誉を守るべき当然の行為とされていた気風の国です。

 若も名は耳にしたことがありましょう。我が国においては四百年以上昔に廃された家典法という古き時代に定められた、他のマーシア以外のウェステニアの諸国においても廃されて久しい法のことを。

 そのしきたりの中で、家名すら無き身でのし上がったわけですから、並の者というのはありえますまい。

 加えてグスタフ新王のみならずオットー王太子よりの信頼も、他の者に比べて一頭抜けている、との風聞も調者が拾ってまいりました。

 ただ、もともとの情報が乏しい上で憶測を重ねても意味などありませぬ。

 それほどの者が調者網においてさして目されていなかった事由も含めまして、この件につきましては時間をかけて調べたい、と考えております」


 遠き地、とはいえアグリルの名を冠する者。気にはなる。調べてくれ。という壮年の男が命じる声に、老いた男はうなずいている。

「次いで、エミル・ランフェルト侯なる者。絶えていたフェルト家を再興する、との報せであります」

「その名は聞き覚えがある。内乱勃発とともにフォルシウス家を早々見限ってパルム家へと、文字通り駆けつけた男だな。

 当時、報せを聞いた時には、愚かなことをする男もいるものよ、と思ったもの。だが、今にしてみれば先を見る目に長けていた、と言えような。

 それにしても……グスタフ新王は、滅びた家を再興させる趣味でもあるのか」

「そこまでは分かりませぬが。

 念のために申し上げますと、フェルト家とはおよそ三百年ほど前に嫡流が途絶えたゆえに廃された公の格をもつ家でございます。ランフェルトの家名から推測すれば、何らかの血縁が、恐らくは傍流の血を引く者である可能性が高うございます。

 一王家の下におよそ八十侯家ではマーシアの地はいささか広すぎるということではありますまいか。間に公家をいくらか作る意向だと考えればフェルト家再興はなかなかの妙手でありましょう。この件につきましても、イェルケルと同様に調べてみる所存です」


「続きましては、アングリアの地において新しき神(クライスト教)の……」

 丘陵に建てられた城の、最も高き塔の、最も上階に位置する一室で、壮年の男と老境に入っている男の会話は、途切れる気配もない。

 およそ一刻あまり後も続いており、やや傾きかけた陽のもたらす黄色と赤を帯びた光が室内の方々を照らしている。


「まだ、あるのか」

 いささか集中力を切らしたのであろうか、時間を気にしているのであろうか、もはや左の耳たぶに触れようともしない、黒い髪の男が見える。

 対照的にあと一刻でも二刻でも平気そうな表情をした、少しばかりきつい視線で黒髪の男を見据える、老いた男の姿がある。

「本日の議題としては、次が最後になりますが……。お嫌でしたら、明日以降にいたしましょうか」

「いや、すまない。嫌でもないし急かしているわけでもない。実は……今宵は大事な約束があってな」

「若……。あまりに過ぎれば、奥方様の耳へ入りますぞ。また顔にあざを作られても知りませぬぞ」


 聞こえない風をよそおっている男に、まあ露見しても頼ってこないでくだされるのなら。と、ぼそりとつぶやく声が聞こえる。

 その言葉を耳にしていささか困った表情をしている男を眺めながら、老人がいう。

「街の錬金組合の副組合長フランクより、内々の要望が届いております。

 およそ六十日前に、西の目抜き通りを一本ほど裏に入った所に、リスィアンなる屋号の薬剤屋が出来たそうにございます」

「店開きの許可を得ていない、とでもいうのか。それとも不当な値を付けていたり、まがい物でも売っているというのか」

「いえ、許可証は正規の手続きに則って発行されております。

 扱っている薬草や薬剤の類も、錬金組合の定めた価よりいくらか安い程度で適正です。まがい物につきましても現在のところ報告は受けておりませぬ。

 なんでも、戦乱を避けてマーシアより、はるばる移住してきた親娘らしいのですが」


 娘、という語句に反応したのであろうか、壮年の男が先ほどに比べればいくらか耳を傾けて聞いている。

「美人なのか」

「まあ、私は直接見たわけではありませぬので、何とも言えませぬが。

 副組合長よりの密かな要望を踏まえれば、そうなのでしょうな。

 父親の方は無骨者を絵に描いたような老人とのことですが、その娘が器量良しの愛想良しで、おまけに立ち居振る舞いにも気品があるとかで」

 いつの間にか、耳たぶに触れている男がいう。

「分からぬな。何が問題なのだ」

「錬金組合配下のいくつかの店の得意先の何軒かが、リスィアンの店へと仕入先を鞍替えし、売り上げが低下しているそうにございます。ゆえに、内々に指導して欲しい、との要望でございます」


 げんなり、としか言い表せない顔つきをした壮年の男は、老人を見ている。

 老人も、うんざり、と顔に書いているかのような表情をしている。

「……内々に、ということは、副組合長フランクなる者も、恥ずかしい頼みだということは承知しているのだな……」

「左様でございましょうな」

「指導も何も、価格は適正。品にも悪しき点はなし。いったいどうしろというのだ。

 組合長は確かジャイルズであったな。宴席でも設けて皆で仲良う儲けろ。とでもあの者に命じておけ。……まことに、くだらぬ。

 本日最初の議もマーシアであったが、天と地ほどの、いやそれ以上の差があるではないか。

 ところで……それほどの美人なのか」


「知りませぬよ。先ほども申したように、私はこの目で見たわけではありませぬ。

 ああ、一つ言い忘れておりました。その女、子を身篭っているそうです。夫は外せない所用が出来たゆえ、先に店を開いて待つように、と旅の途中で言われてこの地へ来たようですな」


 その言葉を聞いた壮年の男は、耳たぶをいくらか熱心に親指と人差し指でこすっている。

「夫のいる女など、……興味が失せた。

 それはともかくとして。いささか、妙よな。

 いくらマーシアの地では内乱が起きていたとはいえ、グスタフ・パルム新王。許可なく乱暴狼藉を働いた者には、味方であろうと容赦はしない、との話もあったではないか。

 その辺を差し引いたにしても、マーシアからこの地にわざわざ移住するか。いや、移住することについてではないぞ。妊婦を伴って、この地まで、という意味においてだ。

 ……わけありか」


「その点に、ようお気づきになられましたな。若の、いえご主君の成長ぶり、幼き頃より見てまいりましたこの爺にして、いささか面映(おもはゆ)く感じます」

 そう言うと、こほん、と照れ隠しのように咳をした老人が言を続けている。

「恐らくは、フォルシウス家に何らかの関わりがある者なのではありますまいか。

 もっとも、妊婦を連れての旅。どう短く見積もってもマーシアの境からですら、三十日はかかりましょう。

 その辺りを含めれば、この地で店を開いて六十日。店の許可を得るまでに記録によれば十日。そこに移動による三十日が加わりますと合わせて最短でも百日となります。

 マーシアの北西国境一帯は元々がパルム側の諸侯、その先にパルム領、更にパルムの占領地帯と続いておりました。

 老人と見目麗しき女の、軍勢を避けての二人旅。仮に王都スプリングスより出でた者たち、と考慮すれば更に百日は合わさりましょう。

 そして、この二百日という数字は最も短き日数。しかも二百日前といえば内乱勃発早々となりますな。

 私もでしたが、若も同様の意に達していたように、当初フォルシウス王家が敗北するなど、少なくとも一年もたたずに滅び去るなど予測出来ませなんだ。

 つまり、フォルシウス家に縁の者がわざわざ王都を抜ける必要のない時期。となります」

「そこよ。全くもって理屈が合わぬ」


 沈黙が訪れている。室内で鳴っているのは、時折拭きこむ風の音だけであった。

 やがて、ごくり、と音を鳴らして唾を飲みこんだ老人が言う。

「……一つだけ、理屈が合うてしまう可能性がございます。

 ……国土を守る騎士(ランドガード)


 二人の目が合う。無言のままお互いを見ている。一人が口を開く。

「はっは、それはなかろう。もし仮に……。

 爺の言うとおり、国土を守る騎士(ランドガード)だとしよう。

 私はもちろん全てを知るわけではないが、抜け道には決まりごとがいくつかあることを、亡き父より言い伝えられている。爺も知っておろう。

 見知らぬ土地の抜け道は使えぬ。

 くだんの老人が国土を守る騎士(ランドガード)だとしても、二人ずれでどうやってこの地の近くにまで来られるというのだ。

 この城の抜け道は、とうに封じられて久しい。

 ロザリアの、全ての抜け道を知っているわけでもないし、恐らくは我らの知らぬ道もあるのであろうが。その女が過去に、ロザリアの地を訪れたことがある、とでも言うのか。

 ちなみに、その女。いくつになる」

「二十一、と移住申請状および錬金組合への届出には記されております」

「……そのような若さで。不可能であろう」

「で、ありましょうが。何かしら守らねばならぬものがあったのやも」


 老人は、腑に落ちない表情を浮かべている。

 耳たぶをこすり続けている壮年の男がいる。

「身分を偽っているのかもしれぬ。爺の話を聞く限り、立ち居振る舞いから推測すれば、家名を持つ家の出身、という可能性は高かろう。

 もっとも、錬金組合の副組合長フランクよりの要望によれば親娘のみで曲がりなりにも六十日も店を維持し、ばかりか繁盛しているということになる。これは見方を転じれば、民の暮らしにもなじみある者としか言いようがない。

 となれば、それほど上位の家の出なわけがなかろう。

 まあ、大きく見れば、フォルシウス家と関わりある者ら、なのかもしれぬ。

 だが、関わりといっても、せいぜいが直臣のうちで下位、随分と甘く見ても中位あたりか。大した関わりでもなかろう。

 ならば、別に構わぬではないか。

 何をするにしても、フォルシウスの血筋は絶えている。

 何も出来まいし、そもそもこの地はマーシアから遠すぎる。ここがマドゥーラ、せめてガリシアかアングリアというのであればともかく。ロザリアだぞ」


「ランドガードというのはそれがしの考えすぎでありましょうか。たまたま偶然が重なっただけであると……」

「念の為、一応は監視を付けておけ。そうだな、第五級でよい」

「……せめて第四級にいたしませぬか」

「爺の気が済むならそれで良い。好きにせい」

 

 承知、という意志を表わしている辞儀を見ながら、壮年の男は立ち上がった。

「そろそろ、行かねばならぬ。

 明日の晩は、若き命を散らした者の心情をあれこれ計り、想いながら、追悼の酒を飲むとしようではないか」

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