第2話 大好き
更新遅れて申し訳ありません。
リアルが忙しくてなかなか執筆できませんでした。
暇なときにちまちま書いてようやく完成しました!
最後の方は甘くしてみました。砂糖に注意してくださいw
白のシャツの上から灰色のジップパーカーを羽織り、黒のハーフパンツを履いた姿になった俺は、リビングに置かれている白いソファーに寝転がってテレビを見ながらくつろいでいた。
台所からは食材を切る音や炒める音が聞こえてくる。
俺は寝転がりながら、夕飯の支度をするエプロン姿の母さんに目を向ける。
うーん、穂香に告白してたから帰りが遅くなったって、正直に言うべきだったかな……。いや、言ったら色々と聞かれてめんどくさくなりそうだし、寄り道してたってことにしておいた方がいいか。
俺は母さんからテレビの画面へと視線を移す。まぁ、何れ話せばいいよな、告白のことは。
「ただいまー」
テレビをなんとなく眺めていると、黒いスーツを着た男性がリビングのドアを開けて入ってきた。
耳に少しかかるくらいの黒髪に、平凡というには結構整っている顔立ち。170cm程度の身長に、痩せている訳でもないが太っている訳でもない普通の体格。
どこにでもいそうな普通の人という印象を受けるこの男性は、式咲和哉。俺の父さんだ。
「「おかえりー」」
二人揃って父さんを出迎える。
父さんは、ふぅ、と一息吐いた後ネクタイを緩めた。
「もうすぐ飯できるから、待っててくれ」
「うん、わかった。それじゃあ、着替えてくるね」
そんないつものやり取りの後、父さんはリビングを出て階段を上り、自分の部屋へと向かっていった。
「よし、できたな。優斗、箸とかコップとか並べてくれ」
「ん、わかった」
俺はソファーから体を起こし、伸びをする。
さてと、やりますか。
俺は欠伸をしつつ台所に向かった。
俺がテーブルに箸やコップを並べ、母さんが料理が盛られた皿を並べ終えた後、半袖の白いシャツと黒のハーフパンツに着替えた父さんが降りてきた。
三人揃ったところでテーブルの周りに置かれた椅子に座り、食卓を囲む。俺の隣に母さんが座り、正面には父さんが座った。
「「「いただきます」」」
いつもの食前の挨拶を済ませ、目の前に並べられた料理を口へと運ぶ。ちなみに今日の献立は唐揚げにポテトサラダ、それに味噌汁と白飯だ。
世間話や愚痴などのとりとめもない話をしながら、和気藹々と夕飯を食べていると、
「おい、優斗」
母さんが真剣な表情になってこっちを見た。
え、もしかして怒ってる? 俺怒らせるようなことしたっけ? 全く身に覚えがないぞ……。
まさか、帰りが遅くなった理由が嘘だってばれた? いやいや、まさかそんなわけ――
「帰りが遅くなった本当の理由は?」
あった。普通にばれてた。
母さんは俺を睨みつける。目付きの鋭さ故か、目力が凄まじく思えた。気弱な人なら視線だけで殺せるんじゃないか?
父さんはどこか心配そうに、母さんに睨まれている俺を見つめていた。
……隠し通すのは無理だな。
別に隠すような内容じゃないから、言っちゃってもいいんだけど……いざ言うとなると、やっぱり恥ずかしいわけで。
俺は恥ずかしさを紛らわせるため、深呼吸をする。
ゆっくり息を吸い、ゆっくり息を吐くと、幾分か落ち着いた。
「……実は、その……放課後に告白してて……」
「告白って、もしかして、異性に『好きだ』って言う告白?」
と父さん。
俺の言ったことが予想していたこととは違っていたのか、父さんと母さんは目を丸くしている。
「ああ、その告白」
「だっ、誰に告白したんだ!?」
俺が告白した相手が余程気になるのか、母さんは興奮しながら詰め寄ってくる。
「その……穂香に」
言ってしまった。
……まぁ、何れは言おうと思ってたことだし、いいか。言うタイミングが早くなっただけだ、うん。
あー、でもやっぱり恥ずかしいな……。いくら両親とはいえ……。
「……それで、どうだったんだ? 結果は……」
父さんと母さんは神妙な面持ちで俺を見守る。
食卓は自分の心臓の音が大きく聞こえるほど静まり返っていた。さっきまでの和気藹々とした雰囲気が嘘みたいだ。
「……うまくいったよ」
息苦しさを感じてしまいそうな空気の中、俺は口を開いた。
言った瞬間、顔が熱くなっていくのを感じた。
「……マジで?」
きょとんとしながら言う母さん。父さんも同じような表情で俺を見つめている。信じられない、とでも言いたげだ。
「うん……マジ」
俺は頷く。
……何だか公開処刑のような気がするぞ、今の状況。……気にし過ぎか。
「……よ……」
よ?
「良かったじゃねぇかっ!」
「良かったね」
母さんは輝くような満面の笑みを浮かべて、父さんは穏やかに笑って祝福してくれた。
てっきり冷やかされたりするかと思ってたけど、普通の反応で良かった。
「告白かぁ……何だか昔を思い出すね」
父さんは昔を懐かしんでいるような、どこか穏やかに見える顔をしながら母さんを見やる。
「……」
母さんは耳まで真っ赤になりながら俯いていた。こんな風になってる母さんは初めて見るような気がするな。
父さんにとっては懐かしいことでも、母さんにとっては真っ赤になる程恥ずかしいことだったのか? 告白は。
……そういえば、父さんと母さんはどうやって知り合ったんだろ。
ふと、そんな疑問が脳裏に浮かんだ。
どこにでもいそうな普通の人としか思えない父さんと、『鬼神』と恐れられていた(らしい)母さん。
そんな二人が、一体何がどうなったら、夫婦になるんだろうか。
「そ、そういえば、父さんと母さんって、どうやって知り合ったんだ?」
俺は恥ずかしさ取り繕うように訊いてみた。
ただ単に気になったから、というのもあるけど。
「うーん……確か僕が――」
父さんがそう言いかけたとき、
「か、和哉! よ、余計な言ってんじゃねぇ!」
母さんが怒号じみた声で父さんの言葉を遮った。
もしかして、照れ隠しなのか? 顔真っ赤だし。
「優斗、な、何も訊くんじゃねぇぞ」
母さんは顔を火が出そうなくらい赤くしながら俺を睨み付ける。目付きは鋭いけど、あまり……いや、全くと言っていいくらいに迫力がなかった。
何も訊くな、って言われると、余計に気になるな。母さんのあんな反応を見たら尚更だ。
……けど、無理に訊く訳にはいかないな。ホントに訊かれたくなさそうだし。
ま、いいか。父さんと母さんの出会いは確かに気になるけど、今すぐ知りたいって訳でもないしな。
俺は止まっていた箸を再び動かし、料理を口に運ぶ。うん、美味い。
話を強引に切り上げた母さんは、顔を赤らめたまま黙々と箸を動かしていた。
母さんがそんな風になってしまったせいか、食卓はさっきよりも静かだった。
食事を済ませ、リビングでしばらくだらだらした後風呂に入り、歯を磨いて、後は寝るだけになった俺は、自分の部屋のベッドの上に寝転がりながらゲームに興じていた。
「ふわぁ……」
ゲームをしながら大きな欠伸をする俺。
なんか眠くなってきたな……。そういえば、もう結構遅い時間だよな。
俺は枕元に置いていた携帯電話を開く。
時刻は既に十一時半を過ぎていた。そりゃ眠くもなるか、こんな時間なら。
もうそろそろ寝よう。明日学校あるし。
ゲームの電源を切り、携帯電話を枕元に置き、明かりを消す。そして重力に身を委ねるように枕の方へと倒れこむ。
目を閉じ、眠気に身を任せようとしたそのとき、枕元に置いた携帯電話が鳴った。
「……?」
俺は眠気のせいか少し重くなった体を起こす。誰だろ、こんな時間に……。
部屋の明かりをつけ、携帯電話を手に取る。相手は――穂香だった。
……え? 穂香? 珍しいな、あいつがこんな時間に電話かけてくるなんて。
穂香はいつも十一時くらいには寝ている。だから今みたいな時間に電話やメールが来ることはまずない筈だ。
なんで電話がかかってくるのか気になるけど、とりあえず出るか。
「もしもし」
『あ、もしもし。ごめんね? こんな時間に……』
穂香の声音はどこか申し訳なさそうだ。
「いや、別にいいけど……。珍しいな、お前がまだ起きてるなんて」
『うん……寝る前に、その、どうしても言っておきたいことがあって……』
「ん?」
どうしたんだ? 改まって。何だろ、言っておきたいことって……?
『あの……その……ありがとね』
「え?」
言っておきたいことって、このことなのか? 俺何かお礼言われるようなことしたっけ?
『私のこと……受け入れてくれて』
「それって、妖狐のことか?」
『うん……』
よっぽど心配してたんだな。自分が妖狐だっていうことを知られて拒絶されることを……。
妖狐の姿になった穂香を見たときはホントに驚いたし、少なからず恐怖心を抱いた。だけど、一緒に育ってきたと言えるほど長い付き合いだから、俺はあいつのことを、恐ろしい妖怪なんかじゃないって信じられるし、受け入れられる。
それに俺は――
「……俺は、その……妖怪とか人間とか関係なしに、お前が好きだからさ。妖狐だから、とか、そういうの気にしなくていいって」
言ってて滅茶苦茶恥ずかしくなる。けどホントの気持ちだ。
『ん……ありがと。私も……き』
「え?」
今なんか聞こえたけど、なんて言ったんだ? 声小さくてよく聞き取れなかったけど。
『だから、その……私も、だ……き』
「だ?」
また聞き取れなかったのでもう一度訊き返す。
『わ、私も大好きって言ったの! ……何度も言わせないでよ……ばか……』
「……」
俺は次の言葉が出てこなかった。
大好き。
その一言が、頭の中で何度もループしていた。
心臓は病気だと思ってしまいそうなくらいに早鐘を打ち、顔や耳は信じられないくらいに熱を帯びている。
お互いに黙ってしまい、空間を沈黙が支配する。自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。
『そっ、それじゃ、お、おやすみっ!』
穂香のどこか焦りを含んでいるような声と同時に電話は切れた。
「……」
しばらくぼーっとしていた俺は、電話が切れてから遅れて我に返る。
……と、とりあえず、寝よう。うん、そうしよう。
そう思い、俺は明かりを消してベッドに寝転がる。そして目を閉じて寝ようとするが……寝られなかった。
穂香の言葉が耳から離れない。
俺は穂香のことを考えて悶々(もんもん)としながらベッドの上をせわしなく動く。
……明日どんな顔していればいいんだろ。いや、そもそも顔を見ることができるのか?
考えれば考えるほどまともな考えが出来なくなっていく。心臓の鼓動もさらに加速していく。
恋愛って、こうもドキドキしたり悶々としたり、色々考えたりするものなんだな……。
最後の方、どうだったでしょうか? 甘かったですか?
少しでも甘いと感じて頂ければ幸いでございます。
ちなみに私は書いている最中悶えそうでしたw