プロローグ 泣き虫な妖狐
新しい一次創作の小説です。クオリティは相変わらず低いと思いますが。
自分が言うのもあれですが、書いててものすごく恥ずかしかったですww
書いてる途中何度のたうちまわりそうになったことかww
春というには暑く、夏というには涼しい、春と夏の真ん中ぐらいの季節の夕方。
俺、式咲優斗は、ここ、風凛学園高等部の一年一組の教室に、「大事な話がある」と言って、幼馴染みの佐倉穂香を呼び出していた。
――彼女に告白するために。
今教室の中にいるのは、俺と穂香の二人だけだ。
他の生徒は下校したか、部活をやっているかのどちらかだろう。教師は職員室で仕事中だと思う。
木の葉がざわざわと擦れる音と、部活をやっている人のものと思われるかけ声が、外から聞こえてくる。
「大事な話って、何?」
目の前にいる少女、穂香が俺に尋ねる。
茶色の瞳に、腰まで伸びた長い茶髪。若干幼さが残ってはいるが整っている、十分に美少女と言える顔立ち。同年代の女子に比べればかなり良いスタイルの少女だ。特に胸なんかは制服の上から十分にわかるくらいに自己主張している。
「そ、その……」
緊張して次の言葉が出てこない。
生まれて初めてだろう。幼馴染みの彼女を前にしてこれほど緊張したのは。
苦しさを覚えるほど、心臓がバクバクする。
口の中が異様に乾いて、気持ち悪い。
言え! 言うんだ! 勇気を出せ!
俺は息を大きく吸い、吐く。
幾分か落ち着いたところで、穂香の目をしっかりと見据える。
「……好きだ」
……言っちゃった。とうとう言っちゃったよ俺!
うわぁぁぁぁぁ! 滅茶苦茶恥ずかしい! 穴があったら入りたい! 逃げていいなら今すぐに逃げたい!
言った後、猛烈に恥ずかしさがこみ上げてくる。
それと同時に、フラれてしまうんじゃないか、という恐怖感もこみ上げる。
「……それって、友達として好きっていうこと? それとも、異性として……?」
顔には出さず、心の中で悶絶していると、穂香が俯いてそう言った。
何故だかわからなかったけど、穂香はどこか悲しそうに見えた。
「それは……その……異性として……」
言っててさらに恥ずかしくなる。
正直、いつから穂香に対して恋愛感情を抱いていたかはわからない。
けど、いつの間にか、変わっていた。『友達に対して抱く好意』が、『異性に対して抱く好意』に。
「……じゃあ、私が妖怪だったとしても、好きだって、言ってくれる……?」
「……え?」
な、何を言ってるんだ? 妖怪? 穂香が?
……何がなんだかさっぱりわからん。どういう意味だ?
「……どういう意味?」
「言葉通りだよ。私は、人間じゃないの。私は――」
穂香はそこで一旦言葉を区切る。
そのとき、穂香の体に変化が起こった。
「……」
俺はその変化に、ただ呆然とするしかなかった。
長い茶髪はみるみるうちに銀色になり、茶色の瞳は鮮血のように赤く染まっていく。頭には丸まった三角形のような形をした獣の耳が二つ。
――そして、銀色のふさふさの尻尾が、九本。
「妖怪なの。妖狐っていう、妖怪。……九尾の、妖狐なの……」
……言ってしまった。
とうとう、見せてしまった。
自分の正体を。……自分が、妖狐であることを。
自分の本当の姿を優斗に見せた後、私は恐る恐る顔を上げる。
顔を上げると、黒に近い茶色の髪を耳の辺りまで伸ばした黒い瞳の、目つきの鋭い少年、優斗が、呆然とした表情で私を見ていた。
……やっぱり、驚くよね。いきなりこんな姿を見せられたら……。
私は優斗の顔が直視できなくなり、再び俯く。
そして、本当の姿を――九尾の狐の姿を見せたことを猛烈に後悔した。
……どうして見せちゃったんだろう。拒絶されるに決まってるのに……。
だけど、それでも、優斗に見てほしかったのかもしれない。
――私のことを好きって言ってくれた、優斗には。
でも、やっぱり見せなければよかった、と後悔の念が押し寄せる。
きっと、今まで通りの関係ではいられない。
妖狐の姿を見せてしまったから。自分が人間ではないということを、言ってしまったから。
好き、だったのに。
小さい頃から、大好きだったのに……!
本当に本当に大好きだったのに!
「うっ……ぐすっ……」
視界が滲み、涙が頬をつたって床に落ちる。
私はこのとき、自分が人間ではなく妖怪であることを、心の底から呪った。
妖怪じゃなくて、人間だったら、こんな辛い思いをしなくて済むのに……!
「えぐっ……ひぐ……」
優斗に拒絶される恐怖と、自分が人間ではなく妖怪だということの悔しさと、大好きな人に面と向かって好きだと言えないことの悲しさが、さらに涙を溢れさせる。
「……嫌われたくないよ……」
ぼそり、と。
ふいにそんな言葉が出た、その時――
「え……?」
突然、優斗に優しく抱きしめられた。
「……嫌われたくないよ……」
「……っ!」
穂香の言葉を聞いて、いてもたってもいられなくなった俺は、気付いたら穂香を抱きしめていた。
ふわり、と女の子特有の良い香りが、俺の鼻腔をくすぐった。
むにゅ、と柔らかい二つのもの、多分、いや絶対胸だと思われるものが当たるが、そんなことは気にならない。
「え……?」
穂香の口から、小さな声が漏れる。
「嫌いになんか、ならない」
大粒の涙をぽろぽろと流す穂香に、俺ははっきりと、自分の意思を伝える。
「確かに、お前が妖怪ってことにはびっくりしたし……その、ちょっと怖いって思ったけどさ……」
穂香が妖怪の姿――妖狐の姿になったときはホントに驚いたし、怖いとも思った。
告白したときとは違う意味で、この場から逃げ出したいって思った。
だけど、穂香が泣きながら「嫌われたくない」と言ったのが聞こえたとき、そんな気持ちはどこかに吹っ飛んだ。
「お前が好き、っていう気持ちは変わらない」
「……でっ、でも、悪い妖怪かもしれないんだよ? 優斗を、みんなを傷つける妖怪かもしれないんだよ?」
俺の言葉が、自分が言われると思った言葉と違ったのか、穂香は少し慌てているように思える。
「俺はそうは思わん。というか、お前は嫌われたくないんだろ?」
「……うん」
「なら、お前が誰かを傷つけるような悪い妖怪じゃない、ってことにならないか? 誰かを傷つけたら、絶対に誰かに嫌われるからな」
穂香とはかなり付き合いが長い。それこそ、家族だと思えてしまうくらいに。
それくらい長い付き合いだからこそ、穂香が悪い奴じゃないって、はっきり言える。たとえ、妖怪であっても、そうでなくても。
「……嫌わないでくれるの? 私、妖怪なんだよ? 人間じゃ……ないんだよ?」
「さっきも言ったけど、嫌いにならない」
「じゃ、じゃあ、えっと……その……」
穂香は俺の腕の中でもじもじ――って、俺はいつまで抱きしめてるんだよ!?
「や、あの、その、ごめ――」
「ま、待って!」
俺は先程から穂香を抱きしめっぱなしだったことに気付き、慌てて穂香から離れ――ようとしたが、穂香に止められた。
「え?」
「こ、このままでいいから……」
穂香はこれでもかという程顔を真っ赤にし、俺に体を寄せてくる。
こ、このままでいい? つまり、抱きしめたまま、ってことか?
俺は穂香から離しかけた腕を再び背中に回す。
さっきのように咄嗟にしたことならまだしも、今みたいに意識してやると恥ずかしさや照れくささが半端ない。
抱きしめたときに触れたところから、穂香の温もりが伝わってくる。
「……もう一回……って、言って……」
「え? 今なんて言った?」
途中声が小さくて聞き取れなかったところがあったから、俺は穂香に訊きかえす。
一体、穂香はなんて言ってほしいんだろう?
「……もう一回、好きって、言って……」
「え!?」
も、もう一回!?
ちょっ、い、いくらなんでもそれは恥ずかしすぎるぞ!
あまりの恥ずかしさで頭がおかしくなりそうだった。だけど――。
たとえ、どれだけ恥ずかしくても、ちゃんと言っておかなきゃいけないような気がした。
俺は意を決して、言う。
「……好きだ、穂香」
言った瞬間、猛烈に顔が熱くなっていくのが分かった。
……俺は穂香のことが好きだ。異性として。
でも、穂香の方はどうなんだろう……。
……言った傍から心配になってきた。
「私も……好き。異性として、優斗のことが、好き……。大好きだよ、優斗……」
そう言いながら、穂香は俺の背中に手を回す。
俺と穂香は、互いに抱き合うような感じになっていた。
「ひっぐ……うえっ……優斗ぉ……ぐす……っ」
穂香は俺の名前を呼びながら俺の胸に顔をうずめ、ぽろぽろと涙を流す。
……そういえば穂香って、昔からよく泣いてたな。転んだときとか、蜂に追いかけられたときとか、散歩中の犬に吠えられたときとか。
泣きじゃくる穂香を見て、昔のことを思い出しながら、俺は泣いている穂香をそっと抱きしめた。
読み返したら悶絶してしまいそうですww
一応、この小説はラブコメを目指しております。
……もしかしたらバトル展開も入るかもしれません。
いつかは甘々な展開を書いてみたいですww
そのたびに悶絶しそうですがww