第十一章...『二つの自分を持つ少女』
「今日は転校生を紹介します。」
ほぼガランとした集会で校長が言う。
我が校は死傷者が多発することで有名であり、噂では二学期に生徒が全滅する自体に陥ったこともあるらしい...。
そんな我が校に転校生が来ることはまさに朗報なのである。
「では紹介します。
どうぞ?」
校長の指示でやってきたのはシスターのような服装の女の子だった。
しかし、その顔は美しくもあり、奇妙でもあった。
左半分の目と髪は黒、右半分の目と髪は白。
とにかく異様な雰囲気が漂う彼女はおろおろと教壇のマイクをずらす。
比較的長身なのも見てとれる。
「あ...あの...『ルナ=ホーディカ』と申します。
皆さん、皆さんよろしくお願いしまふっ!!」
思いっきり噛んでしまい、さらにおろおろし始めてしまった。
気がついたらおせっかいな私はルナの所まで来て背中をさすってあげていた。
「無理しないで。
はい、深呼吸。」
ルナは静かに深呼吸をすると落ち着いたらしく自信満々にマイクを掴んだ。
「俺に仲間などいらねぇ。
欲しいのは強い奴だけだ。」
突然彼女が発したドスの聞いた声に会場が凍りついた。
「....っは!?」
その後、彼女はまたおろおろし始めた。
会場にいるみんなの頭に一斉にクエスチョンマークが浮かんだ...。
「よっ!
ルナちゃん!」
集会の帰り道、私と遊斗は気楽にルナに話し掛けた。
「ひゃうっ!!」
ルナは跳びはねた。
「一緒に遊ぼう!」
「わ...私、まだこの空気に慣れてなくて...」
「じゃあ、ボク達のオススメのスポーツを教えてあげるよ!」
私達はおろおろとするルナの手を引いて2階の特別強化ルームに向かった。
「あら、噂の転校生ね。」
部屋に入ると、腕立て伏せをしていた真由美がタオルで顔を拭きながら歩いてきた。
「ルナ...です。」
「よろしく。
私は真由美よ。」
二人は握手を交わした。途端、ルナの表情が変わった。
「おい、てめぇ。」
「!!!」
真由美の表情が硬くなる。
「俺を怒らせるとどうなるか分かってるよな?」
「(まずいわ。人格が変わったあげく、真由美さんを挑発してる!!!)」
「(知らないよ...もう)」
「(なるほど、これが噂の二重人格。【真由美さんは集会の時、ちゃっかり昼寝していました☆】これは面白い相手ね。)いいわ。
今日は特別コースをつけてあげるわ。」
真由美はそう言った瞬間、サーベルで居合斬りを繰り出した。
が.....
ルナは避けなかった。
「嘘!!!!」
ルナは片手だけで白刃取りをしていた。
「おいおい?
もう終わりか!!!!」
ルナは真由美を蹴り飛ばした。
「真由美さんが...負けてる!?」
「どうやら召喚魔法を使うしかなさそうね!!!」
真由美は不死身スライムを召喚し、素早く太陽神ラーを呼び出した。
対するルナは何も召喚しようとしない。
「行け!!!
ゴッドフェニックス!!!」
不死鳥と化したラーが突撃する!!!
対するルナは何かを召喚した。
直後、ラーを纏う炎が消え、逆に吹き飛ばされる。
「なっ!?」
ルナが呼び出したのは左半分が黒、右半分が白の竜だった。
「おい、もう終わりか?」
竜が吠え猛る。
「そんな...ゴッドフェニックスが通用しないなんて...!!!」
ルナは竜の召喚を無効にし、消滅させる。
そして、中指を真由美に向け『かかってこい』のジェスチャーをした。
「(ここまでコケにされて...私が黙る訳ないわよ!!!)」
真由美はラーを一体化した。
「ラー完全体よ!!!」
「...だからどうした?」
「!!!!」
「俺はまだ本気を出していねぇよ。」
「なら!!!
本気を出させるようにさせてあげるわ!!!」
《ゴッド・ブレイズキャノン》!!!!
ラーの光線がルナにもろに当たる。
「(これで彼女は大ダメージ)」
と、その時!
煙の中から光の塊が複数飛んできてラーに風穴を空けてしまった。
「う...嘘!?」
真由美は慌ててラーの融合を解除。
直後、ラーが倒れた。
「うそ....」
「ラーが...こうもあっさりとやられるなんて...!!!」
煙の中から姿を現したルナは無傷。
そして、その手には二丁の銃が握られていた。
「おい...もう精一杯か?」
真由美に向け、ルナが銃を撃つ。
盾になった不死身スライムでさえ灰と化す。
「トドメだ。」
銃を向けたルナを見て、堪えられず私達はルナを取り押さえた。
「もうやめて!!!」
「真由美さんはもう戦えない!!!
だからもうやめろ!!!」
取り押さえ、なんとかおとなしくなったが...真由美を見ると放心状態になっていた...。
しばらくして...
「ふぇ?なんで私、君達に取り押さえられているの?」
「よかった。
なんとか元に戻ったみたい。」
「元...に?」
ルナは辺りを見回して........
突然、大声をあげて泣き出した。
これを見た真由美もさすがに驚いたようで慌てて泣きじゃくるルナの背中を撫でた。
「大丈夫?心配しないで!!!」
「また...ホーディカが悪いことをした!!!」
「...ホーディカ?」
そういえば、さっきの自己紹介の時に言ったフルネームの苗字がホーディカだった気がする。
「どういうこと?」
ルナは涙を拭うと話しはじめた...。「私の体には...二つのDNAが流れています。
一つは人間としてのDNA。
これが私という人格を作り上げています。
もうひとつは...憤怒の悪魔『サタン』のDNA。」
「え!?」
「私...人工的に造られた人間なんです。
この人格は冷酷、残忍な覇王の人格。
命を紙屑のようにしか考えていない邪悪なもの...。
この人格は私自身の力を高めます。
この力は私に宿る憎しみ...怒りそのものなんです。」
「...」
「私は時々無意識にこの人格に変わってしまいます。
そして、元の私に戻った時、そこには無数の死体が列を成しています。
私はそんな時...いつも私自身を責めました...。
何度も...何度も...死のうと思いました。
でも...死のうとする時に限って人格が変わってしまいます。
そして、やりたい放題に暴れます。
私...もう...どうしたら...」
「ならいっぱい遊ぼうよ!」
「え?」
「今回は戦うようなことをさせてしまってゴメン。
だから次は戦わない楽しい事をしよ?」
「ボク達に考えがあるんだ。」
「考え....?」




