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四十五歳、独身。
腰痛持ち・脂っこいものは控えめ・早寝早起き。
そして職業はポーション職人(半引退)。
「はぁ……また若い冒険者が“即効で治るやつください!”って言ってくるんだろうな」
朝の店先で伸びをしながら、グレイはひとりぼやいた。
かつては王都のトップ調合師として名を轟かせた男も、いまや田舎の外れで、ゆっくりとポーションを煮る日々。
だが、この日の来客はいつもと違った。
ガラガラッ!
「た、助けてくれっ!この子が……“勇者候補”なんです!」
飛び込んできたのは、焦げたマントを着た青年冒険者。
その腕には、ぐったりした少女が抱えられている。
「勇者候補? いやいや、そんな大物をうちみたいな個人店に……」
そう言いかけたグレイの鼻に、かすかな違和感が走った。
この子の体、魔力の流れがおかしい。
普通の治癒じゃ追いつかない。
「……仕方ない。久しぶりに“あれ”を使うか」
グレイは棚のいちばん奥から、封印された黒い瓶を取り出した。
貼られた古びたラベルには、震える文字でこう書かれている。
『中年の本気ポーション(要覚悟)』
「……使うの、十六年ぶりか。」
中年のため息と共に、物語は動きはじめる。




