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サ終後の先  作者: 白姫
9/11

連れられて

 僕はオブセシアと無言で町を見て回っていた。

 直前までデートみたいで浮かれていた気持ちが嘘のような地獄の空気感だった。

(どうしよう、何か喋らないと...でも女性と一緒に買い物なんて何話せばいいんだ)

 人生で一度も女性と買い物に行った経験が無い僕にとってそれはいつ崩れるかわからない吊り橋を渡るような感覚だった。

(一歩を踏み出さないと前には進めないがかと言って下手に進めば関係が終わる危険もある)

 そんな事を考えている間にもこの無言の時間は続く。

 僕は意を決した。

「セシアは何か好きな物はある?」

 その質問は橋を叩いて渡るものだった。

(しかし、話題としてはオーソドックスな質問だ。これなら多少なりとも話の種にはなるだろう)

 しかしその目論見はオブセシアの一言で終わった。

「特に無い」

 これにより種は芽を出さずに終わった。

(流石に何も無いって訳は無いと思うけどしつこく聞くのもなぁ...)

 結局、二人は無言のまま目的の店に着いた。

 そこは冒険者になった時にサーベルに連れられて来たもらった武器、防具を扱っている店だ。

 現在、僕が使っている武器ははっきり言って粗悪品だ。

 刃先はボロボロで切れ味も悪く、だからこそサーベルはそれでも有効打を与えられる植物系のモンスターフラワーを初依頼に選んだのだろう。

 しかし、ずっとこの剣を使う訳にはいかない。

(早いところ、まともな剣を買わないとな)

 早速、店に入る。

 店内は四方八方に大量の武器と防具が置いてあり、まさに武器屋と言う感じだった。

 しかし、剣は蓋を外した酒樽の中にそのまま乱雑に入れられていたり鎧も床に敷いたボロ布の上に置いてあるだけでお世辞にも商品の保存状態が良いとは言えなかった。

(ここは多くの冒険者を輩出する始まりの町だから武器と防具も大量生産品なんだろう)

 剣の一本を手に取って吟味する。

 少しでも状態が良く、切れ味が良さそうな物を見極める為だ。

(正直言ってどれが良さそうか分からない)

 とりあえず剣を手には取るのだが一通り見ては戻してを繰り返す。

(流石に依頼一回分だと剣一本が限界だから慎重に選ばないと)

 今度は剣を二本、手に取り見比べる。

(うーん、こっちの方が艶がいいような?でもこっちは若干ずっしりしていて頑丈そうだ)

 大量生産の品でも一本一本に品質の差があるようだ。

 しばらく剣と睨めっこしていると横でオブセシアがじっと見つめている事に気付いた。

(しまった!すっかり自分だけの世界に入っていてオブセシアを待たせているのを忘れていた!)

「待たせてごめん!セシア!すぐ選ぶから」

 結局、素人が剣の良し悪しなどわかるはずもなく最終的に剣は直感で選んだ一本を買って店を出た。


 再び無言の時間が流れると思ったが意外にもオブセシアから話しかけて来た。

「武器に依頼金ほぼ使って良かったの?」

 金銭面を心配する言葉だった。

「大丈夫、ある程度ここでの生活で必要なお金は残してあるから」

 僕は軽くなった麻袋をオブセシアの目の前で揺らして見せると金属音が鳴る。

「その残りに人探しの資金も入っているの?」

 人探しとは僕の推しのことだろう。

 昨日、僕はオブセシアに冒険者をやっている理由を聞かれた際に探している人に会いに行くために資金が必要だからと答えた。

 どうやらオブセシアはそのための資金が残っているのかを心配していたようだ。

「まずは強くなって安定して稼げるようにならないとね。探すのはそれからかな」

(なんなら既に探している一人とは会えたしね)

「ふーん…」

 オブセシアは返答を聞くと急に立ち止まり僕の袖を掴んだ。

「ど、どうしたの?セシア?」

「あなたは強くなりたいの?」

 そう聞くとオブセシアはじっと僕を見つめた。

 その深紅の推しの瞳に耐えられずに顔を逸らして答える。

「そりゃあ…強くなりたいかな。強くなれば今より報酬が良い依頼とか受けられるし」

 剣をすぐ新調したのもこれからモンスターとの戦闘経験を積む為の準備だった。

 初任務でのゴーレムとの戦闘で僕は現状の力不足を実感した。

 いくら主人公の体でもおそらくレベルで考えたら一桁代程度で中身は戦闘経験すら無い一般人。

 このままでは推し探しどころでは無い。

 なのでなるべく強くなる為に町周辺のモンスターと戦い、訓練しようと思っていたのだ。

「じゃあ、早く強くなる方法教えてあげる」

 オブセシアはそのまま僕の袖を掴んでどこかに連れて行くのだった。


「ここって…」

 連れていかれた先は冒険者ギルドだった。

「ここで待ってて」

 オブセシアは一人で冒険者ギルドに入って行くとしばらくして依頼の紙を握って出てきた。

「あなたにはこの依頼を達成してもらう」

 その依頼はとある森に出没するゴブリン数十体の討伐依頼だった。

 しかし、現在パーティー活動は休止中である。

(僕一人で依頼をこなして貰うってことか?)

 僕の不安な表情を見てオブセシアが言う。

「大丈夫。私も一緒に同行するから」

 確かにゴーレムを瞬殺したオブセシアが一緒ならサーベル達がいなくても何とかなるかも知れない。

 少し悩んだが依頼を受けてみることにした。

 この時、僕はこの依頼の推奨ランクを見逃していた。

【森のゴブリン討伐】推奨ランク:シルバー


 前回、依頼で行った森は最初の町コロンから西の方角だった今回行く森はコロンから北西の森。

 道中に何体か小型のうさぎのようなモンスターに出くわしたが難なく倒す事が出来た。

 そのまま薄暗い森の中を歩いていると足跡を見つけた。

 人の足跡のようだがそれは全て小さく子供ぐらいの大きさだった。

 だがここは森をそこそこ進んだ場所。

 そんな所に子供だけではたして行くだろうか。

 複数の足跡は森の奥深くへと続いていた。

「これって...」

 僕の言葉にオブセシアが小さく頷く。

 緊張で唾を飲み込み、辺りをより一層警戒しながら足跡を辿る。

 薄暗い森を足音を立てないように進み、背が高い草むらに不審な動きが無いかを見ながら周囲の音に集中する。

 やがて獣の鳴き声のような音が聞こえて来た。

 足跡もその音の方向に続いている。

 慎重に草をかき分け音の出所を見つける。

 森の開けた場所に小学生程の背丈の人型の生物が複数体確認できた。

 緑色の肌にボロボロの布切れを纏った人型の生物はまさに今回の討伐対象であるゴブリンだった。

 ゴブリンの大半は眠っているらしく地面に横になっており、確認出来る範囲で活動しているのは二体。

 眠っているゴブリン達の隣で腰を下ろし、暇そうに何かの骨をしゃぶっていた。

 どうやらゴブリン達は油断しており、今がチャンスだろう。

 だが、ゴブリンは複数体いるので奇襲しても全てのゴブリンは仕留められずに数体と正面から相手する事になるだろう。

 そうなったら僕はどこまで戦えるだろうか。

 まだ小型のモンスターと一体一でしか戦闘経験が無いので今回が初めての一体複数の戦闘になる。

 まだ冒険者になって二日の僕にやれるだろうか。

 不安になり、オブセシアを見る。

 オブセシアは無表情でただ僕を見つめているだけだった。

 僕は再びゴブリン達に視線を戻し、深呼吸する。

(複数体とのモンスターとの戦闘経験。おそらくこれがオブセシアの言う強くなる方法なんだろう。大丈夫、オブセシアも居るしいざとなったら助けてくれる)

 呼吸を整えると剣をしっかり握りしめてゴブリン達に突撃した。

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