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サ終後の先  作者: 白姫
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チュートリアル

 投石の経験なんてない僕は坂の上から身を❘かがめながら気づかれないように慎重に近づく。

 なんとか当てられそうな所まで近づくと息を潜めながら屈んだ状態で投石の体制に移る。

(投擲なんて学生時代の体育の時間にやったソフトボール以来だ)

 大蛇の胴体部分に狙いを定める。

(当たりさえすればいいんだ。当たりさえすれば)

 思いっきり石を投げる。

 投げた石は屈んだ状態で投げたせいか思ったより飛ばずに大蛇のすぐ近くに落ちる。

 そこからは一瞬だった。

 石が落ちた音を聞いた大蛇はすぐに周囲を確認し、隠れている僕を見つけ出すと一瞬で距離を詰めて僕に牙を剥く。

 反応する間もなく距離を詰められ僕はただ大蛇を見つめることしか出来なかった。

 鋭い二本の牙から毒が垂れ、僕に刺さろうとしている。

 僕は目をつぶりその時を待つことしか出来なかった。

「スーパースラッシュ!!!」

 大蛇の攻撃はこなかった。

 なぜ攻撃が来ないかと目を開けるとそこに大蛇はいなく代わりにあの戦士風の青年が立っていた。

「大丈夫か!?」

 戦士風の青年が肩を揺さぶって声を掛けてくる。よくみると足元にあの大蛇の頭が転がっていた。

「だ、大丈夫…です」

 なんとか声を絞り出すと緊張の糸が切れたのか戦士風の青年が安堵して肩の力を抜いた。


 僕がここまできた記憶がないと言うと心配して戦士風の青年が一緒に近くの町まで行くこと提案した。

 ここがどこだかわからない僕にとってこの提案を断る理由は無かった。

「すまない。助けてもらったのに動けない俺の仲間まで背負ってもらって」

 そう言われた僕の背中には僧侶風の女性が背負われていた。

 どうやらこの人達は依頼の帰り道にあの大蛇に不意を突かれ僧侶風の女性が噛まれて毒で動けなくなってしまい、僕が来るまであの大蛇と睨み合っていたらしい。

「とりあえず回復薬を飲ませたからある程度は大丈夫なはずだ。本当に助かった。あの時石を投げて気をそらしてくれなかったら全員毒でパーティー全滅だった」

「あの大蛇はなんだ?」

僕の問いに戦士風の青年は歩きながら答えてくれる

「あれはこの辺に稀に出現する”ヴェノムサーペント”。毒持ちで音もなく現れる危険なモンスターだ。本来なら毒対策でその背中の子が解毒魔法を使えるから大丈夫だと思ったんだがまさか先にその子が襲われるとはな」

 所々に気になる単語があった。

(魔法?ファンタジーコスプレのなりきりの一環か?)

 戦士風の青年は僕に構わずに話し続ける。

「でもさっきの戦闘で俺のスキルゲージは全部なくなっちまった。次スキルを打つには時間が掛かる」

「スキルってなんだ?」

 僕は思わず聞いてしまった。戦士風の青年はそれを聞いて驚いた表情をした。

「スキルを知らないのか!?そういえば君はここまでどうやってきたか覚えてないって言ってたし記憶喪失なのかもしれないな。スキルっていうのは神が人に授けた恩恵で人はそれぞれに様々な技を使えるんだ。でもそのスキルを使うにはスキルゲージっていうのを消費するんだ。スキルゲージは時間経過やモンスターに攻撃することで貯まっていくんだ」

 戦士風の青年の妙な説明口調を聞きながら僕は妙な感覚に襲われていた。

(この話…どっかで…いや!それ以前、ここに来てからの展開を僕は知っている!)

 確信を得るために戦士風の青年の名前を聞く。

「ちなみにあなたの名前は?」

「あれ?そういえばまだ自己紹介もしてなかったな」

 戦士風の青年は改めて握手を求め手を伸ばす。

「俺の名前はサーベル!よろしくな!」

「よろしく」

 握手を返しながら今の言葉で僕は確信した。

 さっきまでの一連の流れ。あの大蛇ヴェノムサーペント。この戦士風の青年の名前…サーベル。これは全て僕がやっていたゲーム【アークヴェイル:オリジン】の冒頭のチュートリアルだった。

(サーベル…【アーオリ】のチュートリアルで手に入る初期キャラの一人だ。チュートリアルなんてゲーム開始の最初に見て以来だから忘れていた)

 そしてサーベルは他のメンバーも紹介していく。

「そして今君に背負われている子がホーリー。後ろを歩いているのがウィザーだ。見ての通り二人はそれぞれ僧侶と魔法使いだ」

(僧侶のホーリー。魔法使いのウィザー。二人も【アーオリ】のチュートリアルに出てくる初期キャラだ)

「これで大体紹介したな!今度は君の番だ!君の名前は?」

 サーベルに名前を聞かれて僕は返答に迷った。

(僕の名前は鈴木透(すずき とおる)だがここが【アーオリ】の世界だとしたら名乗るべき名前は…)

「僕の名前はアークだ。よろしく」

 この名前は見ての通り【アークヴェイル:オリジン】の名前から取った名前だ。

(もしこの世界が【アーオリ】なら鈴木透の名前は合わないだろう。だからといって僕がゲーム内での名前は”推し愛で隊”だがさすがにこの名前をいうわけにはいかない。そう、このアークの名前は今考えた名前だ)

「そうか!よろしく!」

 そうして僕たちは町へ向かった。

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