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サ終後の先  作者: 白姫
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サービス(人生)終了

 ゲームのサービス終了告知からしばらくが経ちユーザー達は心を整理し、サービス終了を受け入れていた。

 僕もなんとか受け入れゲームを遊び続けていた。ゲームの中は変わりなくいつも通りの日常だった。まるでサービス終了の告知が嘘みたいに。

 そしてサービス終了した。


 虚無の毎日だった。

 サービス終了することは決まっていた。受け入れているつもりだったがサービス終了してからの日々は何も無い虚無の毎日が続いていた。

 以前は【アークヴェイル:オリジン】という一筋の光が虚無の闇を照らしていた。【アーオリ】無き今、どこまでも続く虚無をただただ進む。

 終点の見えない虚無を力無く歩いていると何かが見えてきた。それは駅のホームだった。

 気がつくと人で混み合った駅のホームに立っていた。

(そうだ、今は会社に向かっている途中だった)

 駅のホームに電車の接近を知らせるアナウンスが流れる。

 線路をぼんやり眺めながら電車を待つ。

(辛いだけの毎日が続くぐらいなら)

 足を一歩だけ前に出す。

 意識が線路に吸い込まれる感覚に陥り、体の重心が前方に傾いていく。

 その時スマホからピコン!と軽快な通知音が鳴る。 反射でスマホ画面を確認する。

 【アークヴェイル:オリジン】の文字が目に入る。

(そうだ、ゲームはサービス終了したけどコンテンツ自体が終わったわけじゃない。まだ希望はある)

 ぼんやりしていた意識がはっきりしていく。

(確かにこのゲームは心の拠り所だった。終了した今、新しい心の拠り所を探してみよう)

 警笛が鳴り電車が見えてくる。

(そういえば以前ゲーム内でコラボしていた作品、観てみようかな)

 電車のブレーキ音が聞こえてくる。

(もう少しだけ頑張ってみようかな)

 下がっていた顔を上げて前に向きなおろうとした時、後ろから体を押される。

 電車が来たことに焦った人達が慌てて混み合っているホームの人をかき分けながら進み、僕の背後の隙間を無理矢理通り抜けようとしぶつかってしまったみたいだ。

 普段ならこの程度、ちょっとよろめくぐらいで済むのだがこの時僕の身体は前方に少し傾いていた。

 背中を押されたことで前方に大きくよろめきそのままホームから転落する。

「いてて」

 痛む体を動かしてなんとかその場で膝立ちする。

 その時、けたたましい音が鳴り響き横を向くと電車が普段とは違う姿であった。

 あまり見たことがない真正面から見た電車は大きく無機質な壁で視界いっぱいに広がっていた。

(死んだ?)

 そう思った瞬間に意識が途絶えた。


「どうかこの世界を救ってください救世主様」

 誰かの声が聞こえる。

「あなたはメシアの器。救世主になる運命」

 この言葉を知っている。どこか頭の片隅、記憶の奥底。昔に聞いたことがある言葉だ。

(この次は確か)

「「世界を旅して災厄から世界を救って」」

 それは【アークヴェイル:オリジン】のメインストーリーの始まりの言葉だ。


 そよ風の音で目を覚ますと目の前には青空が広がっていた。

 仰向けの状態から重い上半身を起こし、周囲を確認する。

 そこは草原だった。全方位見渡す限り広大な大草原が広がっていた。

(どこだ?ここ。なんで草原にいるんだ?確か出勤のために駅のホームで電車を待っていて…)

「そうだ会社!」

 スマホで時間を確認しようと咄嗟にいつもスマホをしまっている左右の腰ポケットに手を当てる。

 無い。ポケットの中に手を入れるが何も入って無かった。それどころか服装自体が変わっていた。

 立ち上がり自身の服装を改めて確認する。

 目が覚める前は出勤中で会社指定の堅苦しいスーツを着ていた。しかし、現在の服装はゆるゆるの黒い服を着ていた。それはまるでファンタジー作品に出てくる様な魔法使いのローブみたいな服だった。

 こんな私服でも着ないような服をなぜ着ているのだろうか?ここはどこなんだ?僕に何が起こったのだろうか?

 様々な疑問が頭に思い浮かぶがそれは一つの悲鳴によって遮られた。


「キャーーーー!!!」


 女性の声だ。女性の叫び声が確かに聞こえた。

 穏やかな晴天(せいてん)の草原に似つかわしくない異常を知らせる声を聞いて声の聞こえた方向に慎重に周りを警戒しながら歩き出す。

 声がはっきり聞こえてくる。複数人の声だ。

 やがて草原が途切れ小さな坂になっている場所に辿り着く。

 坂の上から慎重に下の状況を確認する。

 坂は緩やかで簡単に降りられそうな感じであった。その先は道になっておりその道の上で三人組が大きい生物と対峙していた。

「なんだ…あれは…」

 大きい生物は蛇のようだった。しかし一般的な蛇と異なる点があった。それは体の大きさである。

 両手で囲いきれないほどの太い胴体。とぐろを巻いて持ち上げている頭は人の胸ぐらいの位置まで上がっており真っ直ぐに伸ばしたら5mはありそうだ。口からは鋭い牙をサーベルタイガーのように飛び出していた。舌をチロチロと出し牙を突き刺す隙を伺っていた。

 そんな大蛇と対峙する三人組を観察する。

 三人組はまるでファンタジー作品の戦士、僧侶、魔法使いのような格好をしていた。

 戦士風の人物は20代ぐらいの青年で胴体だけの軽装の鎧を着ておりファンタジー作品によく出る両刃の剣を持ち、一番前に立ち大蛇と睨み合っている。

 その戦士風の青年の後ろでは僧侶風の女性が仰向けに横たわっており、魔法使い風の女性が看病していた。みな青年と同世代に見える。


 お互いに微動だにせずひたすら睨み合いを続けている。恐らくこの根競(こんくら)べは放っておいたら夜まで、もしかしたら翌日まで続くかもしれない。

 この場で膠着状態(こうちゃくじょうたい)を敗れるのは第三者である僕だけであろう

「どうする?僕はどうすればいい?」

 三人組と大蛇。互いの命運は僕の行動で変わるであろう。

 下手な行動をしたら三人組の命、僕自身の命すら危ない。

「最善な行動はなんだ?なんとか遠くからこちらに大蛇の意識を移せればいいのだが」

 その時、足元に丁度良い石ころを見つけた。

「これで大蛇の意識をこっちに移せれば…」

 僕は行動に移す。

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