謎の集団
周囲四方八方を黒いローブを纏った謎の集団に包囲されてしまった。
(ゴブリンでさえ包囲されてピンチだったのにそれが人間になったら...)
今すぐにでも降参したい気持ちを抑えて僕は必死に剣を握りしめて敵と向き合い、緊張を悟られないように虚勢を張る。
「くっふ!きゃははは!」
いつ戦闘が始まってもおかしく無い両者の緊張した空気をオブセシアの笑い声が打ち壊す。
オブセシアが笑うと平然と敵のリーダーらしき人物に向かって歩き出した。
「なんだお前、この圧倒的に不利な状況でおかしくなったか?」
その人物は剣を抜き、オブセシアに刃先を向ける。
だが、オブセシアは構わず歩み寄る。
「警告だ!それ以外近づいたら斬る!」
その言葉を聞いてもなお、オブセシアは歩みをやめない。
わざわざ警告などせずに斬りかからないのはオブセシアの平然と近づいてくる姿に何か異様なものを感じ取ったからだろう。
その姿に相手は思わず一歩後ろに下がってしまう。
「私があなたの言う事を聞く必要があるの?」
オブセシアがついに相手の間合いに入った。
だが、相手は動かなかった。
剣を向けられ、周囲を複数人に包囲されている状況で何事もなくニヤけながら歩み寄るオブセシアの異様な姿に萎縮し固まってしまったのだ。
リーダー格の男は考えた。
(なぜ、平然と向かって来るのだ?)
自分達が優勢な筈の状況での相手の態度。
その相手の理解不能な態度が自分達の優位性を疑わせる。
この状況を打破出来る秘策を相手は持っているのか?本当に優勢なのは相手では無いか?
そう考えているうちに相手は目の前まで来ていた。
その顔には恐怖は無い。
得体の知れない笑顔だけがあった。
全身から汗が噴き出し背筋が凍る。
人間は理解不能な存在ほど怖いものは無い。
早くその存在をどこかにやらなければ。
その思いですでに目の前に来ていた相手に今更剣を振るう。
その時、相手の言葉が聞こえる。
「だって、あなた達弱いもの」
一瞬の出来事だった。
オブセシアの目の前にいた男の頭が飛んだ。
その場の全員がただただその頭を見つめる。
頭は空を舞い、やがて地面に落ちた。
静寂の時間が流れ、目の前の状況を理解すると黒いローブの集団は慌てて反撃のために動き出す。
だが、オブセシアはそれを許さなかった。
凄まじい速度で大鎌を振るい、あっという間に僕達を包囲していた人達を切り伏せた。
まさに一瞬の出来事で僕は剣を持って突っ立っていることしかできなかった。
「じゃあ町に戻ろっか」
オブセシアが鎌に付いた血を振り払って落とすと平然と町に向かって歩き出す。
遅れて僕も慌ててその後を追いかけた。
町の正面入り口に到着して僕は立ち尽くした。
町は燃えていた。
至る所から火が上がり、空を煙で覆っていた。
「いったい何が...」
僕がその惨状に唖然としているとオブセシアがゆっくり入り口に向かい歩き出した。
その姿に動揺は無く、その目はただ一点を見つめていた。
僕もそこに目を向けると次第に炎の明るさの中に一人の人影がいるのが見えた。
「おいおいおい。暇な入り口の見張りかと思ったら不幸な奴らが来たぞ!」
その姿は森であったあの黒いローブの人達と同じだった。
「敵!?」
僕は慌てて剣を構える。
その黒いローブの男は歩き出すとやがてオブセシアと一定の距離の所でお互いに止まった。
「お前達が森の方から来たってことはもしかして森の奴らは取り逃がしたのか?」
その言葉を聞いたオブセシアは大鎌を片手で構える。
「彼らは取り逃がしていないわ。全員私が殺した」
その言葉を聞いた黒いローブの男はヒューと口笛を鳴らした。
「あなたは彼らよりは強そうね」
黒いローブの男はそのオブセシアの言葉に反応する。
「強そう?違うね。強いんだ。俺は奴らよりな」
男がローブを脱ぎ捨てる。
男は真っ赤な髪の男だった。
その手には僕が到底持ち上げられなさそうな大剣を持っていた。
「次に死ぬのはお前らだ」




