ゴブリン戦
突撃した僕は真っ先に狙ったのは活動中のゴブリン。
ゴブリンは急な敵襲に動揺してしゃぶっていた骨を落として大声を上げると慌てて近くに置いていた木の棍棒を手に取ろうとした。
しかし、ゴブリンが棍棒を手に取るより速く僕は剣をゴブリンの首目掛けて思いっきり振った。
今日買ったばかりの剣は明らかに以前の剣よりも切れ味があり、簡単にゴブリンの首を切り飛ばした。
僕はその勢いのままもう一体のゴブリンに向かって走り出した。
もう一体は棍棒を手に取ったがまだ立ち上がれていなかった。
ゴブリンは僕の振り上げられた剣を見て回避が間に合わないと思ったのか棍棒で剣を防ごうとした。
だが振り下ろされた剣は鉄で出来ており到底ゴブリンの貧相な腕で防げるものでは無かった。
振り下ろされた剣の勢いを受け止めきれずに剣はそのままゴブリンの脳天をかち割った。
一人でゴブリンを早くも二体倒せたことに嬉しさがこみ上げた。
思わず声を上げて喜んでしまうのをぐっと抑えてすぐに他のゴブリン達の方を向いた。
(なるべく初動でゴブリンの数を減らして置かないと!)
そう思い他のゴブリンを方を向いた僕は固まる。
他の寝ていたゴブリン達はすでに起きて戦闘態勢になっており武器である棍棒を手に取って僕に獣のような呻き声を上げながら睨みつけていた。
どうやらここからは先程のように簡単には行かないようだ。
呼吸を整え、ゴブリン達がいつ攻撃して来ても反応出来るように身構える。
残ったゴブリンは数えると七体、圧倒的な数の不利だ。
ゴブリンはじりじりと近づいてくる。
その動きに合わせて僕は後退りする。
ゴブリン達と睨み合うとやがて痺れを切らしたゴブリンの一匹が飛びかかって来た。
剣で飛びかかって来たゴブリンの攻撃を受け止める。
その攻撃を合図に他のゴブリン達も一斉に攻撃を仕掛けて来た。
流石にまずいと思い剣を大きく振り回して牽制する。
確実に少しずつ追い込まれていた。
ゴブリン達は少しずつ横に広がっており、おそらく囲もうとしているのだろう。
(このままじゃまずい。どうにか包囲を突破しないと)
僕は真正面のゴブリンに狙いをつける。
ゴブリン達が横に広がっている分、それぞれが分散している。
突撃して真正面のゴブリンを倒せばそこから包囲を突破できる。
ゴブリン一体なら所詮は子供程度の強さ。
これは高校生が小学生を相手しているようなものだ。
(よし、いけるはずだ)
覚悟を決めて真正面のゴブリンに向かって走り出した。
ゴブリンは向かってくる僕を見て身構える。
(こちらは鉄の剣だ。受け止めきれる筈がない)
先程ゴブリンが受け止めきれずにやられた場面を思い出し、そのまま思いっきり剣を振る。
(さっきみたいに押し切る!)
「!?」
振りかぶった剣はゴブリンには当たらなかった。
ゴブリンはさも棍棒で受け止めるかと思わせて後ろに飛び、剣を躱したのだ。
この空振りは致命的だった。
思いっきり振った事で隙が生じてしまいその分、相手に時間を与えてしまった。
(まずい!囲まれる!)
慌てて周囲を確認した時には既にゴブリンが背後に回っており完全に包囲されていた。
(やばい、どうしよう、囲まれた!早く抜け出さなきゃ)
一体多での戦いにおいて囲まれるような事態は絶対避けるべきもの。
幾ら体格的有利があるとはいえ全方位からの攻撃に対応できる筈が無い。
包囲から早く抜け出そうという焦りから再び真正面のゴブリンに剣を振り上げて突っ込む。
しかし結果は先程と同じように剣を簡単に躱されてしまう。
(どうしよう抜け出せ無い!どうにかしないと)
そうして焦りが強くなっている時に右脚に強烈な痛みが生じる。
「ぐう!?」
どうやらいつの間に背後のゴブリンが近づいており、脚を棍棒で殴られたらしい。
その痛みに右膝を地面付けてしまう。
(痛い!痛い!痛い!これが棍棒で殴られる痛み!)
その痛みは社会人になってから現在まで打撲による怪我をしていなかった僕には強烈なものだった。
せいぜいあったのは疲労による脚の痛み程度だ。
この世界に来てから初めて当たった攻撃による痛みで頭が回らなくなっていると今度は左腕に激痛を感じた。
「がぁ!?」
どうやら左腕にも棍棒の一撃を喰らったらしい。
「くっそ!」
なんとか右腕で剣を振るうがゴブリンは容易く躱してしまう。
(やばい!やばい!やばい!このままじゃリンチされて...)
僕の脳裏に死がよぎる。
それはゴブリンに囲まれて殴り殺される姿。
(逃げなきゃ...殺される!)
痛む左脚を無理矢理動かして立ち上がると走り出す。
向かう先はオブセシアが居る方向だ。
思考がうまく回らない今、最善はオブセシアに助けてもらう事だと思ったからだ。
どうにかゴブリンの横を走り抜けようとするがゴブリンはそれを許さない。
走る僕の右脚にゴブリンが棍棒を振るう。
思いっきり棍棒が当たり僕は勢いそのままに転んでしまう。
だがすぐ立ち上がり右脚を引きずりながら僕は叫ぶ。
「助けてくれ!オブセシア!」
僕の背中にゴブリンが飛びかかり棍棒で殴りつける。
その衝撃で僕は倒れる。
倒れながらも必死に僕は叫ぶ。
「助けて!オブセシア!このままじゃ殺される!」
ゴブリンが倒れた僕に乗っかり棍棒を振り上げる。
「助け…」
その時、僕は見つけた。
森の中に立つオブセシアの姿を。
オブセシアはただ見つめているだけで微動だにしない。
その表情は変わらぬ無表情。
「どうして...」
その言葉を最後に僕の頭にゴブリンの棍棒が振り下ろされた。




