表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サ終後の先  作者: 白姫
1/10

サービス終了告知

 毎日毎日が憂鬱だ。

 朝早くに起き、満員電車で揉みくちゃになりながら朝早くに会社に行き、上司からは毎日怒られ同僚からは陰口を言われる。夜遅くに家に帰り、夜遅くに眠りにつく。これが毎日の繰り返しだ。

 正直どうしてここまでして働くかは自分でもわからない。これまでの人生すぐ諦めてばっかだったから

諦め癖がついて今更会社を辞めたところでその先の見えない暗い未来を恐れて未来に諦めているだけか、はたまた無職になった自分を見る周りの目を恐れてか。

「もう死のうかな」

 そんなどうしよもない自分に嫌気がさし、全てから逃げられる選択肢が頭をよぎる。今すぐにでもこの

諦め人生の終着点。人生からの諦めを考えている時、スマホからピコン!と軽快な通知音がなる。

「なんだ?」

 会社以外に自分のスマホに通知を入れるものがあったかなと思いつつ反射的にスマホ画面を確認する。

 そこには【新キャラ登場!新イベントが開催!】の文字がある。

 一気に頭のモヤモヤした霧が晴れ、目に輝きが灯る。

「今日だったのか!新キャラの実装日!」

 それは唯一の人生の希望の光だった。


 昔から現在までサービスが続いてきた大人気スマホゲーム【アークヴェイル:オリジン】通称アーオリ。

 ゲーム内容はよくあるソーシャルゲームと変わらないが王道ファンタジーのストーリーが受け、

一定の人気を確保していた。

 学生だった僕も最初はそのストーリーの評判を見て始めたのだった。しかし僕が今もなお続けているのはストーリー以外にも登場キャラに重きを置いた俗に言うキャラゲーの側面が気に入ったのだ。

 このゲームはキャラとのふれあい要素、新衣装、キャラクターストーリーが他のアプリゲームより充実していると思っている。それがゲーム内のユーザー間競争に興味がなくただかわいいキャラクターを

愛でたいだけの僕に合っていた。

 昔から趣味といえるものが無い僕が現在まで続いている唯一趣味と呼べるものだろう。


 今日もログインボーナス、デイリーミッションをこなすため買ってきた夕飯のコンビニ飯を食べながら起動する。

「ん?」

 ゲーム内のイベントや更新内容、不具合などを告知するお知らせ欄に他とは違う告知があった。

 それは10周年を記念する生放送が決定したという告知だった。

「あれ、もう10周年記念なのか」

 そう思いながらいつもの日課であるデイリーミッションをこなしていく。

「そっかー10周年かー」

じわじわと嬉しさがにじみ出てくる。

「そっかーもう10周年かー!もうそんなに続いているのか!10周年には何をやるんだろう?前の9周年

記念の時はログインボーナスとイベント豪華だったし今回も豪華なのかな?今回は10周年できりがいいし

前回よりも豪華なのかな?」

 一度考えると次の周年に思いをはせてわくわく感が溢れてくる。

「よっしゃー!明日も仕事頑張るか!」

 周年記念の告知だけでやる気が出てきた。心の暗いもやもやがゲームの話題で塗りつぶされていく。

 そうなると心が前向きになり頑張れる気がした。

「仕事と周年記念の生放送に向けて早く寝ますか」

 わくわく感とやる気が残っているうちに寝床に着いた。


 それからの毎日は絶好調だった。

 どんなに多くの仕事が来ても「よし、やりますか!」と仕事に取り組める。仕事で疲れたり嫌な事があってもふとスマホを見るとそこにはゲームの公式アカウントから生放送までのカウントダウンの告知が流れてくる。それを見るとやる気が舞い戻り頑張ろうと思える。


 そして生放送当日。

 まさに幸せの絶頂だった。

 生放送での他ユーザーのお祝いメッセージ、豪華なログインボーナス、新キャラの追加、既存キャラの別衣装の実装、太っ腹な10周年記念イベントの報酬。メインストーリーの追加などまさに10周年記念に相応しい豪華さだった。

 僕も興奮のあまり生放送に何度もコメントを打ち込んでいくが他ユーザーのコメントで一瞬で流れて行ってしまう。それほどまでにユーザー達は熱狂していた。

 その熱狂は1時間の生放送が終わってなお続いた。

 熱が冷めない興奮した他ユーザー達が終了した生放送のコメント欄に自分の熱を排出するためにコメントを書き込んでいる。

 それを見ながら僕は生放送の余韻に浸りながら感想を漏らす。

「まさかこれほど豪勢とは思わなかった。予想以上だ。メインストーリーも盛り上がってきたし新規ユーザーもどんどん増えてる気がするしこれからもっと大きなコンテンツになっていくのかな。これからが楽しみすぎる」

 生放送の他ユーザーのコメントに共感しながらしばらくは眺めていたがふと時間を確認するといつもの睡眠時間より過ぎていることに気付く。

「おっと、まずい。流石に明日も仕事だから寝ないと。でも今回の生放送の内容は神だったなー」

 寝る準備をするために未だコメントが書き込まれている生放送の画面を閉じる。

 閉じる寸前にあるコメントが書き込まれる。

”でも流石に最近豪華すぎね?もしかして最後の大盤振る舞いなんじゃ…”


 その日は突然やってきた。

 仕事の昼休みに騒がしいスマホの画面を確認したらその告知があった。

【重要】【サービス終了のお知らせ】

 一瞬思考が停止する。その後直ぐに様々な考えが頭を流れていく。

(え、何。サービス終了?え?なんで?あんなに盛り上がっていたのに?なんで?新規ユーザーも増えていたんじゃ?10年もサービスが続いていたのに?ゲーム会社の都合?サービス終了せざる得ない理由があるのか?ゲームはどうなるの?メインストーリーは?コンテンツは?)

 すぐにSNSや掲示板を確認する。そこには他ユーザーの驚きの声や困惑の声。無理やり納得しようとする者やこれまでの自分のゲームに対しての気持ちを表明する者。など様々なユーザーの声で溢れかえっていた。

 その後の記憶はなかった。

 仕事を終え自宅に帰ってから自我が戻った。

 慌ててスマホを確認する。もしかしたら何かの見間違いか冗談だったのかもしれないと。しかし、それは変わらずにそこにあった。

【重要】【サービス終了のお知らせ】

 その文言を眺めながらゆっくり息を吐きだしながら廊下で膝をつく。

 そのままその文言に書かれたゲーム公式の文章をゆっくり読んでいく。

 正直に言って納得できるような文章は書いてなかった。ただただユーザーへのこれまでのサービス利用の感謝の言葉とサービス終了のお詫びの言葉があるだけで具体的なサービス終了の理由は記載されていなかった。

 この夜、普段は飲まない酒類を買ってきてヤケ酒した。

ちょっと前振りが長くなってしまった。次には転生してると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ