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主な登場人物
深沢 彩佳
女子高校生 3年生。赤緑色覚異常がある。小さい頃から本が大好きで、将来は小説家になるのが夢。同級生の花岡 優奈とは中学時代からの親友。蒼の務めているクリニックには子供の頃から家族ぐるみでお世話になっている。
花岡 優奈
女子高校生 3年生。深沢 彩佳とは中学からの親友。強度近視でいつも分厚いレンズのメガネをかけている。
川上 蒼
33歳 男性。クリニックでマッサージ師として働いている。視覚障害者で、外出時は遮光メガネと白杖を常用する。全盲ではない。白い霧の中にいるような見え方。
佐藤 美彩
29歳 女性。蒼が務めるクリニックで受け付けとして働いている。
彩佳は小説投稿サイトのマイページにログインした。先日、初投稿した『デジタルハート』を読み返して見た。不思議な少女と感情を持たないアンドロイドの少年との出会い。彩佳は中学生の頃からノートに物語を綴るようになっていたが、こうして公に出すのは初めてのことだった。
マイページにアクセス解析が見られるリンクがあるので、そこをクリックしてみる。時間ごとに何回アクセスがあったのか表になっている。投稿してまだ一週間足らずなのに100回以上アクセスされていた。
「すごい。これって私の物語を100人以上の人が読んでくれたってことだよね?」最初、蒼に小説投稿サイトを進められたとき、自分なんかが書いた物語を読んでくれる人なんているのかな?と思ったが、プロットを読んだ蒼は
「プロットからでもワクワクしました!」と言ってくれた。また、先日はこの冒頭部分を読んでの感想も聞かせてくれた。
ネットには、特にコメントやメッセージは付いていなかったが、それでも彩佳は小さな感動を覚えていた。
彩佳は、物語の続きを書き始めた。
-少女の言葉に、少年はわずかに目を見開いた。それは、まるで、長い眠りから覚めたような、そんな印象だった。
「君は……?」
少年は、少女の姿をじっと見つめた。透き通るような白い肌、吸い込まれそうな澄んだ青い瞳、そして風になびく長い銀色の髪。その姿は、少年のデータバンクに存在するどんな人間とも違っていた。
「リリア。リリアっていうの。」
リリアは、笑顔で答えた。その笑顔は、太陽の光のように明るく、少年の心を温かく照らした。
「リリア……」
少年は、リリアの名前を繰り返した。その声は、まだ機械的で、冷たかった。しかし、どこかで、何かが変わり始めているような、そんな気がした。
リリアは、少年の隣に座り、砂浜に広がる青い海を眺めた。波の音だけが静かに響く、穏やかな時間。リリアは、少年に話しかけた。
「あなたは、名前はあるの?」
「名前……」
少年は、少し考えてから答えた。
「僕は、まだ名前を持っていない。」
アンドロイドは、人間のように名前を持つ必要はない。しかし、リリアは、少年に名前をつけてあげたいと思った。
「じゃあ、私が名前をつけてあげようかな。」
リリアは、少年の顔をじっと見つめた。そして、ひらめいたように言った。
「そうだ、カイはどうかな? あなたの瞳の色みたいで、素敵な名前だと思う。」
カイ。それは、アンドロイドの少年にとって、初めての、そしてたった一つの名前だった。
「カイ……」
カイは、自分の新しい名前を口にした。その声は、まだ機械的ではあったが、どこか温かみが感じられた。-
5月。もうすぐ中間テストだ。優奈は自宅の自分の部屋でテスト勉強をしていた。一段落したので、優奈は廊手ををうんと伸ばして大きく伸びをした。そしてイスの背もたれに体を預け、ふぅと息を吐き出した。白い天井を見上げると、視界の隅っこに黒い点が見えた。優奈は手で払おうとした・・・そのとき
「優奈ー!もう11時よ!先にお風呂、入っちゃってねー。」優奈の母が優奈を呼んだ。
「はーい!」優奈は大きな声で返事して、黒い点のことなど忘れてお風呂に向かった。
一週間後、この日はテストの最終日だった。キーンコーンカーンコーンとテスト終了を告げるチャイムが教室に鳴り響いた。教室の後ろの席の人が裏向けに置かれた解答用紙を集めて、先生のところにまとめて持って行った。
「優奈ー、お疲れ様!テストどうだった?」彩佳が優奈のそばにやってきた。
「あはは。ま、まあまあかな?」優奈は苦笑いを浮かべた。
「ねぇ、これから蒼先生のところに行こうと思うんだけど?」彩佳が優奈に尋ねてきた。
「あ!いいね。私もテストで眼精疲労困憊って感じだから。」
彩佳と優奈は上履きから靴に履き替えて、校舎の外に出た。5月の空は青く木々は濃い緑色に輝いていた。
「あー、気持ちいい五月晴れだねー。」彩佳が伸びをしながら言った。
「わー、ホント。気持ちいい青空・・・え?。」優奈が青空を見上げた。澄み切ったきれいな青空が広がって・・・優奈の視界にグレーのモヤモヤしたものがいっぱい映っていて、優奈は一瞬固まった。
「優奈?どうしたの?」彩佳が怪訝そうに聞いてく田。
優奈が視線を地面に落とすと、モヤモヤはそれほど気にならなくなった。
「ううん。なんでもないよ。じゃ、行こっか。」優奈はそう言って、彩佳と二人歩き始めた。
彩佳と優奈は蒼の務めるクリニックにやってきた。待合に入るといつものように美彩が明るく挨拶してくれた。
「彩佳ちゃん、優奈ちゃん、こんにちわ。」
「美彩さん、こんにちわ。今日でやっとテスト終わったんですよー。それで、二人とも疲労困憊で・・・。」彩佳が美彩に言った。
「そう!それは、お疲れ様。じゃあ、二人とも川上先生のマッサージでいいかな?」美彩が二人に尋ねた。
「はい、お願いします。」彩佳と優奈は声をそろえて返事をした。
しばらく待っていると、治療室のドアが開いて蒼が顔を出した。
「今日は、どっちが先にしますか?」
「あたし、先に行ってもいいかな?」優奈が彩佳に尋ねた。
「え?優奈が先に行きたいって珍しいね?うん、もちろんいいよ。」と彩佳が答えた。
「ごめんね。ありがと。」優奈はそう言って、治療室の中に入っていった。
優奈は治療室に入るなり、
「先生。前に、強度近視の人は緑内障や網膜剥離のリスクが高くなるから、気をつけた方がいいって教えてくれたじゃないですか?」と蒼に言った。
「え?あ、はい。確かに言いましたけど・・・。」蒼はいきなり何を言われるんだろ?と思った。
「実は、あたし・・・。」優奈は蒼に、さっき学校から出たところで青空にグレーのモヤモヤが見えたことを話した。蒼は優奈の言葉を真剣な顔で聞いていた。優奈が話し終えると蒼は言った。
「最近、今までと何か変わったこととかありませんでしたか?」
「あ、そういえば、テスト前に勉強してて、ふと天井を見上げた時に黒い点みたいなものが見えたことがありました。」と優奈が答えた。
「うん。それで、その黒い点はどうなりましたか?」と蒼がさらに質問した。
「はい。気にしないようにしてたんですけど、2、3日前から点の数が増えてるような・・・。」優奈は不安そうに答えた。
「花岡さん。それは、良くない状態かもしれません。できれば、すぐに眼科を受診することをおすすめします。」蒼の声は真剣だった。
「え?どういうことなんでしょう?」優奈は不安そうに蒼に尋ねた。
「あくまで一般的な話をしますが、強度近視で飛蚊症が出現、それが急に増えてきている。それは網膜剥離の恐れがあります。網膜剥離は放っておけば失明の可能性もありますが、すぐに治療すれば、日常生活に影響は出ない程度で助かることも多いです。だから、
すぐに眼科に行くことをおすすめします。」
優奈が治療室に入ってから数分後、優奈と蒼が治療室から待合室に出てきて、受付の美彩のところに歩いて行った。
「佐藤さん、すみませんが、花岡さんの今日の治療はキャンセルでお願いします。」蒼が美彩に言った。
「え?優奈ちゃん、どうしたんですか?」美彩が不安そうに尋ねてきた。
「ええ、ちょっと網膜剥離の恐れがあるので、眼科に行かれます。」蒼は美彩にそう言った。
「どういうことなんですか?」彩佳が近づいてきて問いかけてきた。
「花岡さんは少し前から飛蚊症の症状が出ているそうで、一応眼科で診てもらったほうがいいとお伝えしまして、本人も今から眼科に行くとおっしゃるので。」蒼は美彩と彩佳に網膜剥離の概要についても説明した。
「ごめんなさい。私も今日はキャンセルさせてください。優奈に付いていきます。」彩佳が美彩と蒼にそう言って、頭を下げた。彩佳と優奈はクリニックから出て行った。
「優奈ちゃん、大丈夫かしら・・・。」美彩が不安そうにつぶやく。
「まだ、症状が出始めたばかりですし、初期だと思われますから、後は眼科さんにお任せしましょう。」蒼はそう言って治療室の方へ戻っていった。
クリニックで蒼が、優奈は網膜剥離の疑いがあると言った。そのまま優奈と彩佳の二人は眼科に行った。眼科に行く道すがら優奈は
「彩佳、ごめんね・・・。」そう言ったきり、ずっと黙っていた。眼科で色々検査して、優奈が一人で診察室に入っていった。しばらくして、優奈が待合室に出てきて彩佳の隣に座った。
「やっぱり、網膜剥離だって。」優奈はそうつぶやいてうつむいてしまった。彩佳は網膜剥離のコトをよく知らなかったが、さっきクリニックで蒼が初期なら大丈夫だと言っていたので、彩佳もそれを信じて優奈の手をずっと握りながら
「優奈、蒼先生も言ってたけど、きっと大丈夫だよ。」と、何度も励ました。
優奈の母が眼科に呼び出された。優奈の母はあわてて眼科にやってきた。優奈の母は優奈と彩佳の姿を見つけると小走りに近づいてきた。これまでのいきさつを彩佳が優奈の母に説明した。
「彩佳ちゃん、ありがとね。もう、暗くなっちゃうから、彩佳ちゃんはおウチに帰ってね。」優奈の母は優しく彩佳に言った。
「はい。それじゃあ、私はこれで。・・・優奈、大丈夫だから、頑張ってね。落ち着いたら電話してね。」彩佳は優奈に優しく声をかけて立ち上がった。
「彩佳、今日はありがと。また、電話するね。」優奈は少し笑顔を浮かべて彩佳に言った。
彩佳は自宅に帰ってきて、夕食を摂ったが、食事の味などほとんど感じなかった。夕食を終えて、自室に入った。パソコンを立ち上げ毎日少しずつ書いている小説『デジタルハート』を開いた。しかし、彩佳の脳裏に帰り際の優奈の不安げな笑顔が浮かんでパソコンに向かった手を動かすことができなかった。
パソコンに向かったまま、ぼんやりとしていたら、彩佳のスマホが着信音を奏でだした。彩佳はあわててスマホを取り上げ、通話ボタンを押してスマホを耳に当てた。
「もしもし、彩佳?」優奈の声だった。
「あれから、すぐにレーザー治療して、無事に終わったよ。今はまだ見にくいけど、だんだん回復するって先生が言ってた。」優奈が話を続ける。
「彩佳、今日はホントにありがと。彩佳がいてくれなかったら、きっとあたし不安と恐怖でおかしくなってた・・・。」彩佳は「うん、うん」と優奈の話を聞いた。
「明日から、学校に行ってもいいって。激しい運動・・・体育の授業はしばらくダメって言われたけど、ラッキーだわ。」体育の苦手な優奈はそう言って笑った。その声を聞いて彩佳はホっとした。
「それじゃあ、また明日ね。いつものところで待ってるね。」彩佳と優奈は、そう言って電話を切った。
優奈の声を聞いて、安心した彩佳はそれから小一時間パソコンに向かって小説を書いた。
優奈が網膜剥離のレーザー治療を受けてから1週間が経った6月の上旬。優奈と彩佳は蒼の務めるクリニックにやってきた。
「こんにちわ。蒼先生にお礼が言いたくて・・・。」優奈が美彩に来院の理由を告げた。
「うん。今、川上先生、手が空いてるから大丈夫よ。」美彩はそう言って、蒼のいる治療室にパタパタ走って行った。
「蒼先生!この前は、ありがとうございました。」優奈は治療室に入るなり蒼に頭を下げた。
「いえいえ、僕は医療従事者として当たり前のことを言ったまでです。」蒼は答えた。
「でも、あのとき、蒼先生が、言ってくれなかったら、あたし現実から目を背けて、もっと悪くなってたかもしれないから。」と言いながら優奈はバッグから包装紙で包まれた箱を取り出した。
「これ、お母さんが、蒼先生のところに持ってけって。」優奈はその箱を蒼の手に持たせた。
「ああ、こんな、ここまでしていただかなくても・・・。ありがとうございます。お母様によろしく伝えてくださいね。」蒼は箱を受け取った。患者や患者の家族からの贈り物は、あまり受け取りたくはない蒼だが、すでにお金を使って持参された場合は、それを断るとお金を無駄にさせた上気持ちを踏みにじることになるので、受け取るようにしている。これが、現金やこれから買いに行くという話ならば低調にお断りして気持ちだけ受け取るのだが。これが蒼の方針だった。
「ところで、目の方はどうですか?」蒼は改めて優奈に問うた。
「うん。レーザー治療やってすぐは見えにくくて、不安だったけど、だんだん回復してきました。この前、視野を測ったんだけど、レーザーを当てたところがやっぱり欠損してるんだけど、日常ではほとんど気になることはないです。でも、メガネの度がちょっと変わったみたいで、作り直さないといけないみたい。・・・今よりもうちょっとレンズが分厚くなるみたいで・・・、それでも、眼科の先生も早く治療できたから、視力低下も視野欠損も最小限に抑えれたって言ってたし、あのときすぐに眼科に行けって言ってくれた蒼先生にはホント感謝しかないよ!」優奈はそう言って蒼の手をしっかり握ってお礼を改めて言った。
「あの日、優奈ちゃんが、治療室からすぐに出てきて、眼科に行くって言ったときはホントびっくりしたわ。でも、こうしてまた元気に来てくれてホントにうれしいわ。」と美彩が言った美彩は受付を他のスタッフに任せて優奈と彩佳と一緒に治療室に入ってきていた。
「うん。あたし自身も網膜剥離って聞いた瞬間、頭が真っ白になってすごく怖かった。」と優奈。
「私も、優奈どうなっちゃうんだろう?ってすごくこわかった。」彩佳が言った。
「ありがとう。でも彩佳がそばにいてくれて心強かったよ。眼科でも、お母さん呼んで、すぐにレーザー治療しましょうって言われて、痛いのかな?見えなく鳴っちゃうのかな?ってめちゃくちゃ怖かった。お母さんが来るまで彩佳がずっと隣で手を繋いでいてくれてホントに嬉しかったんだ。」優奈はちょっと涙声になりながら言った。
「うん。私が帰るとき、優奈が、ありがとって言った顔が、すごく不安げで、その顔がずっとまぶたに付いてて、おウチに帰ってからもご飯の味も感じなかったし、何も手に付かなかった。その後、優奈から電話がかかってきて、ホントにホっとした。電話で、また明日って言ってくれたときほんとに涙が出るくらい嬉しかったんだよ。」彩佳も少し涙声だ。
「ありがと。レーザーから10日くらいはあんまり運動しないよう言われてるけど、ほとんど元通りになれて、みんなにはホント感謝だよ!ありがとうございます。」優奈は改めてその場にいる全員にお礼を言った。4人は、しばらく話をしてから、優奈と彩佳は帰っていった。治療室には美彩と蒼の二人が残った。
「川上先生。今回はホントにグッジョブですよ!私、先生のこと見直しちゃった!」美彩はそう言って、受付のほうへ戻っていった。
それから数日が過ぎた。彩佳と優奈はいつもの公園前で待ち合わせ、学校に向かっていた。
「あーあ、また今日から体育の授業に出ないといけないんだなー。」優奈がぼやいた。
「うふふ。優奈ったら。でも、ホント良かった。」と彩佳は笑った。
「ねぇ、彩佳。あたし、進路決めたよ。」優奈が唐突に言った。
「え?」彩佳が聞き返した。
「今回の一件で、目とか視力の大切さがわかったんだ。眼科の先生もスタッフのみんなもすごく優しくて励ましてくれて、だからあたし、視能訓練士になろうと決めたの!眼科の優しいみんなみたいな人になりたい。、彩佳や蒼先生、目が不自由な人たちや目のことで悩んでる人たちのために働きたいなって。」優奈はしっかりと前を向いて言った。
「優奈、優奈。きっと優奈ならすてきな視能訓練士になれるよ!私、応援してる!」彩佳は優奈に言った。
「ありがと、彩佳。よーし、勉強がんばるぞー!」「オー!!」彩佳と優奈は声をそろえて叫んで笑い合った。
夜、彩佳は自分の部屋でパソコンに向かった。小説投稿サイトにログインすると、メッセージが届いていた。
「リリアとカイは、この先どうなっちゃんだろう?カイに感情を芽生えさせるリリアが何者なのか気になります。これからも楽しみにしてます。」彩佳は驚いた。今まで累計で300アクセスを越えているが、初めてもらった応援メッセージだ。彩佳は嬉しくてさらにやる気が出てきた気がした。
-カイは、リリアの家の庭にある古いブランコに座っていた。リリアは、カイの隣に座り、「リリアは、いつもここで本を読んでいるの?」
カイは、リリアの手元にある本をじっと見つめた。
「うん。ここはね、私のお気に入りの場所なの。木漏れ日が気持ちよくて、鳥のさえずりが聞こえて、心が落ち着くの。」
リリアは、穏やかな笑顔で答えた。
「鳥のさえずり……」
カイは、首をかしげた。
「鳥のさえずりが、聞こえるのか?」
リリアは、驚いたようにカイを見た。
「カイには、聞こえないの?」
「僕は、アンドロイドだから。人間のように、音を感じることはできない。」
カイの言葉に、リリアは胸を痛めた。
「そうだったんだね……。」
リリアは、カイの手をそっと握った。
「でも、大丈夫。私が、鳥のさえずりを教えてあげる。」
リリアは、目を閉じて、耳を澄ました。
「ほら、聞こえる? 小鳥たちが、楽しそうに歌っている声が。」
リリアは、カイに聞こえるように、ゆっくりと、そして丁寧に、鳥のさえずりを説明した。
「ピーチク、パーチク、チュンチュン、チュンチュン……。」
リリアの声は、まるで音楽のように、カイの心に響いた。カイは、リリアの手の温かさを感じながら、目を閉じた。
リリアの言葉を通して、カイは初めて、鳥のさえずりを感じることができた。それは、データバンクに存在するどんな情報よりも、美しく、温かいものだった。
リリアとカイ。二人の絆は、静かな庭で、ゆっくりと、しかし確実に深まっていった。-
つづく