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カーン辺境伯テオドール達と俺の辺境伯城までの道中の件

大森林の樹木を伐採して作ったスペースに鎮座する俺の生活インフラ完備のコテージ型魔導具を初めて目にしたテオドール達、カーン辺境伯一行は予想通り、茫然としていた。


言われなくともわかる。彼等の後ろにいる俺は今、両腕を組んで、誇らし気にドヤ顔をしているだろう。


固まっていた一行の中で、一早く動き出したのはテオドールであった。

彼はその両目を子供の様に好奇心で輝かせて再起動した。その彼の次に我に返ったのは、テオドールの娘のマリアだった。そして、続々と我に返って行き、小一時間経って、ようやくカーン辺境伯一行は全員が正気を取り戻した。


既に日が大分落ちてきたため、俺はコテージの周囲を警備するため、この辺の魔物レベルであればワンパンできる警備ゴーレムを起動し、テオドール達にコテージの中を案内することにした。


コテージは3階建てで、全員に1階の個室をそれぞれ割り当てても部屋は余裕で余る。


1階には宿泊用の同じ造りの多数の個室に食堂、厨房、中央大広間、研究用の工房、鍛練場があり、2階には男女別に分かれている大浴場、1階の個室よりも広いスペースの室内で個別バス・トイレと簡易キッチン付きのゲストルーム。

そして、3階には展望室と俺しか入れない俺専用の寝室と書斎。


こぢんまりとしている外観からはとても設備の全てが収まっている様には見えないけれども、そこは【空間魔術】の【空間拡張】を最大限に活用して実現した成果だ。


テオドールが率いてきた6騎の内のもう1人の前衛担当は先走った見習いだった若手騎士達の教官を任されていた人物がテオドールの下へ進み出てきた。

彼は、若さ故の過ちを犯した見習い達の性根を叩き直すべく、大広間で俺の施設案内が終わると、真っ先に俺に鍛練場の使用許可を申請してテオドールにも許可を求めてきたのだった。


そして、テオドールの許可と鍛練場の使用許可を俺から得ると、すぐに見習い達の訓練を鍛練場で行うことを告げ、項垂れる見習い達を鍛練場へ、逃亡しようとした何名かを引きずりながら連れて行った。


それなりに多人数になっていることから、そろそろ夕食の準備をしないと間に合わない時間になってきたので、俺はテオドールをはじめとしたその場に残った面子と厨房に行き、食事の準備をすることを提案した。


十分な準備をせずに行動したと思しきマリアと見習い達が食糧を用意しているはずもない。他方、テオドール達はというと、『アイテムボックス』持ちがいるとはいえ、その収納力の多くは大型のテントに占められ、収納している食糧は味気ない干し肉とパンといった俺が昔、冒険者生活で料理を広め、改善する前に定番となっていた保存食だけだった。


普通に食事を摂る気満々だった俺は彼等の食事上を目の当たりにして大きな罪悪感に苛まれることになったので、食材に関しては、この後の夕食と明朝の朝食は俺がもつことを伝え、不安がったテオドール達に厨房の冷蔵庫を開けて、保存している食材を見せて納得させた。


調理時間とおかわりを含めて決まったメニューはキャンプでの定番メニューの1つであるカレーだ。


野菜は俺が赤竜の里の自分の畑で栽培して収穫していた人参と玉ねぎ、ジャガイモ。そして、メインの具材に使う肉は俺がここまでの道中で返り討ちにした魔物の中に結構な数いた豚肉に近い肉質のビッグワイルドボア。


カレースパイスも大森林で自生していたものを丹念に採集して、ビッグワイルドボアに合う様に、いい塩梅に調合したものをたくさん備蓄しているから、今回消費しても問題ない。


ちなみに、カレースパイスはワイバーンの肉など他の魔物肉毎に合う様、ある程度の種類を既に調合済みだ。微妙な違いではあるが、味に納得できずに未完成のものがまだまだあるから本当にカレースパイスの調合は奥が深い。


厨房の調理魔導具に目を輝かせていたテオドール親子と女性魔術師2人組は、今は手際よく野菜の皮むき等の下拵えをどんどんこなしていっている。


残った俺とオーランドは人数分の多量の米を研いで、本格大釜型炊飯器魔導具で炊いている。


オーランドは出会いこそ、最悪で印象はよくなかったが、話せば分かる悪い奴ではなかった。和解もすでに済ませたこともあって、俺とのわだかまりはない。


そして、意外だったのが、この集団の中で一番身分の高いテオドールの包丁の扱いが、俺が思っていた以上に巧みで、人並み以上にこなしているいる女性陣を置き去りにしてジャガイモの皮を慣れた手つきで次々と途中で途切れることなく剥いていった。


夕食の準備は特にトラブルらしいトラブルは起こらず順調に進んだ。

大浴場で汗を流して身だしなみを整えてきた見習い騎士達の教官が丁度いいタイミングで、テオドールに報告にやって来たので、食堂で夕食に移ることになった。


訓練に参加していた見習い達は全員、顔が死んでいたが、並ぶ夕食を目にして、現金な復活を果たしていた。俺に敵意を向けていた面々は教官の訓練によって最早、完全に牙を抜かれた様になっていた。


テオドールの号令で夕食会が始まり、全員がポークカレーならぬ、ボアカレーに舌鼓をうっていた。

ルーも辛いのが苦手な人がいることも考えて三種類、甘口、中辛、辛口を用意している。


「ジェイド殿、相応の対価を支払うから、カレーのスパイスを是非譲ってくれないだろうか?」


本気の眼差しのテオドールと彼の後ろで、夕食の準備で親交を深めた女性魔術師2人組とオーランドが無言で、テオドールに追従する様に深く頷いている。


彼等の傍らでは、戦闘時に見せていた凛々しいキャライメージを崩壊させる程に惚けた表情をしたマリアが一心不乱に甘口カレー(特大)を食べていた。

君、食いしんぼキャラだったのかい……。


「すいません、商談については城についてからでいいですか?」


テオドール達の鬼気迫る気迫に押された俺はなんとかそう答えて、納得してもらった。


「失礼、今は食事中でしたね。いやぁ、この家型魔導具といい、まるでジェイド殿は御伽噺に出てくる賢者みたいですね」


テオドールが発した悪気のない俺の地雷ワードに反応して、思わず俺の濃密な殺気が漏れ出てしまった。


「「「っ⁉」」」

「あっ!」

食堂にいた全員が、突然発生した殺気に一瞬体を強張らせた。


マリアは手にしていたスプーンを床に落としそうになったが、【念動】で、俺が床に落ちる前に回収して、マリアの手に移動させた。


「はははっ、申し訳ない。俺は賢者に対して、いい印象といい思い出が全くないので、俺を賢者と呼ぶのはやめてください」

「……そうか、それは大変失礼した。差し支えなければ、なぜ、ジェイド殿はその様に思われているのか、教えていただけないだろうか?」

頭を下げて謝罪してきたテオドールの謝罪を受け入れ、別段隠すことでもないので、夕食を終えた後に俺は話の種として、俺が賢者を嫌っている理由について語ることにした。


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