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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

公爵家令嬢から婚約者の監視を頼まれてしまった

作者: 雪月花VS花鳥風月

ガールズラブの物語を投稿します。

読んでもらえたら光栄です。

私はモモカ。

桃色髪の十五歳の乙女だ。

表向きはシャド辺境伯家三女だが、裏では皇家の影を務めている。

その理由は私が規格外の身体能力を有しているからだ。

八歳の時に孤児院を潰そうとした犯罪組織を壊滅させたのを皇帝に知られてしまい、孤児院への援助を条件に皇家の影の一員になった。


【回想開始】

「三日以内に孤児院から立ち退け。逆らうなら孤児達を皆殺しにしてやるからな」

犯罪組織の連中が無茶苦茶な要求をしてきたので、犯罪組織を壊滅させる事にした。

「冗談じゃないわよ。殺られる前に殺ってやるわよ」

「俺達がガキ一人に殺られるなんて、絶対にあり得ねえ」

「お前、化け物か」

「うるさい、黙れ、やかましい」

「止めてくれ」

「助けてくれ」

「孤児院を潰そうとした罰だ。全員死ね」

犯罪組織の連中を一人残らず撲殺してやった。


「犯罪組織が壊滅している」

「誰が殺ったんだ」

「一人の幼女らしい」

「三大犯罪組織の一つが壊滅しました。それも一人の幼女によってです」

「その幼女を探し出し、皇家の影に勧誘しろ」

皇帝からモモカを勧誘しろと命令が下った。


「そなたを皇家の影に勧誘したい」

「孤児院に援助をしてくれるなら、皇家の影に入ります」

「良かろう。そなたは今からシャド辺境伯家の養女だ」


最初の任務は残った二つの犯罪組織の壊滅だった。

あっさりと任務を完遂させた。

【回想終了】


「婚約者の監視をお願い」

「はぁ、セカン殿下の監視ですか」

友人のラバン公爵家令嬢ロネヴィア様から婚約者のセカン第一皇子殿下の監視を頼まれてしまった。

あの馬鹿皇子を監視しなければならないなんて、憂鬱だ、不幸だ、地獄だ。

せめてサド第二皇子殿下かファス第一皇女殿下の監視なら良かったのに。

サド皇子は腹黒な処があるけど、かなりのイケメンで頭脳明晰だ。

ファス皇女も腹黒な処があるけど、一応は清楚な淑女だ。

しかしセカン皇子は完全に駄目だ。

取り柄は顔だけで、頭は鈍いし、性格は最低だし、女癖が特に最悪だ。

あの馬鹿皇子の婚約者のロネヴィア様は本当に気の毒だ。

とても面倒臭いので、馬鹿皇子を暗殺してしまおうかと思ったが、ロネヴィア様が悲しむから止めておこう。


モモカ様にセカン皇子の監視を頼んだ。

セカン皇子なんかどうでも良いんだけど、モモカ様と今以上に親密になりたかった。


面倒だ、かったるい、ヤル気が起きない。

仕方なく馬鹿皇子の監視をしていたら、何故か桃色髪の令嬢が馬鹿皇子に接触し始めた。

あの令嬢は確かボツラ男爵家のピンク嬢だ。

男爵家令嬢なのに馬鹿皇子に馴れ馴れしくしているし、馬鹿皇子もデレデレしている。

これは報告すべきか、しないべきか、悩んでしまった。

それにしてもピンク様は趣味が悪すぎるだろう。


私はテンセ侯爵家長女ベニカ。

皇立高等学園への入学直前に前世の記憶が甦った。

この世界は乙女ゲーに似ている世界だった。

確か桃色髪のヒロインがセカン皇子や側近候補達を誘惑して、ハーレムを築く内容だった。

その為に国内が混乱していまい、国力が衰えてしまうのだった。

その結末を阻止したいが、何故かヒロインは名前が設定されていなかった。

仕方なく桃色髪の新入生を探したが、何故か二人も居た。

一人はシャド辺境伯家令嬢のモモカ様。

もう一人はボツラ男爵家令嬢のピンク様。

どちらがヒロインなのかと監視していたら、モモカ様がセカン皇子の後を付けている。

これはモモカ様がヒロイン確定かな。

私も急いで後を付けたが、何故か接触せずに、単に監視しているだけだった。

???

どうして接触しないで、監視だけなんだろう。

暫くモモカ様だけを監視していたら、眼を離した隙にピンク様がセカン皇子に接触していて、既に親密になっていた。

ますます判断出来なくなってしまった。


「セカン殿下が男爵家令嬢と仲良くしていました」

結局ロネヴィア様に報告する事にした。

「・・・・そうですか」

ロネヴィア様が悲しそうに俯いてしまった。

「ロネヴィア様、元気を出して下さい」

「モモカ様、私を慰めて」

ロネヴィアはモモカに抱き付いてきた。

馬鹿皇子、絶対に赦さん。

モモカは物凄く激昂した。

しかしロネヴィアの眼が獲物を狙う猛獣のようになっていたのをモモカは気付かなかった。


モモカ様を監視していると、何故かセカン皇子の婚約者のロネヴィア様と密談している。

確かロネヴィア様は悪役令嬢の筈よね。

ヒロインと悪役令嬢が親しくしているなんて、絶対にあり得ない。

完全に判断出来なくなってしまった。


「私はテンセ侯爵家長女ベニカです。ラバン公爵家令嬢のロネヴィア様、シャド辺境伯家令嬢のモモカ様ですね。会話中失礼します」

思いきって二人に接触する事にした。

「モモカ様、どうしてセカン殿下の後を付けていたのですか」

「実は私がモモカ様にセカン殿下の監視を依頼したのです」

ストレートに尋ねたら、ロネヴィア様が素直に話してくれた。

要するにセカン殿下が浮気するかもしれないと、心配したロネヴィア様がセカン皇子を監視して欲しいと、モモカ様に依頼したらしい。

これでピンク様がヒロインだと確定した。


失敗した。

まさかベニカ様に後を付けられていたなんて、影として失格だ。

モモカは落ち込んでしまった。

実はベニカは転生の際に隠密というスキルを授かっていたので、モモカに気付かれずに後を付けられたのだった。


「ボツラ男爵家のピンク様がセカン殿下を誘惑しています。セカン殿下とピンク様の接触を阻止したいので、協力して下さい」

ベニカは友人のアオイ、アカネ、ミドリに協力を依頼した。

アオイは伯爵家令嬢で宰相子息ワンの婚約者。

アカネは子爵家令嬢で騎士団長子息ツウの婚約者。

ミドリは男爵家令嬢で神官長子息スリイの婚約者。

つまり三人は側近候補達の婚約者だ。

「分かりました」

「お任せ下さい」

「頑張ります」

三人は快く引き受けてくれた。

「取り敢えずピンク様と仲良くする振りをして、セカン殿下達との接触を然り気無く妨害します」


「私はテンセ侯爵家長女ベニカです。ボツラ男爵家令嬢のピンク様ですね。昼食を御一緒に食べませんか」

「私はブルー伯爵家次女アオイです」

「私はレッド子爵家三女アカネです」

「私はグリーン男爵家四女ミドリです」

「ボツラ男爵家長女ピンクです。折角の御誘いですが、セカン殿下達と約束していますので」

「「「「私達も御一緒させて下さい」」」」

四人は強引に付いていった。


冗談じゃないわ。

四人の令嬢達が馴れ馴れしく接触してきて、セカン皇子達との逢瀬を妨害してくる。

このままではハーレムルートが破綻してしまうじゃない。

接触を拒否しようにも相手は侯爵家令嬢のベニカ、伯爵家令嬢のアオイ、子爵家令嬢のアカネ、男爵家令嬢のミドリ、私より格上か同格の令嬢ばかりで、完全に打つ手無し状態だ。


「セカン殿下、昼食を御一緒させて下さい」

一方モモカは馬鹿皇子に接触する事にした。

「シャド辺境伯家令嬢のモモカ嬢か。私は構わないが、普段はロネヴィアと一緒じゃないか。どういう風の吹き回しだ」

「将来に向けて人脈を築いておきたいだけです」

「そうか。好きにしろ」

適当に答えてやったら、一応納得したみたいだ。

この馬鹿皇子が偉そうな態度をしやがって。

「ありがとうございます」

嫌だが一応礼を言っておいた。

本当は今すぐ立ち去りたいが、我慢して馬鹿皇子の隣に腰掛けた。

そして積極的にセカンと側近候補達に話し掛けた。

最悪な時間だった。


「セカン殿下、彼女達も御一緒したいそうです」

「セカン殿下、御一緒しても構いませんか」

「テンセ侯爵家のベニカ嬢と三人の令嬢達か。私は構わないが、お前達はどうする」

「アオイ嬢」

「アカネ嬢」

「ミドリ嬢」

「お前達の知り合いか」

「私の婚約者のアオイ嬢です」

「俺の婚約者のアカネ嬢です」

「僕の婚約者のミドリ嬢です」

ピンクだけでなく、何故かベニカ様と三人の令嬢達も合流してきた。

どうやら三人の令嬢達は側近候補達の婚約者みたいだ。


冗談じゃないわよ。

ベニカ達だけじゃなく、シャド辺境伯家令嬢のモモカまで邪魔をしてくる。

特にモモカは私と同じく桃色髪なのが気に入らない。

しかもセカン皇子の隣に座っている。

本当にムカつく女だ。

もしかしたらモモカも転生者なのか。

「モモカ様、地球って知ってますか」

鎌を賭けてみた。

「地球ですか、いいえ知りません」

「・・・・」

モモカは全然動揺しなかったが、ベニカが眉を潜めたのをピンクは見逃さなかった。

どうやらベニカが転生者のようだ。

ピンクはベニカが転生者だと気が付いて、ベニカを要注意人物だと警戒する様になった。


私はフユミ。

同人誌研究会の部長で召喚というスキルを有している。

異世界人が作成した同人誌という薄い本を見つけて、完全にハマってしまった。

そして異世界から同人誌作家を召喚する事にした。


私は同人作家の冬小宮夏海。

冬コミに向けてラストスパート中に無理が祟って、十七歳の若さで過労死寸前になってしまった。

「あれ、私は過労死寸前だった筈よね」

気が付いたら、見知らぬ場所に居た。

「同人作家の召喚に成功した」 

「これで我等は癒される」

「フユミ様、おめでとうございます」

何だか周囲が騒がしいわよ。

静かにしてくれないかな。

ちっとも状況が整理出来ないじゃない。

「同人作家殿、同人誌を作成して私達を癒して欲しい」

豪華な椅子に座っている少女が戯言を吐いた。

「はぁ、同人誌を作成?アンタ正気なの。それともボケてるの」

「「「「「・・・・」」」」」

私の発言により周囲が静寂に包まれた。

何故か全員がコスプレイヤーだった。

魔法使いみたいなコスチュームの少女。

派手なだけの趣味の悪い制服を着ている学生達。

ひょっとしたら此処は冬コミのコスプレエリアなのか。

「ねぇ、此処は冬コミのコスプレエリアなの」

取り敢えずコスプレ少女に聞いてみた。

「冬コミ?コスプレエリア?同人作家殿、何を言っておられるのですか」

違ったらしい。

しかし同人誌を作成して癒して欲しいと頼まれても、道具が無いから絶対に無理よ。

「道具が無いから同人誌の作成は絶対に無理よ」

同人誌の作成依頼をあっさりと拒否した。

周囲の全員から落胆した視線を浴びせられた。


「フユミ様、あの召喚した同人作家少女の処遇は如何致しますか」

「そうですね。異世界の話は何かの役に立つかもしれないですから、私が後で尋問します。適当な部屋に軟禁しておきなさい」

「分かりました」

夏海はコスプレ少女の指示で軟禁されてしまった。


「あぁ、冬コミ行きたかったなぁ。原稿も未完成だったし、新作同人誌も読みたかった」

「どさどさどさ」

「痛い、痛い、あれ、これって未完成の原稿と道具じゃない。それと同人誌も有る」

未完成の原稿と道具と同人誌が降ってきた。

「これは冬コミの新作同人誌よね。超ラッキー」

冬コミの新作同人誌が全て揃っている。

歓喜して踊りまくった。

おっと、踊っている場合じゃない。

直ぐに未完成の原稿を仕上げよう。

夏海は執筆活動を再開した。


「何ですか。この惨状は」

コスプレ少女が部屋中に散乱している同人誌や道具を見て、とても驚愕している。

「コスプレ少女も新作同人誌を読む」

「私は同人誌研究会部長のフユミです」

コスプレ少女は同人誌研究会部長だったのね。

「フユミ部長も新作同人誌を読む」

「新作同人誌ですって、モチロン読みます。あれ、どうして新作同人誌が此処にが有るのです」

「私が新作同人誌を読みたいと思ったら、此処に降ってきたのよ」

「つまり貴女が召喚したという訳ですか」

「そうなるのかな」

「他に召喚出来る物は有りますか。例えば同人誌を印刷出来る魔道具とか」

「印刷機か。有れば便利よね」

「どかどかどか」

印刷機が降ってきて、危うく潰される処だった。

兎も角これで同人誌が作成出来る。

夏海とフユミは歓喜の余り踊り出した。

最初にラバン公爵家令嬢とシャド辺境伯家令嬢をモデルとしたガールズラブ同人誌を製本して、学園中にバラまいた。


「貴女がバラまいたのですか」

「違います。私はバラまいていません」

ロネヴィアから詰問されたので、モモカはバラまいていないと弁明した。

「・・・・分かりました。貴女を信じます」

取り敢えず信じてくれたみたいだ。


私達を揶揄するような視線で見つめる連中に殺気を込めて睨み返してやった。

揶揄した連中は殺気に怯えて、全員が腰を抜かして、挙句の果て失禁した。


調子に乗ったフユミと夏海は二番目にボーイズラブ同人誌を、三番目に婚約破棄同人誌をバラまいた。

流石に婚約破棄は不味かったらしく、大騒動になり、フユミと夏海は投獄された。

しかしガールズラブ、ボーイズラブ、婚約破棄が流行するようになっていた。


セカン以外の攻略対象者はピンクに誘惑されなかったが、セカンだけはゲームの強制力なのか、すっかり骨抜き状態になっていた。


「私はセカン殿下には付いていけない」

「俺も限界だ」

「僕も同感」

側近候補達はセカンを見限る事にした。

皇子としての責務を果たさない。

人に仕事を押し付ける。

女癖が悪すぎる。

色々な理由がある。

「話は聞かせてもらったよ」

「サド殿下」

「どうしてこんな酒場に居るんです」

「此処は皇族の御方が来る場所ではありません」

三人は不敬罪に問われると思い、顔色が真っ青になった。

「安心したまえ。不敬罪に問うなんて、野暮な事は言わないよ。それよりも提案があるんだ。君達、兄上の側近候補を辞めて、私の側近候補にならないか」

「「「なります」」」

三人は即答した。


「私はセカン殿下の専属侍女を辞める」

「私も辞める」

「私もセクハラに耐えられないから辞めるわ」

「私も同感よ」

セカンは彼女達にセクハラを繰り返していた。

「話は聞かせてもらいました‼️」

「「「「ファス殿下」」」」

彼女達は話を聞かれて、真っ青になった。

「安心しなさい。不敬罪には問いません。貴女達、愚弟の専属侍女を辞めて、野暮な私の専属侍女になりなさい」

「「「「なります、ファス殿下の専属侍女にして下さい」」」」

彼女達も即答した。


どうやら馬鹿皇子はロネヴィア様との婚約破棄を企ているようだ。

しかも冤罪を着せて、国外追放させようとしている。

すっかり同人誌に影響されたみたいだ。

三人の側近候補達からの情報なので、内容に間違いはない。

彼等はセカンを見限り、側近候補を辞めて、サド皇子の側近候補になっている。

専属侍女達も彼等に呼応して、セカンの専属侍女を辞めて、ファス皇女の専属侍女になっている。

最早セカンの回りにはピンクしか残っていない。

絶対に赦せない。

必ず断罪してやる。

モモカは完全に激怒していた。


「セカン殿下がロネヴィア様との婚約を破棄をしようとしています」

「モモカ、お前でも冗談を言うのだな」

「冗談ではありません」

「いくらセカンでもそんな愚行は犯さないだろう」

その事を皇帝に報告したのだが、全く信じなかったので、モモカは多少ムカついた。

「それならセカン殿下が婚約破棄をするか、しないか賭けをしませんか」

意趣返しとして賭けを持ち掛けた。

「賭けだと。面白い」

「賭けの報酬はセカン殿下の皇籍剥奪です」

「皇籍剥奪だと。それは駄目だ」

「陛下の報酬は精力剤と増毛剤一年分です」

「・・・・良かろう」

「それでは賭けは成立ですね」

皇帝はあっさりと了承してしまい、賭けは成立しだ。


「私はロネヴィアとの婚約を破棄する」

学園創立百五十周年記念パーティーでセカンが婚約者のロネヴィアとの婚約を破棄すると宣言した。

「理由は真実の愛に目覚めたからだ」

理由は真実の愛とかいう、馬鹿馬鹿しい内容だった。

「そしてピンクと新たに婚約を結ぶ」

そしてピンクと新たに婚約を結ぶという戯れ言を吐いた。

「セカン様、嬉しい」

セカンの隣に居た桃色髪の少女が歓喜に満ちた表情でセカンに抱き付いた。


あちゃ~、本当に婚約破棄しちゃたよ。

でも賭けは私の勝ちだな。

モモカは呆れると同時に歓喜した。


愚弟め、やらかしおったな。

ファス皇女は大きな溜め息を付いた。


ロネヴィア嬢との婚約を破棄するなんて、兄上は何を考えているんだ。

サド皇子は呆れてしまい、冷たい眼差しでセカンを見つめた。


「あの恥知らずな令嬢は誰なの」

「確かボツラ男爵家のピンク嬢だ」

「公爵家令嬢との婚約を破棄して男爵家令嬢と婚約するなんて、ご乱心なされたのかしら」

「皇子にあるまじき失態だな」

「これで皇太子は第二皇子のサド殿下に決定したな」

「それはどうかな。第一皇女のファス殿下かもしれないぞ」

「どちらにしてもラバン公爵家次第だな」

「おそらくラバン公爵家はセカン殿下を支持する派閥からは撤退するだろうしな」

「そもそもラバン公爵家が後ろ楯だったから皇太子レースに参加出来ていたのにな」

「我々もセカン殿下を支持する派閥からは抜けよう」

「泥舟なんかに乗っていられない」

周囲の反応は冷やかだったが、自分達に酔いしれる二人は気付かなかった。



「ロネヴィア、お前はピンクに数々の嫌がらせをしただろう」

更にロネヴィアがピンクに嫌がらせをしたと戯れ言を吐いた。

「私は嫌がらせなど行っておりません。そもそもボツラ男爵家令嬢とは初対面です」

「デタラメを言うな」

「嘘です。素直に罪を認めて下さい」

ロネヴィアが否定しても、セカンとピンクは聞く耳を持たなかった。


「セカン殿下、発言をお許し下さい」

「モモカ様」

「モモカ嬢か。良かろう。発言を許す」

唐突にモモカが発言を求めてきたので、セカンは取り敢えず発言を許可した。

シャド辺境伯家は皇帝のお気に入りだったからだ。

「ありがとうございます。さてとボツラ男爵家令嬢にお尋ねします。ロネヴィア様に嫌がらせを潰そうされたのは、いつ頃からですか」

「二ヶ月くらい前からです」

「二ヶ月くらい前ですか。間違いありませんか」

「はい、間違いありません」

「変ですね。二ヶ月くらい前ならロネヴィア様に嫌がらせは出来ません。何故ならロネヴィア様は三ヶ月前から隣国に留学していて、十七日前に帰国されたばかりです」

「「・・・・」」

モモカの指摘により冤罪を仕掛けようとしたのがバレてしまい、二人は真っ青になってしまった。

馬鹿二人はロネヴィアが留学していたのを知らなかったのだ。


「モモカ様、ありがとうございます」

密かに思いを寄せていたモモカに冤罪を晴らしてもらい、感謝の言葉を述べた。

実はロネヴィアは同性愛者だった。



「そこまでだ」

威厳に満ちた声が会場に響き渡った。

「「陛下」」

「父上」

「・・・・」

モモカとロネヴィアは直ぐに臣下の礼を取ったが、セカンとピンクは呆けたままだった。


四人は皇帝の執務室に呼ばれ、詳しい事情を説明した。

セカンがロネヴィアとの婚約の意味を理解していなかったとはな。

皇帝は事情を聞いて、セカンを完全に見限る決心をした。

「分かった。セカンとロネヴィアとの婚約破棄とボツラ男爵家令嬢との婚約を認めよう。但しセカンの皇籍を剥奪して、ボツラ男爵家に婿入りとする」

皇帝が婚約破棄の承諾とセカンの皇籍剥奪を宣言した。

「父上、何を言っているのです」

「黙れ。反論は認めぬ。セカン、お前には失望した。セカンとボツラ男爵家令嬢は直ちに退出せよ」

セカンが文句を言い出したが、皇帝は撤回しなかった。

「父上、ご再考下さい」

「皇籍剥奪なんてセカン様が可哀想です」

「もう決定した事だ。衛兵、セカンとボツラ男爵家令嬢を退出させよ」

セカンとピンクが再考を願い出たが、皇帝はあっさりと却下した。


セカンとピンクが退出後に人払いをしてから、ロネヴィアの今後についての話し合いとなった。


「陛下、約束を守ってくれて、ありがとうございます」

「分かっておる。あんな約束するのではなかった」

「あんな約束?」

「実は」


「その約束は何なのですか。冗談にも程があります」

ロネヴィアが約束の内容を知って、物凄く激昂してしまった。

約束の内容はセカンが婚約破棄という愚行を犯すかという賭けの話だった。

どうやら皇帝が婚約破棄をしない方に、モモカが婚約破棄する方に賭けたらしい。

しかも賭けの報酬が精力剤と増毛剤一年分だという。

「本当に済まん。ついコイツの口車に乗せられてしまったのだ」

「陛下、それでは私一人が悪いみたいじゃないですか。陛下だってノリノリだった癖に」

「ずいぶん仲が良いみたいですけど、お二人の関係は何なのですか」

「陛下、打ち明けても良いですか」

「まぁ、ロネヴィアなら構わん」

「実は私は皇家の影なんです」

モモカが皇家の影だという秘密も打ち明けられた。

尋ねなければ良かった。

ロネヴィアは好奇心で尋ねた事を心の底から後悔した。


「婚約破棄の賠償としてモモカ様には私の専属侍女になってもらいます」

「コイツは物凄く腹黒だが、それでも良いのか」

「物凄く腹黒は余計です」

「もちろん構いません」

「分かりました。ロネヴィア様の専属侍女になります」

モモカ様をゲットした。

必ず私に惚れさせてみせます。

ロネヴィアは一見冷たい表情だが、内心は歓喜していた。

こうしてモモカはロネヴィアの専属侍女となった。


「な、何をするのですか」

「貴女は私の専属侍女なのですから、身も心も私の物です」

実はロネヴィアは肉食系だった。

何故か抵抗出来なくて、モモカはロネヴィアに初めてを奪われてしまった。

「モモカ、愛しています」

「私もです。ロネヴィア様、愛しています」

ロネヴィアの絶技によって、モモカは完全に墜ちてしまった。


「モモカ、初体験おめでとう」

「何で知ってるのよ」

「覗くていたからよ」

「この覗き魔、変態、ストーカー」

隠密のスキルを有していたのが発覚して、皇家の影に勧誘されて、モモカの同僚になっていたベニカに昨夜の情事を覗かれていたのを知って、モモカは物凄く激昂した。



「セカン殿下の皇籍剥奪は重すぎます」

「男爵家への婿入りもです」

「・・・・」

皇帝はセカンを支持していた貴族達の抗議に悩まされていた。


「セカンの処罰についてファスとサドの意見を聞かせてくれ」

皇帝が仕方なくファスとサドにセカンの処罰についての意見を求めた。

「皇位継承権の順位を下げるのはどうですか」

「永久幽閉はどうですか」

「分かった。ファスの意見を参考にさせてもらう」

ファスの意見に賛同したみたいだ。

サドが第一位、ファスが第二位、セカンが第三位になった。


「何で私が皇位継承権の順位を下げられなければならないんだ」

セカンは納得出来ず、物凄く激昂していた。


「セカン殿下が皇位継承権の順位を下げられた」

「サド殿下が皇位継承権の第一位になった」

結局セカンは皇籍剥奪とはならず、皇位継承権の順位を下げられただけだった。

ボツラ男爵家は公爵家令嬢に対する不敬の処罰として貴族籍を剥奪されて、平民に格下げされた。

「この大馬鹿者。お前とは絶縁する」

ピンクはボツラ元男爵から激しく叱責されて、絶縁されてしまった。

セカンの皇位継承権の話題で社交界は盛り上がっていた。


「陛下、約束を破りましたね」

「済まん。セカンを支持していた貴族達の猛反発を受けてしまい、撤回せざる得なかったのだ」

「この貸しは大きいですよ」


「モモカ嬢を私の専属侍女にしようと思っていたのにな」

サドもモモカを専属侍女にしようとしていたのに、ロネヴィアに先手を取られてしまい、心の底から悔しがった。


「モモカは妾も狙っておったのに、ロネヴィアに先を越されたしまった」

ロネヴィアに先を越されてしまい、ファスは地団駄を踏んだ。

実はファスも同性愛者だったのだ。


「ロネヴィア嬢とモモカ嬢だ」

ロネヴィアは夜会にモモカをエスコートして出席した。

ロネヴィアは男装で、モモカはドレス姿だ。


「モモカ、私と踊って頂けますか」

「喜んで」

そしてファーストダンスを踊った。


「二人供、久し振りだな」

「女性同士でファーストダンスなんて随分と良い御身分ですね」

「「セカン殿下、ピンク様」」

顔見知りの貴族子息、令嬢達と談笑していると、セカンとピンクに声を掛けられた。

「私が皇位継承権の順位を下げられたのは全てお前達のせいだ」

「そうです。責任を取って下さい」

いきなり文句を言ってきた。

貴方達の自業自得だろうが。


「愚弟、何を騒いでおる」

「兄上、何をしているのですか」

「姉上とサドには関係無い」

「愚弟の分際で生意気な」

「私は皇位継承権の第一位。兄上は第三位ですよ。言葉には注意して下さい。そして騒ぎを起こすような不埒者は直ちに退出してもらえませんか」

どう対処しようか悩んでいたら、ファス殿下とサド殿下が助けてくれた。

「「・・・・」」

セカンとピンクは無言で足早に退出した。

「ファス殿下、サド殿下、ありがとうございます」

「ありがとうございます。助かりました」

「二人供、礼には及ばん。愚弟には良い薬だ」

「それにしても兄上は相変わらずだな。少しも反省していないようだ」

ファスとサドの態度は好意的だが、二人を見つめる視線は嫉妬を帯びていた。


モモカとロネヴィアの同性愛は前途多難なようだった。


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