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閑話 ポーラの休日

酒場の店員に先約が終わったらすぐに依頼を受けに行くことを伝えた後、俺は宿に帰った。



さて、宿に着いたはいいがポーラがまだ帰ってこない。


明日は装備のために依頼を受けに行くことを報告したいんだけど。



彼女は一体どこで何をしているんだろうか。


それは陸歩りくほと別れた時に遡る。


〇〇〇〇〇〇


「はぁ…はぁ…はぁ…!」


どうも。私はポーラです。


私は今、ここへ来たからずっと行ってみたかった場所に、全力で向かっています。


それは何か気になるでしょう。

私も気になります。


しかし、まさかこの街に『アレ』があるとは。



━━━━実は私、前の仕事をしている時、たまに下界(人間界)を見ていたんですね。


そこにはもう、色んなものがありまして。


人間も面白いことするな〜くらいに思っていました。


そんなある日、私がいつものように下界を見ているとやたらと人が多い場所を見つけたんです。


なんだろう。と思った私は、お忍びで下界に降りてみました。


そして、多くの人々が入っていく大きくてカラフルな建物の中に入ってみました。


入口を抜けると、大きな音がそこらじゅうから聞こえ、私は驚いてしまいました。


しかし、後から入ってくる人たちはそれが

当たり前かのように、次々と中へ進んでいくのです。


とりあえず、前を歩いていた男性に付いていくことにしました。


その人は、音のなる機械の前でしばらく上の方にある数字を見てまた歩き出していきました。


すると、また同じことをしたかと思えば、椅子に座ってお金を取り出したのです。

そして、そのお金が機械に吸い込まれると男性は機械の方を凝視して動かなくなりました。


「なるほど…。」


その動きを見ていた私はとにかく同じことをしてみようと、近くの空いている椅子に座りました。


「……えっと、確かここにお金を入れて…。」


右手にお札を生成させ、機械に与えます。


しかし、何も起こりませんでした。


あれ?なんで?さっきの人の真似をしたのに!

とあたふたしてしまいました。


「……あの、ここのボタンを押したら玉が出てきますよ。」


と、急に隣から声がかけられました。


「そしたら、ここのレバーを軽く右に回してみてください。後は待機するだけですよ。」


「あ、ありがとうございます。

へへ…私初めてなものでして……。」


「あー。ですよね。


……ここに来るような雰囲気では……」


若い男性は、私を見て何やらぶつぶつ言っているようでしたが、いきなり画面に変化があったことで私の意識はそっちに向かっていました。


画面ではアニメーションが流れ、ルーレットのように数字3つが回っています。

時々、同じ数字が2つ揃って最後の1つがなかなか揃わない。という状況が続きました。


正直、何が面白いのだろう。と思うようになりました。


確かに、アニメーションはよく作り込まれていて最初の内は良かったのです。

しかし、同じような展開が長い時間続き退屈になって来ました。


すると、プチュンッ!!という音と共に画面が暗転したのです。

初めての演出に、私はとても気持ちが昂りました。


画面では、この台の主人公のような人と、見るからに悪役みたいな人が戦っているようです。

そのバトルはなかなかに接戦で、私でも面白いと思えました。


しかし、戦いが続いていくと主人公が押され始めてしまいます。

私は心の中で頑張れ!頑張れ!と応援していました。


すると、応援が聞いたのでしょうか。


やたらと聞き心地の良い音が鳴り、画面の文字が虹色に光り始めたのです。

徐々に形勢を逆転し始め、必殺技を放とうとしたその時、押せ!!とデカデカと文字が表示されました。


私は前にあったボタンを手のひらで思いっきり押したのです。



次の瞬間、私の中で、何かが活性化し始めました。

視覚が様々な色で埋め尽くされ、機械に連動してキャラクターたちが動き回ります。


聴覚が高い音を私の中に響かせて、聴くだけで何故か気持ちが昂ってきます。


顔に風が吹き付けられ、まるで物語の中に入ったような感覚になります。



なんというか、すごく、気持ちいい……。


「━━━さん!お姉さん!レバー!レバーを右に回してください!!」


「…………へっ?」


どのくらい呆然としていたのでしょうか。


隣の男性が声をかけてくれました。


「お姉さん!当たったんですよ!右打ちしてください!右打ち!」


「右打ち??」


「そう!

その右手のレバーをもっと右に回すんです!」


「わ、わかりましたっ━━━━」




━━━ふふ。


あれからすっかりハマってしまった私は(人間界のお金はすぐに生成できるので金目当てではない)暇な時間があれば、お忍びで通っていたのです、、。



ここの台はどんな感じなのでしょうか。

ちゃんと模倣されているのでしょうか。


いえ、これは野暮ですね。


台を愛す者に、半端者はいませんから。


あぁ。早く…打ちたいっ!!

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