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第17話 休息③

「…イッテェ……。ここミミズ腫れできてんじゃん……。」


左腿裏にジンジンと走る痛みを感じつつ、俺はオトと別れた。


流石にボロボロの居合着をずっと身に付けてるのもアレだっため、動きやすいカジュアルな服を購入した。


「…うんうん。なんかOFFって感じするわ。」


ついでに街を見て回ろうと、それなりに人が多い場所を歩く。


それにしても、この刀はどうなってやがる。

人のことをガンガン叩きやがって。

そんなところも好き!


現実世界からの相棒を嫌いになんてなれるはずがない。

なんならいつも添い寝してるレベル。


たまにそんな俺に応えるように柄(刀の握る部分)で擦り寄ってくれる気がするがゴリゴリして痛いし可愛いのでやめないでほしい。


「……おい。お前。」


俺が愛刀のことで思い耽っているとこりに、

背後から声をかけられる。


一体なんだろうか。この刀はやらんぞ。


「…お前って俺のことか?


なんのようだよ。」


「お前の腰につけてるもん、高く売れそうだな。よこせよ。」


「だからやらねえって言ってんだろ!?」


あ、言ってないはないか。


それにしてもよくこんな街のど真ん中でこういうことするよな。この世界の奴らにとっては当たり前なのか?


「へっ。すぐに渡さなかったことを後悔するんだな。」


すると突如、周囲の人物が怪しい動きを見せた。


……ほう。一般人かと思ってたがどうやらグルだったみたいだな。


男たちは剣の切先をこちらに向けて、気持ち悪い笑みを浮かべている。


ふふっ。こいつらは俺のことを舐めてるようだな。

俺は凶悪なモンスターたちと戦って、生還した男だぞ?こんな奴らに殺されるわけがない…。


ああ…こいつらの悔しがる姿が目に浮かぶ…。


そして俺は腰の刀に手をかけて━━━



全力で逃げ出した。


「?!

お、おい待て━━━


嘘だろ……速すぎる…。」


自分でも驚くくらい、体が軽かった。


いやいや、あんな大勢に1人で勝てるわけない。

だってみんな強そうだったもん。

なんか感じたもん。強者のオーラみたいなの。


そうなったらもう逃げるが勝ちだよマジで。


ものすごい速さで移りゆく街の景色を尻目に、俺はそう思った。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


……あー。めちゃくちゃ暇だー……。


あの後、俺は街を散策してみたがこれと言って興味を引くものが無かった。


武器を見に行くと我が愛刀にしばかれるし、服はオトに頼んであるし特に腹も減ってない。


まぁ、元から色んな物に興味を持つことが無かったし、この世界も『日本』の生活によく似ていて新鮮味もない。


ならモンスターでも狩りに行くか?

いや、今日は戦闘をしたくない。

体が休養を欲している……。


「……宿に帰るか……。」


結局何をするでもなく、宿に足を向けた。


と、そこで俺の頭にあることが浮かぶ。


…待てよ?ここが日本の生活を参考にしてるってことは、『銭湯』もあるんじゃないか?


元いた世界であまり行くことのなかったので、すぐに思い浮かばなかったがこの世界の銭湯はどうなっているのか、無性に気になる…!


「うっし。まだ昼前だし客もそこまで多くないだろう。」


俺は踵を返し、銭湯探しを始めるのだった。


━━━行き交う人々に話を聞いて、それっぽい建物前に着いた。


この世界の人々も銭湯、温泉が好きなようで尋ねるたびにテンションの高い返事が返ってきた。


肝心の建物は正直そこまで大きくなく、あまり目立った印象もないが穴場みたいで俺は好きだ。


ウキルン♪な気持ちで中へ入れば、懐かしさを感じさせる雰囲気が漂っている。これぞ銭湯といった感じだ。


受付を済ませ、少し歩いたところにある脱衣所で風呂に入る準備をする。そして、あっという間に俺の身を包むものがタオル一枚の状態になった。周囲に人はいないが、やはり人前で恥部を晒すのは恥ずかしいのだ。湯船にはつけないから許して……。


スライド式の扉を開くと、むわっとした空気が俺を迎え入れ、湯気で視界が若干朧げになる。

中にはズラーっとシャワーヘッドが並んでいて、等間隔でシャンプーやらボディーソープやらが配置されていた。


何も持ってこなくても(タオルは別料金が必要になるが)風呂に入れるというのはとても良いサービスだと思う。感動したっ!


しかも、中には誰もおらず実質貸切と言っても過言ではない。

まぁ、流石にまだ風呂に入る時間じゃないよな。


早速シャワーで体と頭を洗い、汚れを落としていく。


一応、森の中で見つけた水辺で汗を流したことはあったが、暖かいお湯で汗を流すのはやはり気持ちの良さが段違いだった。


念入りに頭、胸、腹、背中、尻、○〇〇、足

を洗い、ついに湯船に浸かる。


足先からお湯に入り、結構熱かったのでしばらく半身浴をする。

体内の血液が温まってきたのを感じとり、そのままゆっくりと肩まで入った。


「……ふぁぁぁ……。」


体中を包むその温もりに、思わず気の抜けた声が漏れ出る。まるでこれまでの疲れが体の穴という穴から抜けていくような感覚。

頭の中は幸福感でいっぱいだった。

もうここにずっと居てもいい・・・。


そんな感じでしばらくそのまま湯船に浸かっていると、湯気でよく見えないが、新しい客が入ってきた。


「…おぉ。俺と同類がいたか。」


そのことに僅かな喜びを感じ、ここは銭湯のついての話をしようかな。と感じるほどだ。

まさにセントークだな。ははっ!


そうしていると、その人は体を洗い終えたようでこちらへひたひたと歩いてくる。

そして湯船に足を突っ込んだ。


「……アチチ…!」


うんうん。結構熱いよね。すごくわかる。だから足先から慣らしていくんだよな。


この人が入れるように位置をずらす。


やがて、温度に慣れたのか開けたスペースに入ってきた。




さてさて・・俺の銭湯仲間はどんな顔しているんだろう。

湯船に入ってきた男の顔をじっと見つめる。


そして、、、


「あっ!!」


「君は!!」


二人の声が重なった。


・・・・えっと、、、こいつ、誰だっけ・・・。








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