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第16話 休息②

良い感じの衣服が見つからず、肩を落とす。


あれからもしばらく探しはしたのだが、

動きやすい居合着。というのはやはり難しいらしい。


仕方ない。時間はまだあるし、もう少し別な服屋を探して、それでもなかったら適当な服にしよう。


そう考え、店を出ようとした時、背後からやけに可愛らしい声が響いてきた。


「ちょ、ちょっとそこのお腰に刀を携えている方!!」


周りに俺以外の武士みたいな奴はいないので、必然的に俺に用があるようだが、一体なんだろうか。


「あのあの!あなたって……もしかしなくても

『ニッポン』っていう国からきた人ですよね?!」


そう声をかけてきたのは、頭に小さな獣耳

を付けている150くらいの背丈の少女が俺の目をキラキラとした目で見つめていた。


「……え、えと……そうだけど、何か用かな?」


非常に可愛い容姿に一瞬グラッときたが、なんとかそれを悟らせないように優しく問いかける。余談だが、俺は猫や犬といった動物が大好きなのだ。マジで可愛い。今すぐにでも頭を撫でくりまわしてめちゃくちゃに愛でてやりたい。

犯罪になりそうだからやらないけど。


しかし、獣人にしては顔が人間過ぎるような……?まぁ気のせいか。


「は、はい!

…えと、ちょっと長くなるかもしれないので

時間さえ良ければこちらで話しませんか…?」


「……っ!」


……だめだっ!!俺の方が身長が高いから上目遣いをされている気分になる!!それに

「お願い♡」みたいな甘えた声を出されたら断れるわけがないっ!


「……も、もちろんいいよ!」


ナデタイ…ナデタイ…。と頭の中で回っている思考を理性で抑えながら、なんとか了承することができた。


すると少女はパァッ!と笑顔を見せて、こっちです!と俺の手を取り、奥の方へと導いてくれる。


あぁ。この世界に来て、ようやく本当の意味で癒された……。だって、今まで登場した女でマシなのってヨナくらいなもんだ。

この子も小さな少女だし、ポーラも見習えばいいのに。


「……っ!!イッタ!!」

瞬間、左の腿裏に激痛が走った。


また模造刀が勝手に動き、俺の足を強打したらしい。

マジで痛いからやめて欲しい……。


痛がる俺を心配する表情を見せた少女に、大丈夫だよ。とニコりと笑ってみせるともう一度しばかれた。



〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


「……改めまして、お時間をくださり、ありがとうございます。


私は当店店長の娘、オト=フィルチャームです。


えと、獣人種と普通人種のハーフ?らしいです。

一応、ここで両親が留守の間、装備や衣服類を制作してます。」


場所は広めの個室に移り、そこでオトという

少女はペコリと挨拶をした。


「初めまして。

俺は尾ノ上陸歩。武器はこの切れない模造刀だ。


……ところで、用って言うのは…?」


「はい!


実は私、『ニッポン』と呼ばれる国に憧れを持っているんです!」


ほぉ。憧れとな。


「この街には昔から、ニッポンから訪れる方がたくさんいるのは知ってますよね?


そして私はその中の人からニッポンはどんな国か、どんな人が住んでいるのか。教えてもらったことがあるんです。


あの方の話はとても興味深く、私の探究心を刺激しました。そのニッポンでよく見られる服を作ったりしました。」


なるほど。だからこの店には日本でしか見たことがないような派手な服とかがちらほらあったわけか。

話を聞いて色々と合点がいった。


「その中でも、私は『侍』に興味を持ちました。

片刃の、刀と呼ばれる剣とは違う武器を腰につけ、時には一振りで敵を倒し、時には同じ武器同士で凄まじい戦いを繰り広げるという侍に……。」


……。

やたら過大評価されているような気がするが、確かに昔の人たちならそういうことも日常茶飯事だっただろうな。


「そこで私は決めたんです!その侍らしき人がここを訪れたならば!その侍が身につける物を創ってみたい!と。」


オトは握り拳を作り、胸の前でむんっ!としている。やる気に満ち溢れているようだ。


さらに、俺としてもその話は非常にありがたい。

むしろこちらがお願いしたいくらいだ。


「逆にいいのか……?俺ちょうど装備を整えたいと思っていたんだ。」


「ほんとですか!?良かったです!


では、私の質問にいくつか答えていただいていいですか?」


「わかった。」


いやー。まさかこんな形で装備を手に入れることができるとは。しかもこの子が俺だけに作るオーダーメイド。これより嬉しいことは

そうそうないだろう。


「えと、それじゃ質問していきますね。」


俺はオトの細かい質問に、自分の理想をぶつけるように答えていった。


素材へのこだわりや、動きやすさ、防御力など、

その他にもたくさん聞いてくる。

オトも初めての侍装備を失敗で終わらせたくないのだろう。俺の答えをしっかりとメモして、またそこから派生した質問を投げかけてきた。


やがてオトは満足したのか、メモを見ながら

ぶつぶつと独り言を言い始めた。


ふふ。俺だけの居合着、か。

想像するだけでワクワクする。あぁ。完成が楽しみだ。


「・・・よし。


えと、陸歩さん。ありがとうございました。


また後日、制作のための素材集めを依頼するので明日またここへ来てください。」


ん?……あぁ、そうか。たしかに自分の装備を作るには自分で素材とかを集めるのが異世界とかの常識だったな。


いいじゃん。それっぽくて。


「わかった。

じゃ、また明日昼ぐらいにここへ来るよ。」


「はい!お待ちしています!」


……あー……。そんな天使みたいな笑顔見せないでくれ……。


……持ち帰りたくなっちゃうだろ??


この後、尋常ではない痛みがまだ痛みの引かない左腿裏に襲いかかることを俺はまだ知らない。



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