第14話 感謝されること
お久しぶりです。
俺たちは、以前少女に出会った場所へ来ていた。
すると、全く同じ場所で、全く同じことをしている少女を見つけた。
少女が無視を続けられ、シュンとしている姿に悲しさを感じ、すぐに話しかけにいった。
「久しぶり。ほら、これ。ちゃんと持って来たよ。」
言って、モゴイタケを3本手渡す。あまりの1本は俺のだ。
すると少女は俺とポーラの顔を見て
急にぶわっと涙を流し始めた。
それを見たポーラがあわあわと慌てながら
「うぇ?あの、大丈夫ですか?陸歩さんが何かしましたか?
1発殴っても大丈夫ですよ!?」
「おい!お前何言ってんだ!
・・・大丈夫か?どうしたんだよ急に。」
いきなりだったもので、俺も少し慌ててしまったが少女は泣きながらもゆっくり答えてくれた。
「だってぇ、、、本当にっ、持って来てくれるとは思ってなかったからぁ、、、。
怖いモンスターに、、、私のせいでっ、、殺されちゃったかと思ったからぁ、、、。
うっ、、。良かったよぉ、、、。」
……何故、少女は俺たちがそのモンスターと闘ったことを知っているのだろうか。
・・・もしかしたら、この子はモゴイタケを獲るためにコンガルムを倒さないといけないことを知っていたのではないだろうか。
確かに少女が言っていた通り、モゴイタケがあったのは山の奥にある、コンガルムの巣の中だったし。
依頼を断る人が多かったのも、危険の割に報酬が少なかったからだろうな。
「・・・君は優しい子だな。赤の他人の俺たちのために、涙を流してくれるなんて。
確かに俺たちは死にかけたかもしれない。
だけど、それは君のせいじゃない。
依頼を受けると決めたのは俺たちだし、ちゃんと生きて君の前に立ってる。
だから、君はありがとうと言って笑顔を見せてくれたら俺たちも嬉しいな。」
俺は少女の目線まで腰を下げ、そう言った。
「……ゔん。……ばやぐ…なきやむ…。」
そして少女はぐしぐしと溢れる涙を拭って、精一杯涙を堪えようとしていた。
俺はその少女の行動に、自然と笑みが溢れた。
「・・・なんだか陸歩さんが児童性愛者になった気がします。」
「おいうるせぇぞ。口を慎め。」
〇〇〇〇〇〇
泣き止んだ少女は自分を『ヨナ』と名乗り、俺たちをある一軒家まで連れてきてくれた。
そうなった経緯は、単にモゴイタケを何に使うか気にり、着いて行っていいかと聞いただけだ。
こんなに小さなヨナが、依頼を出すほどに必要なモゴイタケを。
ヨナはその家に着くやいなや、
「━━ただいま!ねぇこれ見て!」
と家の中の誰かに向かって、依頼品を見せているようだった。
「おぉ!これは……!」
続いて、若干年老いた感じの声が聞こえてくる。
「ヨナ。一体これをどこで……?」
お。そろそろ俺たちも顔を出した方がいいかな?
そう思い、ヨナの後ろから顔を見せる。
「……あ!
そう!このお兄ちゃんたちが取ってきてくれたの!」
「おぉ…あなた方が……。」
ヨナの前に座る男は、おじいちゃんだろうか。
しわの深い顔の中に、驚いたような表情を見せている。
「……しかし、一体どうしてこのモゴイタケを…?」
「あ、それはこの子が━━━」
問いに対してポーラが答えようとしたが俺はそれを遮った。
「━━いえ、ちょうど余っていたので提供したまでです。
そちらのお嬢さんが必要だと言っていたので。」
「え?ちょ、どうして嘘を━━」
「━━多分、この人はヨナが依頼を出していたことを知らないんだよ。
もしヨナが依頼を出したと知れば、ヨナが怒られちゃうだろ?」
このおじいさんがモゴイタケの入手法を知っているなら尚更だ。
「そうか・・・!なるほどです・・!」
ポーラもなんとか理解したようだ。
「ああ、そうでしたか・・・。それは、、なんとお礼を言ったら良いか・・・。」
「いえいえ。
・・・ところで、このモゴイタケは一体何に・・?」
そこで俺は単純に気になっていたことを聞いてみた。
「はい。それでしたら、こちらへ来てください。」
老人はそう言うと、隣の部屋へ入って行った。
ヨナがそれに着いていくのを見て、俺たちも家に上がらせて貰った。
なんというか、苦労してるんだろうな。というイメージが湧いた。
部屋に入り、1番目立っていたのは中央に置かれた大きなベッドだった。
そこには女性が横になっており、まるで死んでいるかのように眠っていた。
「・・・この子は、私の娘でヨナの母です。」
「……一体、何があったんですか?」
この部屋の空気から、この女性が何かによって寝たきりになっていることは容易に予想がついた。
「……話せば長くなりますが━━━」
そこから、おじいさんはこうなった経緯を話してくれた。
まとめるとこんな感じだ。
この家には、老人、ヨナ、ベッドに眠る女性、その夫の4人で暮らしていた。
夫は商人で、決して仲も悪くなく良い関係を築いていた。
しかし、ある日突然夫が暴れ出し、所持していた刃物で女性を切りつけた。
決して大きな怪我はなく、刃物が掠った程度なのだが、女性は動かなくなってしまった。
夫はそのままどこかへ消えてしまい、行方はわからない。
元々ポーション作成をしていたおじいさんは、慌てて女性の手当てを試みた。
すると、女性の中に特殊な毒が生成されているのがわかった。
幸い、その毒の生成速度は非常に遅いのだが、長く続くと危険らしい。
そして、その生成を止めるためにモゴイタケが必要なのだ。
「……モゴイタケはそう簡単に手に入るものじゃありません。
なんとか、娘を助けようとモゴイタケ以外の方法を試してきましたが効果はあまりありませんでした。
しかし、あなた方が提供してくださったおかげでなんとかすることができそうです。
本当に…ありがとうございます。」
おじいさんが深々とアタマを下げた。
……コンガルムは俺たちが倒したわけじゃないんだけどね。
と思いつつ、ここまで感謝されるとこちらとしても嬉しくなるものだ。
「……やっぱり、感謝されるっていいですね…!」
ポーラが小声で言ってくる。
本当に、その通りだ。
「大したことはできませんが、、どうかお礼をさせていただけませんか。」
「いえ、今はこの方の回復に努めてください。お礼はいりません。」
さっき10万マネ貰ったからな。
おじいさんはそうですか……。と若干肩を落としていたが、気にしないことにする。
「……ところで、コンガルムの死体はしっかりと回収しましたかな?」
「ああ、はい。なんとかここまで運んできて先程売ってきました。」
するとおじいさんは
「ほぉ!それでしたら、相当な金額になったのではないですか?!」
興奮気味に聞いてきた。
「え、えぇ。一応、10万マネで買い取ってもらいました。」
しかし、それを聞いたおじいさんの顔が一変、
「じ、10万マネですって?!
そ、そんなに少ないはずが……」
え。それは一体どういう……?
「コンガルムは、討伐命令が下されるほど危険なモンスターなんです。
ですので、500万は固いかと思ったんですが…。」
「はぁ?!それは聞き捨てならない!50倍じゃないか!!」
「……その、もしかしてこの街に来たのは初めてですか?
この街は他の場所に比べて、モンスターの売値が高いんです。
ですので、ここを初めて訪れたと知れば相場もわからないだろうとそれなりに高く、しかし相場よりはるかに安い値で買い取ろうとしているんです。」
………。
「ポーラ……。もしかしてさ……。
あの男に、ここに来たの初めてなんですけどーとか言った?」
「・・・・言いました。」
・・・スー。・・・・・・ヨシ。
「あいつどこだぁぁぁぁ!!!!
さがせぇぇぇぇぇ!!!!
クソ詐欺師がぁぁぁぁぁぁ!!!!」