第9.5話 植物の②
「・・・あなた、ひょっとして転生者?」
「え?」
急になんだ?
・・・まてよ?そういえば、ケルマが植物を操る転生者がいるって言っていたような・・・?
「その服、見たことがある気がする。しかも、前にいた世界で。
ねぇ。あなたは転生者でしょ。」
「・・・ああ。俺は日本から最近転生してきた、尾ノ上陸歩だ。」
「ふーん。そ。じゃあね。」
するといきなり、地面から現れた蕾が女性を飲み込み、姿を消した。
・・・んん?
あれ?終わり?何もないの?普通、転生者同士会ったらなんかあるでしょ?
てか、普通こっちが名乗ったらそっちも名乗るのがセオリーじゃないの?
「陸歩さーーん!大丈夫ですかーー??」
ポーラが走ってくる。
「あれ?縛られてない・・・?」
しかし、普通に立っている俺を見て不思議そうにしていた。
「さっきの奴、転生者だったわ。」
「え!ほんとですか?どこ?どこにいますか?!」
急に瞳を輝かせて周りを見渡すポーラ。
「なんかの蕾に飲み込まれたよ。」
「えぇーー?大丈夫なんですかそれ。」
「多分能力だから、大丈夫でしょ。」
うわー。マジかよー。一緒に来てくれたらめちゃくちゃ心強かったのに。
まぁ、男が嫌いならしょうがないか・・・。
〇〇〇〇〇〇〇〇
「心なしか、モンスターと出会いませんねぇ。」
ポーラが歩きながらそうつぶやく。道も大分登り坂になっている。
「ほんとにな。辺りも暗くなり始めてるのに。」
いつもなら、モンスターの唸り声があちこちで聞こえてくるような時間帯なのだが、今日はめっきり聞こえない。
・・もしかすると、あの植物の女性がモンスター狩りをしていたのかもな。
「あ、あそこからまた木が生えてますね。
それにしても、結構長い距離の木が消滅してますよ。」
ポーラが指した前方にはようやく緑が見えた。
俺の能力、思ったよりもやばいかも・・・。
「だが、モゴイタケ、見つからんなぁ。結構奥まできたと思うんだけど。」
そう、今俺たちは転生してきた場所よりも、さらに奥の方まで進んでいるのだ。それにも関わらず、モゴイタケどころか、キノコすらも生えていない。
「もうすぐ山頂に着きそうですけどね・・。」
「そうだなぁ、、。山頂着いたら一旦探索止めるか。」
正直、ヘトヘトだ。俺も、ポーラも。
思えば、今日だけで動きすぎだ。傾斜も大きくなってきたし。流石に休みたい。
ゆっくりと完全に日が落ち切る前に山頂に着きたい。そんな思いで歩みを進める。
そしてそのまま、俺たちは山頂に着いてしまった。何の成果もなく。
「くはぁー!もう動けない、、、。
疲れた、、。」
思わず、地面に尻をつき座り込んでしまう。そのまま、辺りを見回してみた。
山頂は結構広くて、大体半径20メートルはありそうだ。そこには木の一本も生えていない。
さらに、よく見てみるとあまりにも不自然な
くらい平面で、まるで大きな岩を横に真っ二つにしたようなイメージが湧いた。
「陸歩さん。せめてもう少し安全なところに
行きましょうよ。」
とポーラが言うが、正直どこも変わらないと
思う。だって丸見えだもん。反対側が。
そう俺が思ったことを察したのか
「違いますよ。見てください。ちょっとくだったところに洞窟みたいなのがあります。」
俺は立ち上がり、ポーラが示した場所を見てみると確かに洞窟があったが
「あれ、絶対モンスターの巣だろ。」
「・・・。」
いや、普通わかるでしょ。明らかに形が不自然だもん。
しかし、ポーラは諦めようとしない。
「き、きっと大丈夫ですよ。ちょっと入り口近くで休んでおけばバレませんって。」
その慢心が危険を生むんだぞ〜?
と思いつつも、歩き始めてしまったポーラを引き止める元気もない。
仕方なく付き合うことにした。
「思ったより、大きいな。」
離れたところから見るとよく分からなかったが、いざ目の前にしてみると入り口の高さは4メートルくらいあった。
「ここに住んでるモンスターって、大きいんですかね・・・・。」
「多分な。少なくとも、3メートルあってもおかしくないと思う。
ま、とりあえず入ってみよう。
留守だといいんだけど・・・。」
警戒しながら、洞窟の中に足を踏み入れる。
外はすっかり日が落ちてしまったので、洞窟内は真っ暗だ。
「うわぁ・・・・。暗いですぅ・・・・。」
ポーラは結構ビビっているのか、声が大分震えていた。
しかも、俺のただでさえボロボロの居合着を掴んでくる。
「お前がここなら大丈夫って言っただろ・・・。」
「うぅ・・だってぇ、、。」
しかしポーラはぐずっているが、俺は案外ホントに大丈夫なんじゃないかと思っている。
「いや、見た感じ、モンスターは留守のようだし
端にいれば大丈夫だろう。」
この洞窟、結構広いのだ。
大分目が慣れてきたから分かったことだが、
パッと目1DKくらいはありそう。
若干悪臭が漂っている気もするが、モンスターが帰宅しない限り安全ではないだろうか。
よし。今日はもうここで休もう。
「ポーラは早く寝た方がいいかもな。
もしモンスターが帰ってきてもお前だけは
バレずにやり過ごせるかもしれない。」
「え。だとしたら陸歩さんが危なくないですか?」
「あぁ。大丈夫大丈夫。いざとなったら逃げるから。」
「え?!私が起きた時、近くにいてくれないんですか?!
もし、ふぁぁ。って起きたらモンスターが近くにいたとき私どうすれば!?」
「多分大丈夫だよ。モンスターが近くにいてもお前起きないもん。」
過去の経験から、なぜかそこには自信がある。
こいつは起きない。絶対。
「多分って・・・。酷いですよ・・・。」
「安心しろって。いざとなればまた助けに行くから。
逃げるっていっても、入り口付近でずっと様子見とくからさ。」
どうにかポーラを説得し、了承を得たところでようやく体を休める。
モンスターよ。どうか、
頼むから帰ってこないで!