始まり
異世界ものに挑戦です。温かい目でお読みください。
つまらんかったらつまらんと、面白かったら面白いと正直な感想をください!
━━━ここはどこだろう。何もない真っ白な世界。周りを見渡せているのかが分からないくらい、視界に変化がない。
何故俺がこんなところにいるのか、いつからここにいるのか、それすらも思い出せない。唯一感じるのは、左手首の痛みだけ。
これから何が起こるのか、俺はどうなってしまうのか。
先の見えない不安に俺は押しつぶされそうになっていた。
しかし、時間が経つと案外冷静になるもので俺の中に一つの仮説ができた。それは
これは転生というやつでは?
というものだった。
思えば、これは俺が好きなライトノベルにありがちな光景だからだ。他に理由はない。
もし、この仮説が正しいならばもうすぐ神か天使か女神かなんかが俺にチート能力を与えて、転生先で無双をさせてくれるはず。
・・・しかし、いつまで経ってもその神以下略は現れなかった。
・・・・・・・もしかしてこれ、普通に死んだだけ?
いやいや、死んだかも分からないしそもそも死んでたら意識があるのおかしいし。
はぁ、ほんとに俺はこれからどうなるんだろ。
やっぱり不安でしょうがなかった。
〇〇〇〇〇〇
はぁ、、、、、、、、。なんっっっも起きない。
暇すぎる、、、。
もうすっかりこの状況に慣れてしまった。それこそ視界は真っ白、手は何に触れているのか分からない。匂いもない。味もない。何も聞こえない。
言わば5感が全く働いていない状況なのだ。
なのに意識ははっきりしてる。たちが悪いことこの上ない。
あーあ、暇だから思い出せることは思い出してみるか。
確か俺は、尾ノ上陸歩。高校2年生で剣道3段、居合道初段を持っていた。
俺に残ってる最後の記憶は、放課後に小学生の頃からお世話になってる剣道クラブの恩師に、居合道の指導をしてもらっていたはず━━━
━━駄目だ。どうしてもその先が思い出せない。
・・・また暇になったな・・・。どうしよ。何しようかな。手のシワの数でも数えようかな。1、2、3、死━━━━━
━━━11810。・・・流石に飽きたな。
もう無になろう。何も考えないようにしよう。考えるから駄目なんだ。よし、無、無、無━━━
━━━━━━━
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━━━━━━━
「・・・・・あのー。」
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「・・・すいません。だ、大丈夫ですか・・・?」
━━━━━━━
「ちょ、ちょっと!反応してくださいよ!ねぇ!死んじゃったんですか?!」
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「もう!怒りましたからね!?反応しないあなたが悪いんですからね?!いいんですね?!」
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「━━━!!もう!手のひらで頬をはたく!!」
バヂンッ!!!
いっっでぇぇぇぇ!!!!
「な、なにをする!!」
「だって!あなたが!目は開いてるのに、なにも反応しないから!!」
無の境地から脱出した俺の目の前に現れたのは、綺麗な羽衣のようなものを身に纏い、なんか神秘的な雰囲気を醸し出した美人な女性だった。
「ど、どうしたんですか?もしかして、引っ叩いたの怒ってます、、、?」
ぬぬぬ。ちょっと可愛いじゃないか。ここは紳士的な態度をとろう。
「いや、突然のことで驚いただけさ。・・・ところで、貴方は一体?」
「あ、怒ってないんですね?よかったです。」
ホッとしたような表情を見せ、その女性は佇まいを正した。
「改めまして、、私はディケイド様にお仕えする、ポーラ=オーラ=ノクタリカ=キリス=アウトと申します。よろしくお願いいたします。」
言ってポーラさんは頭を下げた。いや名前長!ポーラさんでいいや
「こりゃどうも、、、。それで、どうしてポーラさんは俺のところに?」
「え、えっと、そのことなんですが、単刀直入に申し上げますと、陸歩さん。あなたは先日、亡くなりました・・・。」
「え、、、?」
やっぱり俺、死んでたのか。
ということはこの人、俺を異世界へ転生させてくれるってことか、、、?!
やば、ちょっとワクワクしてきた。
でも待てよ?俺、なんで死んだんだ?
「それで、、死因なのですが、、その、、、。」
やたらと言い淀むポーラさん。
「なんですか?いってくださいよ。気になるじゃないですか。」
「・・・わ、わかりましたよ。言います!・・・あなたは、
居合道の納刀の際に左手首を切り、出血多量、それによるショックで亡くなりました!あ、切断ではないですよ?」
「・・・??
え?!いやいやいや、俺、手首が切れるほどの刀は持ってないですよ?!」
そうなのだ。俺がやっていたのは『抜刀道』ではなく、『居合道』なのだ。抜刀道では真剣を使用するが、居合道では全く切れ味のない、模造刀を使用するので手首を切るなんてことは無いはず。
「それがですね、、あの日はあなたの先生が真剣の重みを体感してほしい。と真剣を持参してらしたんです。
そこであなたは慎重に扱うようにと注意を受けたのにも関わらず、『俺、納刀得意だから!』とその動作に入ったとき、、、。思ったより重かったのと、いつもよりも刀身が長かったのでしょうね。こう、スパッ!と」
ええええ。なにそれだっさ!!納刀が得意だから??バカじゃん!真剣だって言われてたんだろ?もっと慎重にやれよ!俺かよ!
そう言われると、左手首が痛いのも納得がいった。
思いの外ダサい死に方に落ち込む俺だったが、過去のことはもうしょうがない。これからが大事だ。
「それで話の続きですが、なんと言いますか、おめでとうございます!と言っていいものか分かりませんが、あなたはディケイド様が着任されてから、記念すべき100万人目の死亡者です。
よって、あなたが望むなら第2の人生を歩むことが可能です。いわゆる、転生というやつですね。
ただ、元いた世界でこれを行うことは不可能です。
あなたの家族や関係者は、すでに葬式をすませており、今帰ると色々と面倒だからです。」
「しかし、転生するためには肉体がないといけないので、あなたが焼却炉へ入ったときに死体だけ拝借して、代わりにあなたのDNAを完璧にコピーした骨を置いてきました。ご家族には悪いですけど、しょうがないですよね?」
えー。すご。そんなことできるんだ。思ったよりしっかりしてる、、、。
「それで、、、どうしますか?転生したいですか?それとも、記憶を消去し違う人として生まれ変わりたいですか?」
ポーラさんは究極の二択を迫ってくる。
転生したい?生まれかわりたい?そんなの決まっているだろう。
「俺は・・・転生します!どうせなら、この体、この意識で異世界へ行きたいです!」
俺の言葉にポーラさんは美しい微笑みを見せて
「ふふふ。わかりました。では、これより転生の為の準備に入ります。しばらくお待ちくださいね。」
とポーラさんがなにかしている。
その間俺は暇だったので、色々質問してみることにした。
「そういえば、なにか特殊能力とか頂けるんですか?こう、打撃の威力が山破壊するレベルとか、指パッチンするだけで相手が木っ端微塵になるとか。」
「うーん。そうですね。それは転生先でわかるかと思います。どんな能力が付与されるかは私たちにもわからないので。」
ふーん。まだわかんないのか。でもいいや!
ついに異世界無双ができる!憧れだったんだよなー。誰も倒せない敵をフルボッコにする気持ちよさ、、、。
チート系主人公が羨ましかったんだよなぁ。俺もそれになれるんだなぁ。ぐふふふふふ。
俺はそれが聞けただけで満足したが、ポーラさんはいまだにガチャガチャしている。どうにも準備に時間がかかるようだ。でも心の広い俺はそんなことも許しちゃうぜ。
・・・ちょっと打ち解けてきた気もするし一つだけ文句でも言ってやるか。暇だし。
「あのー。転生させていただけるのはありがたいんですけどー。だったらもう少し早くいらっしゃっても良かったんじゃないですかねぇー?なんもないこの世界で長い時間待たせるなんてぇー。」
というと、何故かポーラさんはビクッ!!っと肩に力が入り、動きを止めた。
やべ、文句言わないほうが良かったか、、、?
「いや!でもー、色々準備とかあったんですよね?!だったらしょうがないかー。たははー。」
あわててフォローを入れた。
しかし、こちらをゆっくり振り返るポーラさんの顔は真っ赤になっており、、、。
あ、おわった、、、こりゃ転生できんわ。
少し前のことを後悔していると、、、
「しゅ、、、しゅみませんでしたぁ!!」
・・・・・・・え?
「あ、あのあの別に忘れたくて忘れたわけではなくてですね?ちょっと日本のアニメが面白くて熱中しすぎたといいますかその余韻に浸っていたらいつの間にかあなたがこの世界にきていて私すごく慌てて急いで来たんです!!」
そう言って地面に頭を打ちつけんばかりに頭を振り下ろした。
一息に言い切ったせいか、ひどく息切れしていた。
いや、そんなことよりもこいつなんて言った?
『忘れてた』ぁ??はぁ??異世界に転生という一大イベントを??
はは、ははは・・・・・。
はぁ、、、。笑えねぇなぁ・・・・。
「ひとまず、、わかりました。悪気がなかったことも理解しています。ですので、頭を上げてください。」
俺が言うとまるでパァァァァ!っと効果音がしそうなほどに安心したような顔でポーラさんが顔をあげてくれた。
・・・俺、許すとは言ってないけどね。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「━━さぁ!転生の準備ができました!陸歩さん!心の準備はいいですか?」
「えぇ。とっくに心構えはできていますよ。」
別の意味のもな。
「それは良かったです。では、転生の前にあなたへ特殊能力を与えましょう。」
ポーラさんはそんなことも知らずに、祈りを捧げるように手を重ね合わせ、よくわからん呪文を唱えた。次の瞬間俺を真っ白な光が包み込み、しばらくして消えた。
・・・。
特に感じるものはないな。あっちへ行ってから発現するのだろうか。
「では、あなたを送ります。どうか、あなたの第二の人生が幸福なものでありますように━━━」
今度は青白い光が俺を包み込む。
そして俺は視界が真っ青になる前に
ポーラさんの腕をガシッと掴んだ。
「・・・ふぇ・・・?」
ポーラさんの気の抜けたような声と共に、俺はついに異世界転生を果たした。
次回更新 未定