Die HACHIOUJI Stadtmusikanten
「弥太郎、わしを乗せては重くてかなわんじゃろう、この辺りで休みとせぬか?」
「爺さんくらいでへたばるほどあっしはやわなウサギじゃあありやせんぜ。しかしちょっと腹が減りやした、この空き地はちょうどいい塩梅に旨そうなクローバーが茂っていやすし、休みやしょう」
「うむ、くれぐれも空に注意しておくのじゃぞ。わしはここで見張りをしておく」
羊羹爺さんはぴょんと空き地に生えた桑の木の枝に止まり、辺りを隈なく警戒していた。しばらくすると、羊羹爺さんのひげがびくりと動き、慌てて弥太郎の頭に跳び乗った。
「済まぬ、弥太郎よこの爺不覚を取った、敵じゃ!」
「あら、敵とはご挨拶だねえ、アタシはそこの弥太郎の知り合いなのさ。ああは言ったけれどまたアンタに会えるとは、つくづく縁があるねえ」
静かに近寄ってきた姿は三毛猫の吹雪であった。
「吹雪姉さん!またお会いできて嬉しいでやす、このハムスター爺さんは羊羹爺さんてえ、あっしの連れでさあ。羊羹爺さん、この猫さんは吹雪さんと言うあっしがお世話になった命のご恩がある方でさあ。怖がることはありやせん。」
弥太郎が嬉しそうに羊羹に語りかけるが、当の爺さんはぶるぶると激しく震えていた。
「まああたしら猫とネズミとの間には深い因縁があるからね・・・怖がるなってのは無理なもんさ」
「ネズミではない!わしはハムスターじゃ!」
羊羹爺さんは震えながらもそこは譲らなかった。
「で、なんで弥太郎とハムスターの爺さんが連れ立っているんだい?」
吹雪はやれやれと横たわり前足を舐めながら問いかけた。
「吹雪姉さん、その鋭い爪のついた肉球を舐める仕草で爺さんの心の臓が止まっちまいそうでやす」
「あら、そうかい?別に意味はないんだけど、じゃあ止めとくよ」
「おかたじけ、あっしはあれから姉さんと別れて巣穴に潜んでいたんでやすが、蛇の奴に見つかっちまいやして、あえなく巣穴を放り出して爺さんと逃げ出したってわけでやす」
「なるほど、蛇の奴はしつこいからねえ、逃げて正解だと思うよ。でもそれでどこに行こうっていうんだい?」
「うむ、弥太郎にも話しそびれていたな。わしらは全てのペットが最後に行くことが出来る極楽を目指そうと思っているのじゃ」
「爺さん、極楽なんて本当にこの世にあるのかい?アタシは悪いけれど聞いた事もないよ」
「あっしもでさあ、そんなうまい話があるんですかい?」
羊羹爺さんは小さな胸を精一杯に張りながら二匹に語りかける。
「あるとも!八王子ペット霊園というところじゃ。わしの飼い主が動画サイトを見ているときに広告で知ったのじゃ」