表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八王子市の音楽隊  作者: 丸山 あゆむ
7/25

Die HACHIOUJI Stadtmusikanten

弥太郎やたろう、わしを乗せては重くてかなわんじゃろう、この辺りで休みとせぬか?」

「爺さんくらいでへたばるほどあっしはやわなウサギじゃあありやせんぜ。しかしちょっと腹が減りやした、この空き地はちょうどいい塩梅に旨そうなクローバーが茂っていやすし、休みやしょう」

「うむ、くれぐれも空に注意しておくのじゃぞ。わしはここで見張りをしておく」

羊羹ようかん爺さんはぴょんと空き地に生えた桑の木の枝に止まり、辺りを隈なく警戒していた。しばらくすると、羊羹ようかん爺さんのひげがびくりと動き、慌てて弥太郎やたろうの頭に跳び乗った。

「済まぬ、弥太郎やたろうよこの爺不覚を取った、敵じゃ!」


「あら、敵とはご挨拶だねえ、アタシはそこの弥太郎やたろうの知り合いなのさ。ああは言ったけれどまたアンタに会えるとは、つくづく縁があるねえ」

静かに近寄ってきた姿は三毛猫の吹雪ふぶきであった。

吹雪ふぶき姉さん!またお会いできて嬉しいでやす、このハムスター爺さんは羊羹ようかん爺さんてえ、あっしの連れでさあ。羊羹ようかん爺さん、この猫さんは吹雪ふぶきさんと言うあっしがお世話になった命のご恩がある方でさあ。怖がることはありやせん。」

弥太郎やたろうが嬉しそうに羊羹ようかんに語りかけるが、当の爺さんはぶるぶると激しく震えていた。

「まああたしら猫とネズミとの間には深い因縁があるからね・・・怖がるなってのは無理なもんさ」

「ネズミではない!わしはハムスターじゃ!」

羊羹ようかん爺さんは震えながらもそこは譲らなかった。


「で、なんで弥太郎やたろうとハムスターの爺さんが連れ立っているんだい?」

吹雪ふぶきはやれやれと横たわり前足を舐めながら問いかけた。

「吹雪姉さん、その鋭い爪のついた肉球を舐める仕草で爺さんの心の臓が止まっちまいそうでやす」

「あら、そうかい?別に意味はないんだけど、じゃあ止めとくよ」

「おかたじけ、あっしはあれから姉さんと別れて巣穴に潜んでいたんでやすが、蛇の奴に見つかっちまいやして、あえなく巣穴を放り出して爺さんと逃げ出したってわけでやす」

「なるほど、蛇の奴はしつこいからねえ、逃げて正解だと思うよ。でもそれでどこに行こうっていうんだい?」


「うむ、弥太郎やたろうにも話しそびれていたな。わしらは全てのペットが最後に行くことが出来る極楽を目指そうと思っているのじゃ」

「爺さん、極楽なんて本当にこの世にあるのかい?アタシは悪いけれど聞いた事もないよ」

「あっしもでさあ、そんなうまい話があるんですかい?」

羊羹ようかん爺さんは小さな胸を精一杯に張りながら二匹に語りかける。

「あるとも!八王子ペット霊園というところじゃ。わしの飼い主が動画サイトを見ているときに広告で知ったのじゃ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ